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彩花との電話が終わって、一週間ほどが経った。
俺は家ですることもなく、仕方なく、塾の教科書を眺めていた。
頭を抱えながら教科書と睨めっこしていると、不意に玄関のチャイムが鳴った。
和希「、、、誰だよ。」
ドアを開ける気力もなくて、部屋の窓からドアの前を見下ろした。
そこには尊が立っていた。
俺の喉が、ヒュッと音を立てた。来てくれたんだ、、、だけど、話したい気持ちと、会いたくない気持ちが絡まって、その場から動けなかった。
そんな時、見計らったようなタイミングで尊が上を見上げた。しっかりと目が合った。逃げたかった。だけど、俺は玄関に降りてドアを開けた。
尊「急に押しかけて、ごめん。心配で。」
あの日以来、尊と話すのは初めてだった。
尊は、態度も、声も、あの日と何も変わっていない。俺が気にしているだけで、尊は何とも思っていなかったのかもしれない。そんなことを考えるだけで、俺の心は沈んだ。
尊「なあ、何があったか話してくれよ。」
俺が見たことのない、真剣な目で尊が聞いてきた。
尊「親友だろ?」
問い詰めるような尊の顔。
思わず口を開きそうになった。
だけど、、、!
和希「もう、、、帰ってくれ、、、!」
涙交じりの、震えた声で俺は叫んだ。
尊は驚いたように目を見張った。でも、むしろ対抗するように、瞳を燃やした。
尊「嫌だ!!」
和希「、、、は?」
普段は大人しい尊の大声に、俺は腑抜けた声がでた。
尊「お前が話してくれるまで帰らない!」
和希「何で、、、尊には関係ないだろ!!」
尊「関係なくない!話してくれたっていいだろ!!」
それから尊とギャーギャーすること数十分。
お互いに体力が尽きて、ベットに寝転がった。
尊「もう、、、話して、、、くれよ、、、」
息の切れた尊が、それでも聞いてきた。
俺は諦めて、話そうと思った。でも、いざ話そうとすると、胸の奥にしまったはずの記憶が溢れ出した。
5年の時、同じように友達の1人に、自分が同性愛者であるを打ち明けた。とても信用していたし、きっと受け入れてくれるだろう。不思議と確信があった。
でも、返ってきた言葉は俺の心を切り裂いた。
友達「変なの。きもちわりっ」
しかもそいつは、クラスのみんなにそれをを言いふらした。尊はクラスが違ったから知らないだろうけど。
そうして俺は、クラスの中で孤立してしまった。
6年生になり、隠さなければと思った。
作り笑いを練習した。誰も彼も、笑顔で話すようにした。でも、それが本当の笑顔じゃないことくらいは、自分でもわかっていた。
だけど話したら、また離れていくんだろうな。
だから俺は、もう二度と話さないと決めた。
尊「、、、和希?」
心配そうな顔で覗き込む尊。
何気ない会話も、笑い合った日常も、今まで一緒に過ごした思い出も、話したら、無くなるかもしれない。
こわ、い。けど
話そう。そう決めて、俺は口を開いた。
和希「実は、俺、、、」
真剣な目で尊が見つめてきた。
息が止まりそうなのを押さえて、俺は続けた。
和希「男が男のこと好きだなんて、驚くと思うけど、俺、尊のことが好きなんだ。」
その言葉で、俺の心の中で引っ掛かっていたものが、ストン、と落ちた気がした。