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〚Part5〛気遣い
勉強中のレオリオを邪魔しないように静かにリビングへと降りていくとレオリオの母はワイングラスを片手に椅子に座る猫を撫でている
「クラピカはアルコールは嗜むかい?それともジュースもあるよ」
今はなんとなく酒を口にしたい気分だ
「同じものをいただいてもいいだろうか」
せっかくなので乾杯をしてからワインをいただく、すっきりとした白ワインで飲みやすい味だ
「私のお気に入りのワインなの」
レオリオ母に勧められてドライフルーツも口にする
「レオリオのお母さんは、どこまで私のことをレオリオから聞いているのだよ」
正直、気になっていた。こちらのことをあまり聞いてこないのは気を使っているのか、優しさか・・・
「そんな丁寧な呼び方しなくたっていいのよ、そうねぇ、船の上で初対面で決闘をした話とかは知っているわ。それから動物によく好かれるってことかしら。私はあなたについてはレオリオが心から愛している大切な人としか聞いてないの」
レオリオ母は手にしていたワイングラスを揺らすと中身をゆっくりと口に流し込んだ
「私はね、あなたが自分のことを話してくれたら聞きたいけど、無理して話してもらおうとは思っていないわ。あ、息子の面白いグチなんかは大歓迎よ、どんどん教えてちょうだい」
包容力、といっていいのかわからないが確かにレオリオと目の前の女性との確かな血の繋がりを感じた
「私は、クルタ族というルクソ地方の生まれなのだよ・・・」
それから私は自分の生い立ちについて話した、クルタ族の話から瞳を狙われて襲われたこと、その後はハンター試験まで共通語を覚えるため日雇いなどの仕事をしながら休日は図書館で勉強をしていたこと、それからハンター試験を受けて今に至るまで、話せる範囲での自分の職業など
「あの子にはしっかりした子がお似合いだと思っていたけれど、あなたみたいな子を連れてくるなんて・・・想像以上だわ」
それからは彼女の話に耳を傾ける、昔にした多くの恋の話などユーモアを交えながら様々なことを語ってくれた
「いい?ちゃんとオトコは見極めなきゃダメよ、それができなかった例が私さアハハハ」
彼女との会話はとても楽しいもので時間を忘れて盛り上がった
猫の腹時計が寝る前のごはんを知らせたのか猫がフリフリとしっぽを揺らしながらテーブルの周りをぐるぐる回る
「はいはい、ごはんにしようね」
レオリオ母がごはんをあげている姿を眺めながら、ふと思ったことを口にする
「そういえば私は未だにその猫の名前を知らないな」
猫のトイレを片づけたレオリオ母はクスクスと笑いだす
「この子の名前はレオリオが決めたんだけど偶然にも息子の中で笑顔がこの世で一番可愛いって思う人と似ている名前なんですって」
へー、女優かグラビアアイドルあたりだろう
「クラピカあのね、この子の名前は —–ちゃん っていうよのよ」
いたずらをする少女のようにレオリオの母はクスクスと笑っている
「え、もしかして・・・私か?」
「うふふふふ」
急に顔から全身がほとばしるように熱くなったのはきっとアルコールのせいだ
「おーおー、勉強中の息子置いて内緒話かよ」
勉強に一息ついたのかレオリオが降りてきた
「うわ、おふくろもしかしてクラピカに飲ませたのか?」
隣に来たレオリオに無性にスリスリと顔を寄せ付ける
「コイツ酔うと猫みたいになるんだよ・・・。俺の前でだけらしいけど」
「アンタ母親に惚気なんてやるわね」
この家の、この居心地よい空間にいるときだけは、この幸せを肌で、頭で、感情でも感じていたい
「レオリオ、オレここにきてよかった」
療養期間の終わりまであと半分
(ま、いつでもうちに来てくれていいんだよ)