テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
だいきの胸元から伝わる規則正しい鼓動を感じながら、ゆうまはふと、自分が少しだけ子供に戻ったような錯覚になっていた。
ステージの上では、誰よりも早く、誰よりも鋭い言葉を紡ぐ。それが「May4」というラッパーのプライドであり、生き方だ。
だけど、この男の前に来ると、その頑丈な鎧が、まるで初めから無かったかのように綺麗に剥がれ落ちてしまう。
「….だいき」
「ん..なに?」
髪を撫でていただいきの手が止まる。覗き込んできたその顔は、いつものステージで見せるトリッキーな表情とは裏腹に、驚くて優しくて、どこか切なげだった。
「だいきさ、メジャー行って、武道館もやって..これからもっと..遠くに行っちゃうの?」
ずっと胸の奥にしまい込んでいた不安が、口をついて出てしまった。
だいきは一瞬、目を丸くした。それから、困ったように眉を下げて笑う。
「何言ってるんだよ。俺がどこに行っても、ゆうまの隣以外に落ち着ける場所なんてないって、もう分かってるクセに」
「そんなのっ…分かんないじゃんッ..」
拗ねるように唇を尖らせるゆうまの顎を、だいきの指先がそっと上向かせた。
視線が真っ直ぐに交わる。逃げようのない、至近距離。
「じゃあ、分からせてあげる。」
囁くような声と共に、だいきの顔が近づいてくる。ゆうまはが小さく目をつむった瞬間、唇に柔らかいものが触れた。
ほんの少し、ステージの後に飲んだ炭酸の甘い味がした。優しく、確かめるようなキス。
一度離れた唇が、今度はだいきの吐息を吸い上げるように、深く重なった。だいきの大きな手がゆうまの後頭部を支え、引き寄せる。
「…っ….ふッ…///」
息が苦しくなって、ゆうまがだいきの胸元の衣装をギュッと掴むとようやく唇が離れた。
「かーわいッ」
ゆうまの瞳はうっすらと潤み、呼吸が乱れている。
「これで、分かった?」
だいきは意地悪く笑いながら、親指でゆうまの濡れた唇をそっとなぞった。
「….ずるいッ////お前のテンポには、追い付けないッ」
悔しそうに呟くゆうまを、だいきは愛おしくてたまらないというように、もう一度その腕の中に強く抱き締めた。
「追い付かなくていいよ。俺がずっと、お前の隣のテンポで歩くから」
楽屋の隅で静かに回り続ける時計だけが、2人の甘い時間を刻み続けていた。
えびふらい
226
#めいふぉー
えびふらい
318
もん
19
コメント
3件
質問です!主さんはなぜいい作品しかかけないのでしょうか!書き方教えて下さいよ!
うわあ、この2人、距離がさらに近づいたね…!ゆうまが「遠くに行っちゃうの?」って不安をこぼすところ、すごくグッときた。強がってるけど実は脆いんだなって。でもだいきの「お前の隣のテンポで歩く」って言葉に全部救われた気持ちになったよ。ステージの後の炭酸のキス、甘くてドキドキした……。えびふらいさんの書く空気感、すごく好きです。続きが待ち遠しいです🥀