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#青春恋愛
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夏希(なつき)
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奇蹟あい
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金曜日。
文化祭準備が始まってから、二週間目。
玲が教室に入ると、いつものように星羅が笑顔で迎えてくれた。
「おはよう、玲くん!」
「……おはよう」
「今日、ちょっと眠そう」
「昨日遅かったから」
「何してたの?」
「セラの配信」
「……!」
星羅の動きが止まる。
「そ、そうなんだ?」
「ああ」
「……何時まで?」
「最後まで」
「……そっか」
星羅は嬉しさを隠しきれずに笑う。
「ありがとう」
「何が?」
「ううん。なんでもない♪」
玲は不思議そうに星羅を見る。
「変な奴」
「玲くんにだけは言われたくないなぁ」
「……そうか?」
「うん♪」
その日の昼休み。
教室のテレビに、ニュース番組が流れていた。
『続いては、現在若者を中心に絶大な人気を誇るVTuber、星乃セラさんについて――』
教室がざわつく。
「セラじゃん!」
「この前のライブ見た?」
「めちゃくちゃ可愛いよな」
玲もテレビを見る。
画面には星乃セラのライブ映像。
『みんなー! 今日は来てくれてありがとー!』
明るく、元気な声。
星羅とは少し違う。
でも――。
「……」
玲は画面を見つめる。
「どうしたの?」
星羅が聞く。
「いや」
「?」
「声……似てるなと思って」
「……!」
星羅の心臓が跳ねた。
「だ、誰と?」
「星羅と」
「えっ!?」
「……なんでもない」
玲は再びテレビを見る。
「気のせいか」
「そ、そうだよ!」
星羅は笑う。
けれど、内心は大混乱だった。
――バレた?
いや。
まだ大丈夫。
学校では声を少し変えている。
話し方も変えている。
大丈夫。
絶対に。
そう自分に言い聞かせる。
放課後。
星羅は玲に声をかけた。
「玲くん」
「ん?」
「今日、ちょっと用事があるんだ」
「そうか」
「だから、一緒に帰れない」
「分かった」
「……」
星羅は少し寂しそうな顔をする。
「じゃあ、また明日」
「ああ」
「絶対だよ?」
「……ああ」
玲と別れた星羅は、学校を出る。
そして――。
駅とは反対方向へ歩き始める。
向かった先は、大きなビル。
その最上階にある配信スタジオ。
「お疲れ様です!」
「お疲れ様です、星乃さん!」
スタッフたちが頭を下げる。
「今日もよろしくお願いします!」
星羅は笑顔で挨拶する。
数時間後。
配信開始。
『みんなー! こんばんはー!』
画面の中の少女は、学校の星羅とは別人のようだった。
明るく。
元気で。
誰よりも可愛い。
全国のファンがコメントを送る。
『今日も可愛い!』
『セラちゃん大好き!』
『結婚してくれ!』
星羅は笑いながらコメントを読む。
『みんな、ありがとー!』
しかし。
その中に、一つのコメントを見つけた。
『今日も学校だった?』
星羅の指が止まる。
匿名のコメント。
ただの偶然。
なのに――。
なぜか気になった。
『……学校?』
星羅は笑う。
『うん。今日も楽しかったよ!』
そして、心の中で呟く。
――玲くんと一緒だったから。
配信終了。
「お疲れ様でした!」
スタッフに挨拶をして、控室へ戻る。
スマホを見る。
玲からメッセージが一件。
『今日の配信もよかった』
たった一言。
それだけ。
なのに。
「……ふふっ」
星羅はスマホを抱きしめる。
「玲くん……」
その夜。
玲は自室で、今日の配信を思い返していた。
「……やっぱり似てる」
声。
笑い方。
言葉の癖。
そして――。
今日の昼。
星羅がセラの話題になった瞬間に見せた、あの反応。
「……まさかな」
玲は首を振る。
そんな偶然、あるわけがない。
全国的人気VTuber。
普通の女子高校生。
どう考えても別人だ。
しかし――。
翌朝。
教室で星羅が玲に笑いかける。
「おはよう、玲くん!」
「……おはよう」
玲は彼女の声を聞く。
そして、ほんの少しだけ。
疑問を抱いた。
――本当に、別人なのか?
その疑問が。
いつか二人の秘密を暴くことになるとは。
この時の玲は、まだ知らなかった。
コメント
1件
「二つの顔」、めちゃくちゃ面白かったです……! 玲が少しずつ星羅=セラだと気づき始める過程の描き方が絶妙で、特に昼のニュースで「声が似てる」と言った瞬間の星羅の心臓の跳ね方、すごく伝わってきました。あの「当たり前だけど、当たり前じゃない」距離感がたまらない。ラストの匿名コメント「今日も学校だった?」も気になります。これは偶然じゃないですよね……次が待ち遠しいです!