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#青春恋愛
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夏希(なつき)
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奇蹟あい
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木曜日。
文化祭まで、あと二週間。
二年三組の教室では、今日も準備が続いていた。
「黒瀬くん、この飾りお願い!」
「分かった」
玲は脚立に乗り、教室の壁に装飾を取り付けていく。
その下では星羅が飾りを渡していた。
「もう少し右!」
「ここ?」
「うん、そこ!」
「これでいいか?」
「完璧!」
星羅は嬉しそうに笑う。
最近の二人は、すっかりクラスでも有名になっていた。
「黒瀬と天城って、いつも一緒だよな」
「付き合ってんじゃね?」
「違うだろ」
そんな声が聞こえてくる。
「……玲くん」
「ん?」
「私たちって、付き合ってるように見えるのかな?」
「さあ」
「……嫌?」
「別に」
「……そっか」
星羅は少し嬉しそうに笑った。
そのとき。
「黒瀬くん!」
女子生徒の一人が玲に声をかけた。
「これ、どこに貼ればいいかな?」
「そこじゃないか?」
「ありがと!」
「別に」
女子生徒は笑顔で戻っていく。
星羅は、その様子を黙って見ていた。
「……」
「星羅?」
「え?」
「どうした?」
「ううん。なんでもないよ」
笑顔。
いつもの笑顔。
だけど――。
胸の奥が、少しだけ痛かった。
――嫌。
玲くんが他の女の子と話すの。
そんなこと、普通なのに。
ただのクラスメイト。
分かってる。
分かっているのに。
「……玲くん」
「ん?」
「さっきの子と、仲いいの?」
「普通」
「……そう」
星羅は笑った。
「なら、よかった♪」
その日の放課後。
玲が教室で一人、作業を続けている。
星羅は少し離れた場所から玲を見つめていた。
スマホを取り出す。
画面には、星羅が作ったメモ。
**『玲くんがよく話す人』**
そこに今日の女子生徒の名前を追加する。
そして――。
その横に小さく書く。
**『少し注意』**
「……」
星羅は自分でも驚いていた。
こんなことを考えるなんて。
「私……嫉妬してるのかな」
小さく呟く。
でも。
嫌いにはなれない。
玲くんの大切な人かもしれないから。
だから――。
「……私がもっと頑張ればいいよね」
星羅は笑った。
「玲くんが、私だけを見てくれるように」
そして玲のところへ戻る。
「玲くん!」
「ん?」
「一緒に帰ろ?」
「ああ」
「……やった♪」
二人で校門を出る。
夕暮れの道。
「今日、疲れたな」
「お疲れさま」
「星羅もな」
「……!」
「どうした?」
「ううん」
星羅は笑う。
「玲くんに『お疲れさま』って言ってもらえるの、好き」
「そうか」
「うん」
しばらく歩く。
すると星羅が、玲の袖をつまんだ。
「……玲くん」
「ん?」
「もう少しだけ……近く歩いていい?」
「別に」
星羅は玲の隣にぴったり並ぶ。
肩が触れる。
「……暖かい」
「まだ夏だぞ」
「そういう意味じゃないよ」
「?」
「なんでもない♪」
星羅は玲の隣で笑った。
――他の誰かが玲くんの隣に来ても。
私がもっと近くにいればいい。
もっと話して。
もっと笑って。
もっと一緒にいて。
そうすればきっと――。
玲くんの中で、私は特別になれる。
その夜。
星羅は自室で、文化祭の予定表を開いていた。
玲と同じ係。
文化祭当日は一緒に回る約束。
そして――。
明日の放課後も一緒に準備。
「……嬉しいな」
星羅は予定表に小さなハートを描く。
その横には、玲の名前。
「これからも、ずっと一緒」
スマホに表示された星乃セラの配信予定を見る。
明日も配信がある。
いつものように、全国のファンが待っている。
でも――。
星羅にとって、一番大切なのは。
画面の向こうにいる何万人ものファンではない。
「私が欲しいのは……」
星羅はスマホを胸に抱く。
「玲くん一人だけ」
そして、静かに笑った。
――第一章。
**「運命の出会い」**は、こうして終わりを迎える。
二人の距離は確実に近づいた。
玲はまだ知らない。
隣にいる少女が――。
自分を救ってくれた、あのVTuber本人だということを。
そして。
その少女の「好き」が――。
もう普通の恋ではなくなり始めていることも。
コメント
3件
**寺島あおいの感想** 星羅ちゃんの「嫉妬」、すごく伝わってきました……! あのメモに「少し注意」って書いちゃうところ、彼女のピュアな独占欲とちょっとした危うさが滲んでてドキッとしました。でも「玲くんの大切な人かもしれないから嫌いになれない」って思うところが健気で可愛い……。玲くんに「お疲れさま」って言われて喜ぶ場面も、距離が縮まってるのが感じられて温かくなりました。第一章の締めくくりにふさわしい、甘くて少し切ない回でしたね🌸