イーストタウンまでモートは、激しい落雷と嵐のような赤黒い雹の中。元はホワイトシティという雪の街だった地獄を、ゾンビを突き飛ばしながら数十ブロックも走り通した。
やっと、イーストタウンのシンクレアが住む中心部にたどり着いた頃には、モートの黒いロングコートは、ゾンビによる汚れた血を吸って真っ黒だった。
モートは、渋々。
近くの水飲み場でロングコートを洗った。
辺りは真っ赤なゾンビのうめき声が今も木霊していた。
スラブ街の方からもゾンビが徘徊し、おおよそ人が住んでいた活気溢れるイーストタウンの面影は木っ端微塵に砕け散っていた。
そこはすでに、赤黒い雹によって、ノブレス・オブリージュ美術館と同じ阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
モートはロングコートを洗い終えると、水飲み場から、少しだけ慌てながら、シンクレアとミリーを探そうとしたが……。
その時、馬の蹄の音が路地裏の方からしてきた。モートがそちらをよく観察してみると、それは馬に乗った黒い剣を持つ仄暗い骸《むくろ》だった。
どうやら、ゾンビアポカリプスの中での黒い魂だったので、さしずめ黒幕側が差し向けた敵なのだろうと、モートは考えた。あるいは、スラブ街で育った悪人だ。だが、このところ、敵はアンデッドばかりだった。何か関連があるのだろうか?
そう考えると、モートは銀の大鎌を素早く構えた。
瞬間、空から降り散る。赤黒い雹がその激しさを増した。が、同時にモートは黒の骸へ飛び掛かった。
乾いた音が辺りを襲う。
一瞬で、黒の骸は、頭から馬の足まで真っ二つになっていた。
骸の乗っていた馬の二つに分断された背から、足に掛けて、おびただしい鮮血が舞う。
アンデッドなので脆いのだ。
だが、モートはできるだけ早くに、シンクレアとミリーを探すことにした。モートがゾンビ以外の音を聞こうと、耳をすますと、今度はスラブ街の方で激しい銃撃戦の音がした。
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