テラーノベル
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※とにかく気持ち悪いモブと嘔吐表現、暴力表現あり。
「トラゾーおはよー!」
「ぺいんと、おはよ。今日も朝から元気だな」
「えー?そりゃ朝イチにお前見れたしな」
「??、そうなのか?」
こうやってぺいんとはたまにこういうことを言う。
そりゃ俺も仲のいい友達を見れたら嬉しいけど。
「トラゾーは俺に会えて嬉しくねぇの?」
「いや嬉しいけどさ…」
言葉にすると小恥ずかしいというもので。
要は単に照れてるだけだ。
「お〜?トラゾーきゅんは照れてんのか?可愛い奴め〜」
うりうりとほっぺをつつかれる。
ムカついたからやり返してやったらぺいんとが髪で隠れてないほうの目を見開いた。
「ぁ、ごめ、…痛かった、か?」
そんな強くしたつもりなかったけど、ぺいんとには痛かったのかもしれない。
「…んん゛、痛くねぇし。寧ろラッキーみたいな?」
「うん⁇」
「トラゾーは気にしなくていーってこと。ほら行くぜ」
「わっ!引っ張んなって!バカ!転けるだろ!!」
足の速いぺいんとに着いて行くのは全然大丈夫だけど、スキップしそうな感じの走り方に首を傾げながら腕を引かれるまま学校に向かった。
──────────────
「トラゾーおはよう」
「クロノアさんおはようございます。生徒会長は朝から大変ですね」
「そうでもないよ?こういうのするの苦じゃないし」
バインダーを持って服装チェックを行う我が校の生徒会長のクロノアさん。
「ふふっ、クロノアさんが立ってる時は生徒のみんな遅刻せずに来ますもんね」
「そうなの?」
「生徒会長がかっこいいからみんな声かけて欲しいんじゃないですかね?」
容姿端麗のクロノアさんに好意を寄せる女子生徒はたくさんいる。
けど、告白とかそういうのを見たことないし付き合ってる子がいるとも聞いてない。
俺らといることが多い気がする。
「へぇ。でも別に興味ないかな」
「そうなんですか?」
「うん」
じっと俺を見てくるクロノアさんを見返す。
「…あの?俺、なんかダメなとこありましたか…?」
「ううん。トラゾーはちゃんとしてるからいいよ」
ぺいんとはらっだぁさんに捕まって先に行ってしまった。
置いてけぼりくらう俺にらっだぁさんが謝ってきたけど、鬼気迫る顔に手を振るしかできなかったし。
「よかった」
ほっとして笑うとクロノアさんも笑い返してくれて。
「じゃあ俺行きますね。クロノアさんもあとちょっと会長のお仕事頑張ってください」
「ありがとう。トラゾーにそう言ってもらえるだけでも頑張れそうだよ」
「そ、そんな大袈裟な…////」
顔のいいクロノアさんに至近距離でそう言われれば照れてしまう。
これは女の子たちも好きになるはずだ。
「じゃあ、またお昼休みに」
「うん、またね」
早足に下駄箱に向かって行く。
ホントにクロノアさんは顔が良すぎる。
というか、俺の周りにいる人たちみんなかっこよすぎる。
俺が場違いになるくらい。
はぁ、と小さく溜息をつく。
友達が多いことはいいことなんだけど、みんなと仲良くすることで他の人たちからなんて思われてるのか。
お前なんかと、とか思われてるんだろうなとちょっとだけ落ち込む。
ぺいんとたちがいるからいいけど。
「おはようトラゾーくん」
「…、⁇、あ、おはよう」
同じクラスで隣の席の男子生徒。
いつだったか落ちた消しゴムを拾ってあげたことをきっかけに少し話す程度の仲になった。
でも話していたら案外と好きな物が同じだったりと話しやすかったりと。
「今日は遅かったね」
「ん?そうかな、…ぺいんとやクロノアさんと話してたからかも。でも遅刻じゃないし」
確かに俺が登校する時も下校する時もよくここで会うけど。
まさか待ってくれていたということなのだろうか。
「ごめん、もしかして待ってた?」
「……」
それに対しては曖昧に笑われてしまった。
「…なんかあった?」
「なにもないよ。ちょっと遅いから心配になってただけ」
友達想いの人なんだなと笑顔を返す。
まぁ帽子で顔はほとんど見えないだろうけど。
ここでは絶対に帽子は取るなとみんなに言われてる。
なんでかは分からない。
でもみんな口々に言うのは俺の為だ、と言う。
「ありがと、…あ、ほら行こうぜ」
なんとなく話を続けられなくて教室を指差した。
そいつから背を向けて歩き出す。
「うん」
小さく返事をしたあと、彼は 俺の後ろを歩幅を合わせるようにして着いてきていた。
──────────────
「トラ〜!」
「わっ」
昼休みになって中庭に向かっていた。
ぺいんととはクラスが違うからそこで合流するつもりだった。
─クロノアさんとしにがみと待ってるな〜
と連絡が来てたから急いでお弁当を持っていくところだった。
「朝はごめんな。ぺいんと連れてっちゃって」
「いえ、何か用事があったんですよね?」
「そそ。抜け駆けすんなって言う為にな」
抜け駆け?と内心疑問に思ったけどいつものことだしと流し聞きする。
「それよりトラ」
「はい?」
「最近変なことには巻き込まれてねぇか?」
心配そうに俺の顔を覗き込むらっだぁさん。
いやこの人も顔良すぎる。
「ち、近っ…////」
「お前変なのによく好かれるから気をつけんと」
「へ、変なのって……いや、その、」
「優しいお前につけ込む奴らいただろ」
変わった人たちは確かにいたけど、いつの間にかいなくなってて。
転校したとか、学校を辞めたとか。
そんな噂が流れてたけども。
「仲良くしてただけなのに…」
「そういうところがつけ込まれんだって」
らっだぁさんをじっと見返す。
「…じゃあ、らっだぁさんも、俺につけ込んでるってことですか?」
「ないない!俺のは純粋にお前のことが好きなだけ。好きな奴とは一緒にいたいだろ?」
確かに好きな友達とは一緒にいたほうが楽しい。
みんなと、そのいなくなってしまった人たちとの感情?は何か違う感じはしてたし。
「俺もらっだぁさん好きですよ?みんなといるのすごく楽しいですし」
「……こんな純粋自然培養を野放しにはできねぇな。俺が保護しててやろうか?」
「保護…?俺そんな弱くないですし、らっだぁさんのほうが保護される側じゃ…?」
「じゃあトラが俺のこと保護してくれる?」
肩を抱かれて引き寄せられる。
めっちゃ顔が近くなって逸そうとしてもできない。
周りの人たち見てるから離してほしいのに。
あ、やめてそんな眼差しで俺らのこと見ないで。
「ど、どういう…というか、離し…」
「「おりゃ!」」
「いってぇ!」
「「トラゾーさん大丈夫?」」
どうしようと困っていたら走ってきたのか、額に僅かな汗を浮かべるぐちつぼさんとぴくとさんがらっだぁさんの頭にチョップをしたのだ。
「ぐちつぼさん、ぴくとさん…助かりました」
「ぺいんとがトラゾーさん来ないぃぃ!って叫んでたぜ?」
「へっ⁈うわ、ホントだめちゃくちゃメッセ来てる。うわうわっ!クロノアさんから電話きた!」
とんでもない通知が来てて、クロノアさんから電話がかかってきたから慌てて出る。
「く、クロノアさんッ」
『やっと出た。…トラゾーのことだからどうせらっだぁさんに捕まってたんでしょ?』
開口一番。
見てきたかのように言われた。
「ぅ…ごめんなさい…」
『トラゾーは悪くないじゃん。そっちにぐちつぼさんとぴくとさん行った?』
ちら、と2人を見る。
俺と目が合ったぐちつぼさんとぴくとさんがにこりと笑った。
この笑顔で一体何人の人を惚れさせてきたのだろうかと頭の隅っこで考える。
てか、ホントに顔いい人多すぎな。
「、えっと、はい」
『…ホント、トラゾーは好かれやすいね』
「え?俺ですか?そんなクロノアさんに比べたら…というか比べるまでもなく…」
友達は多いけど、いつも俺の周りにはぺいんとたちがいるから他の人たちとあまり話せない。
困ってはないけど。
『……どうせ3人も着いてくるだろうし、早くおいで?お昼休みなくなっちゃうよ』
「あ、はい!今すぐ行きます!」
通話を切って3人を見る。
「えっと、皆さんも一緒に食べますか?」
いつものように。
お弁当の入ったバッグを見せるとまた顔のいい3人に満面の笑顔で頷かれた。
──────────────
「トラゾーさんごめんなさい。僕のことなのに手伝ってもらっちゃって」
「いえいえお安いご用ですよ。それにこの量はしにがみさんじゃ持てないでしょ?」
「ゔっ…ごもっともです」
休憩時間、自分の用を終えて戻ろうとしていたところ社会準備室の中で頭を抱えるしにがみさんを見つけた。
どうやら居眠りしていたのをステイサム先生に軽い罰として資料をしまうように言われたらしい。
「ステイサム先生でよかったですね。リアム先生だとどうなっていたことか」
「ひぃぃ…思い出すだけで気絶しそうだ…」
そうだった。
ぺいんととしにがみさんは前科があるというか常習犯だったわ。
「スティーブ先生だったら、笑って許してくれそうですけどね。また徹夜でゲーム作成してたんですか?」
「あー…まぁそんなとこです」
「すごいことですよ。俺、尊敬します」
「トラゾーさんにそう言われるとなんかやる気出ちゃうや」
「ふはっ、徹夜はダメですよ。しにがみさんが体調崩しちゃ意味ないですし」
大きい方の箱を資料室に運び入れて、しにがみさんの方の箱も受け取って置く。
「助かりました。いやホントいいところ通りがかってくれて」
「困ってる人を助かるのは当たり前のことですよ。ましてや大事な友達が困ってるなら尚更」
「トラゾーさんチョロ……優しすぎて心配になります」
「今チョロいって言いかけなかった?俺ってそんなにチョロい?」
騙されやすい、信じすぎ、とよく言われるけど。
いちをこれでも警戒心はあるし、みんな以外の人に対しては特に。
「クロノアさんやらっだぁさんにも言われてるでしょ?変な勘違い共に好かれやすいって」
「いやそこまでは言われてませんけど…」
勘違いさせたつもりはないけど。
受け取り手の感じ方は人それぞれだし、なんとも言えない。
俺が止めようもないことだ。
「ホント気をつけてくださいね?」
「うん、」
予鈴が鳴って2人してハッとする。
「やばいっ俺次リアム先生の授業だから急ぎますね!」
「あなたは大丈夫でしょ!贔屓されてるんだから」
「そうなの⁈あれで⁈」
確かにちょっと優しいかもだけど基本は真面目でそんなことしない人だ。
遅刻しようものなら課題を科せられる。
ただでさえ数学苦手なのに。
「じゃあまた放課後!」
「はい!」
今日はみんな用事がないから一緒に帰れる。
だいぶ大所帯になるけど、すごく嬉しい。
因みにちょっと遅刻した俺はリアム先生にデコピンされた。
めちゃくそ痛かった。
──────────────
「トラゾーくん」
「どうした?」
周りを見渡すようにして近寄ってきた彼は俺の隣に座った。
最後の授業であり移動授業で。
席は決められてなかったから適当に座っていたら近い距離で座られた。
「(なんか近いな…)」
「教科書また忘れちゃって…見せてくれない?」
「いいけど…ちゃんと確認して来なよ」
「つい…でもトラゾーくん優しいからきっと見せてくれるって思ったから」
俺を見る彼はにこりと笑った。
一瞬鳥肌が立ったけど、教室がまだ肌寒いせいだからだと無理矢理そう思い込んだ。
「こら、もう授業は始まってるよ。私語はダメ、工具使ったりするんだから危ないよ?」
「スティーブ先生、すみません」
優しく注意されて素直に謝る。
リアム先生とはやっぱり大違いだ。
デコピンされたおでこはまだ痛いし、なんなら赤いままだ。
帽子で見えないからいいけど。
「…キミも、もう高校生なんだからちゃんとしないと。いつまでも誰かが助けてくれるなんて思うのは大間違いだからね」
俺に向けるよりも幾分か低く硬質な声で注意をするスティーブ先生に彼は頭を下げて謝っていた。
こんな風に怒る先生を初めて見たから驚いて2人を見比べる。
周りの生徒は気にしてないようだったけど。
ちらりと帽子の隙間から彼を見れば俯いて唇を噛んでいた。
「(そりゃ高校生にもなってこんな風にみんなの前で叱られれば恥ずかしいよな…)」
「はい、じゃあ授業始めていくねー」
いつもの調子に戻ったスティーブ先生は教卓の方に戻って行った。
それを恨みがましそうに見る彼がいたことも俺は知らず。
あぁ、邪魔だ。
邪魔だ、邪魔、
邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔!!!!!
トラゾーくんの周りにいるあいつらが邪魔で邪魔で仕方がない。
彼はあんな奴らといるべきじゃないのに。
トラゾーくんはオレのモノなのに。
優しく笑いかけてくれて、可愛い顔をオレに見せてくれた。
教室にいる時だけはオレのことを見てくれて話をしてくれて。
なのに!
あいつらは!!
オレのトラゾーくんをいつもいつも!
いつもいつもいつもいつも取っていってしまう!!
あの癇に障る紫頭の後輩も、親友ヅラしてる片目のあいつも、良き先輩気取りの会長も、いい人ぶる赤マフラーも、気さくにみせた背だけの赤目も、無害そうな顔してる優男も…!!!
先公共もだ!
自分の立場を利用して拒否のできないトラゾーくんに近寄って!!
他の奴らは優しいと言う技術のあいつも、厳しいけど生徒思いの社会のあいつも、クソ真面目で鬼みたいな数学のあいつも!!
寄って集ってトラゾーくんを囲い込んでオレから離そうとしやがる。
「……」
荒ぶる心を落ち着かせる為に自分のスマホを取り出し、アルバムを開く。
ずらりと並ぶトラゾーくん。
目線は合ってないけど、全部全部俺に向けてくれた顔。
人に対して興味のなかったオレにこんな感情を教えてくれた可愛い可愛いトラゾーくん。
教科書忘れたの?
俺のでよければ一緒に見る?
と、潜めた声。
少しだけ舌足らずで、でも耳に入りやすい声色で。
この声がオレの前でしか聞かせられない声に変えることができたらどんなにいいものか。
帽子のつばの部分から見える緑色の目がオレだけを写して、溶けてくれたらどんなに愉しいことだろうか。
妙に人を惹きつける何かを持つトラゾーくんに唯一近付けてるのはオレだけだ。
他の奴らとは違うし、あいつらはただの腰抜けだ。
スマホに映るトラゾーくんの画像を拡大する。
「あぁ、可愛いなぁ…」
早くオレの名前を呼んでもらえるようにならなきゃ。
あいつらから取り返さないと。
あいつらなんかといたら、トラゾーくんはおかしくなってしまう。
だから、あいつらからトラゾーくんを返してもらうんだ。
オレのトラゾーくんを。
おかしい奴らから、オレのところへ。
「手伝い?いいけど…あんま遅くまでは出来ないよ?」
放課後になって帰り支度をしてた。
ぺいんととしにがみさんが例に漏れずリアム先生の授業で寝てしまって反省文を書かさせるということになり2人を待つ為に時間ができてしまったのだ。
だから手伝うのは別に構わない。
なんやかんやで真面目にすることはする2人だから反省文もちゃんと仕上げることだろうし、リアム先生も優しいところがあるから変に半端でも仕方ないと許してくれることだろうし。
「いいんだ。トラゾーくんにしか頼めないから」
「そう、なの?」
スマホを見て時間を確かめる。
「どのくらいかかりそ?」
「んー……トラゾーくんによるかな」
俺による?
それは俺の手伝いの出来具合いということだろうか。
「とりあえず着いて来てくれる?」
「う、うん。分かった」
いちをクロノアさんとらっだぁさんには連絡入れとこと思ってスマホを持ち直したら手を掴まれた。
「ぅわ、」
「する必要ないよ」
「へ」
「クロノア先輩にもらっだぁ先輩にも伝えてあるから」
にこりと笑う彼は画面を見せて来た。
確かにやり取りをしている。
けど、いつの間にクロノアさんと連絡先を交換したのだろうか。
他のみんなもだけど、クロノアさんは交換したがらない人だから。
「…ね?」
「わ、分かった…」
違和感はあった。
やり取りしてるというクロノアさんの口調とかアイコンとか。
同じな筈なのに何か違う気がして。
「(でも、疑うのも…)」
そう疑念を感じながらも、掴まれた手を引かれるまま彼に着いていく。
どんどん人気が少なくなり、別棟の使われてない教室まで連れて来られ歩みが止まりそうになる。
それなのにそんな俺のことは目もくれず引っ張る彼の後ろを着いて行くしかなかった。
頼まれた以上はしなきゃだし、頼られてるのは嬉しいことだから。
「ここだよ」
「ここ…?」
本棟からだいぶ離れてしまった。
別棟にこんな空き教室あったんだと思いながら中に誘導される。
先に入った俺の後ろで、カチリ、と小さな音がした。
「えっ」
「やっと2人になれた」
「ぇ、え、ぁ…お、い…?」
近寄る彼に怖くなって後退りする。
乱雑に並べられてる机にぶつかって一瞬それを見た瞬間にその机に押し付けられた。
「いっ、⁈」
「トラゾーくんはオレのこと好き?」
「は⁈な、何を言って…っ!」
「答えろ」
「ぅぐっ!」
手慣れた感じで腕を締め上げられる。
反動で帽子は落ちてしまって彼の顔がよく見えた。
「帽子のないトラゾーくんの顔やっと見れたよ。やっぱ可愛いね」
背後からのしかかられて、耳元で喋られる。
「っ、ゃめ、ろ…!」
力で負けてる。
不利な状況でも俺の方が強いと思ってたのに。
押さえ込まれて逃げることができないことに混乱していた。
「邪魔なあいつらもここには来れないだろうし。そもそもオレとトラゾーくんの邪魔をすること自体がおかしいんだよ」
俺を見下ろす目は、今まで僅かに感じていた違和感が何だったのかを理解させた。
「それで?オレのこと好き?」
「こ、んなこと、する奴のこと、好きなわけないだろ…っ!!」
ギリッと骨が軋む。
「ゔぁっ⁈」
「可哀想に、あいつらに洗脳されてんだな」
「洗脳…?そんなことされてないし、俺はみんなのことが好きだから一緒にいるだけだ!お前なんかとは違う!!」
「ふぅん?そこまでおかしくされちゃってんのか」
俺のネクタイを解いたそいつは後ろ手にきつく両手首を縛った。
「んな、っ⁈」
「トラゾーくんの洗脳をオレが解いてあげる。すぐにオレのことも好きって言えるようになるから」
自由な足で蹴り飛ばそうとしたら太ももを上から押さえられた。
「痛っっ!!」
「暴れるのを大人しくするの得意なんだ」
カチャカチャとベルトの金具が外される音がして、早く逃げなきゃいけないのに押さえ込まれてそれをすることができない。
自然と涙が溢れてきてボロボロと机の上に落ちる。
今までみんなが忠告してきたことをちゃんと聞いとけばよかった。
そうしたらこんなことにならなかったかもしれないのに。
でも、こいつがクロノアさんに連絡をしたと言うなら探しにくる筈だ。
「クロノアさんに、連絡したのは間違いだったな…ッ、きっと今頃俺のこ「すげぇ囲い込まれてんだな」…ぇ」
「オレ、オトモダチ多いからさ。ちょーっとヤサシクオネガイすれば成りすましとかしてくれんだよ」
口調の変わっていくそいつが、さっきのスマホ画面を見せてくる。
─クロノア会長のフリしたんだからあのこと言わないでくれるよな⁈
クロノアさんの使うアイコンで違う口調の奴が喋っていた。
─さぁな?オレはなんにもしねぇけど、アイツらがどうするかなぁ?
─約束が違うじゃんか!お前が助けてやるって言うからオレは!!
─自分のことは自分でしろよ笑
高校生だろ笑笑
と、そこで相手をブロックしたのか会話はそこで終わっていた。
「う、そついたのか…?」
「むしろあれで信じるトラゾーくんのほうがヤバいと思うけど?どんだけ人のこと信じてんの」
「ひ、ッ!」
ズボンを脱がされて床に落ちた。
「安心しなって。トラゾーくんに嫌な思いはさせないから」
下着に手をかけて笑うやつに目を見開いて叫んだ。
「やだっ!だ、誰か、誰か助けて…っっ!!」
「その誰か、はオレになるから大丈夫だよ」
「嫌、だッ!ぺいんと!しにがみさんっ!」
「…、」
「クロノアさんッ!らっだぁさん!」
「、っ…」
「ぐちつぼさん!ぴくとさんッ!」
「ッ…、…」
「リアム先生!スティーブ先生!ステイサム先生!」
俺の周りにいる人たちの名前を叫ぶ。
浮かぶのはその人たちだけで、他の人の名前なんて全く浮かばなかった。
「たす、けて…っ!やだ、嫌、だ…ッ!!」
「オレのことは呼んでくれないんだ」
乱暴に下着を脱がされて、なにかがお尻に当たる。
濡れた硬いナニか。
「ひっ…!」
泣きながら振り向けば、前を寛げてソレを擦り付けてくるそいつに吐きそうになる。
「ゔっ、」
「泣くくらい嬉しい?よかった、この日の為に、トラゾーくんの為に溜めてきたんだから」
「ぅえ゛ッ…ゃめ、っ…いや、だッ…、」
擦り付けられるソレに恐怖と嫌悪が込み上げて遂に吐いてしまった。
「お゛ぇ…っ、づ、ぅぐ、ぁ゛…ッ」
「吐いちゃった?全然いいよ。トラゾーくんのモノならなんだってオレ見れるし」
ぐちゅりと擦り付けられるソレが押し当てられていく。
「や゛だっ!やだや、だッ、だれ、か、ッ!誰かたす、けて…っ」
こんなことをされた俺なんか助ける価値ないかもしれない。
みんなといることができないかもしれない。
けど、叫びながら呼ぶのはみんなの名前だけで。
結局みんなじゃなきゃ俺はダメで。
無理矢理入ってこようとするソレが気持ち悪くて、お昼に食べた物が込み上げて何度も嘔吐する。
「ぉ゛ぐ、っぅ…え゛ぇ…ッ」
吐いたことで体力も消耗し、意識も朦朧たしてきた。
こんなに叫んでも誰も来ない。
誰も助けてくれない。
「ほらオレに任せて」
囁く気持ちの悪い声に、涙が落ちた。
みんなの言うことを聞かなかったから、バチが当たったんだ。
そう諦めて目を閉じようとしたところ、大きな破壊音がした。
朦朧としていた意識が戻り音のした方を見れば引き戸が床に倒れていた。
そしてその前に立つ見慣れた人たち。
「ぺ、い、んと、…っ」
ボロボロと落ちていた涙が安堵でとめどなく流れ落ちる。
人間安心すると涙が止まらないもののようで。
吐いたこともあってしゃくりあげながら、子供みたいに泣き出してしまった。
「ぁ、ぅ、っは、ぺ、ぃん、と、ひ、ッ、く、ぅ、ぺ、ッん、と、っ」
俺にのしかかるそいつは気付けばリアム先生に床へと押さえつけられていた。
泣きながら放心して動けない俺を抱き起こしてくれたクロノアさんがネクタイを解いてくれた。
痺れて痛みのある縛れた跡のある腕を伸ばしてクロノアさんにしがみついて泣きじゃくる。
「ぅ、ぁっぁあ…き、も、ち、…ゎる、かったッ…こ、こわ、かっ、たぁ…、」
下着とズボンを直してくれたクロノアさんがなにも言わずに背中を撫でてくれて。
大きくて優しいその手に涙は止まらない。
いろんなもので汚いのに、そんなこと厭わず抱き締めてくれるクロノアさんにしがみついて泣いた。
「トラゾー」
「ぺ、いん、とッ…、?」
落ちていた帽子を拾い埃を払って別の机にぺいんとが置いた。
てっきりそのまま被せられると思っていたら、頭を撫でられる。
「あとは俺らがどうにかするから、トラゾーは安心して寝てろ。な?」
優しい声。
俺に向けてくれるその声にぐちゃぐちゃになっていた頭が軽くなっていき意識はそこで途絶えた。
──────────────
クロノアさんに抱えられる気絶したトラゾーを見て、リアム先生に押さえつけられる奴を見て今まで以上の殺意が湧いた。
「クロノアさんとスティーブ先生としにがみとぴくとさんはトラゾーのことよろしく」
「うん、トラゾーのことは任せて」
「ぺいんとさんもそっち頼みましたよ」
「おう」
「俺らの代わりによろしくね」
「任せてください。じゃあ頼みますよクロノア会長、スティーブ先生、ぴくと先輩、しにがみくん」
「「「「もちろん」」」」
眉を顰めて苦しそうなトラゾーの赤く腫れた目元を撫でると、少しだけ表情が和らぐ。
「リアムさんも兄貴もやりすぎないようにね」
「分かってるよ」
「そんなヘマはしない。したことなんて一度もなかっただろう」
「いらないお節介だったか。じゃあ頼みますリアム先生、ステイサム先生」
「「あぁ」」
リアム先生に押さえつけられるそいつは何かを叫ぼうとしたけどそれよりも早く床に頭を押し付けられていた。
痛そうな音がしたけど知ったこっちゃない。
「らっだぁさんもやりすぎないようにね」
「ノアほどじゃねぇよ」
「ぴくとさんやりすぎるからこっちで正解ですね」
「いや、しにがみくんには負けるかな」
「俺はちゃんとするぜ?」
「は?あれがちゃんと?」
「あ?ぺいんとが言うかそれ?」
ぐちつぼが自分の帽子をトラゾーの顔を隠すように被せた。
「ほらノアさんたちは行ってトラゾーさん安心させてあげなよ。こっちは俺らで片すから」
「任せましたよ」
教室を出ていくクロノアさんたちの足音が完全に聞こえなくなってから奴に向き直る。
「……さて」
外れた扉をステイサム先生が戻して鍵をかける。
「誰に何したか分かってんだよな、お前」
「っ…〰︎!、…ッ〜〜!」
「あぁ、すまない。これじゃあ喋れなかったな」
頭を押さえていたリアム先生が手を離す。
顔を上げた奴の鼻からは血が流れていた。
「トラゾーってホントにお前みたいなのにも、普通の奴にも好かれんだけどさ、ここまでのことしたのはテメェが初めてだわ」
座り込んで奴の髪を掴んで視線を上げさせる。
「執着されやすいんだよあいつ優しいから。誰でも助けようとするし、誰も見放そうとしねぇから」
「っ、お前らがトラゾーくんをおかしくしてんだろ。オレは彼を取り返そうとしただけだ」
「いろんな手ぇ使って、トラのこと傷付けた奴がなに正義ぶってんだよ」
「傷付ける?トラゾーくんは泣いて喜んでたんだよ。お前らから解放されることを」
「あ?トラゾーさんがそんなこと思うわけねぇだろ。頭湧いてんのかよ」
「湧いてんのはお前らだろ」
「無駄無駄。頭おかしい人間には何を言っても通じないもんだよ」
「頭おかしいのはお前らだろうが」
「おかしいのが分からないなんて可哀想な子だね」
「可哀想なのはお前らだ。トラゾーくんの優しさにつけ込んだお前らのほうだ」
「こいつに何を言っても意味を為さない。俺たちが何を言おうが頭のおかしい奴には響くものも響かんだろう」
「だからっ!おかしいのはお前らだろうがぁあ!!」
リアム先生を押し退けようとしてるけど、できるわけがない。
「くそっ!!どけよ!!」
「喧しいな。骨の一つでも折れば黙るか?」
「リアムそれは余計に煩くなるからやめた方がいい」
ステイサム先生が諭すように言うが顔は全く優しさのかけらもない。
「ぺいんとどうする?」
「殺してやりたいけど、んなことできねぇし。トラゾーが悲しむようなことはしたくねぇ」
「そりゃ俺もだけど」
「でもまぁ、とりあえずぶん殴りはする」
掴んだままの髪を引っ張って顔面を殴る。
「あがっ!!?」
「えー?じゃあ俺も殴るわ」
「ぅあ゛!!」
らっだぁが笑顔を固めたまま奴を殴る。
「気絶させちゃダメだからなぁ」
逆に無表情で奴の顔の反対側を殴るぴくとさん。
「おいおいなってねぇなぁ」
米神を殴るぐちつぼはいつも以上に目を鋭くさせていた。
「っ、づ、ぐ…ぅ゛…、」
喋ることができなくなってきた奴は涙を流しながら懇願してきた。
「ゆ゛、ゅるし、で…」
「あ?許せだ?許してもらおうとする相手が違ぇだろうが!」
こんな奴にトラゾーが傷付けられることが耐え難い。
存在ごと消してやりたいくらいだ。
「いぎっ…!」
「キミのトラゾーくんに対する執着はそんなものだよ。ちょっと優しくされたからって図に乗っちゃダメかな?」
体格のいいステイサム先生の殴りはいつ見ても痛そうだ。
痛いどころじゃないかもしれない。
声を出すことができないほどの痛みに奴は目を見開いていた。
「トラゾーを自分だけのモノにしたいという感情は理解してやろう、お前と同じだとは思いたくはないが。ただ、納得はしてやれんな。お前のそれを俺たちのと同等と考えられては困る。そもそも比べるまでもない」
リアム先生がまた奴の頭を床に打ちつける。
「安心しろよ。死にはしねぇから、その代わりもう二度とトラゾーの前には姿見せれないだろうけどな」
あいつのことを少しでも傷付けた奴らは許さない。
俺ら以外の人間があいつの視界に入ることは絶対に許しはしない。
トラゾーには俺らだけがいればいい。
俺らにはトラゾーさえいてくれればいい。
ずっと、ずっと。
この先も、ずっと。
あいつの世界は俺らだけでいいのだ。
「じゃあな、トラゾーに名前も覚えられてねぇ可哀想なモブ野郎くん笑笑」
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アリガタヤー( ˘ω˘)人
ちょっと長いんで一旦ぶった斬ります。 後半に続く(しばしお待ちを…!)
第21話、一気に読んでしまいました……。普段の明るいやりとりと、そこに忍び寄る不気味な違和感の積み重ね方が本当に巧くて。特に「帽子を取るな」という忠告の意味がここで一気に重みを増しましたね。クロノアさんたちが駆けつけた時の安堵感は、読んでいるこっちも息を呑みました。あの場面でトラゾーくんが必死に周りの人たちの名前を呼ぶところが、彼の純粋な人間関係を表していて胸が熱くなりました。ただ、ラストの「名前も覚えられてねぇモブ野郎」というオチが、トラゾーくんにとってどんな意味を持つのか——今後が気になります。
アイマスク
1,194
#イラスト
/あずき/
3,551
冬奈
5,273