【お願い】
こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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ご本人様方とは一切関係ありません
犯罪組織と戦うメンバーさんの、戦闘パロ のお話です
ほぼ青視点
「部屋の掃除は個人で、お風呂とか共用部は当番制ね。ご飯は各々だったけど、最近はあにきが作ってくれることが多いかな」
ほとけに案内された部屋は、ベッドが2つとクローゼット、仕事用のデスクにローテーブルがあるだけの簡素なものだった。
昔から部屋が汚いと言われているほとけだが、さすがに二人部屋になるから少しは遠慮したのか、想像していたよりは整理整頓されていた。
「あとなんか生活する上での質問、ある?」
ほとけの言葉に、しばし考えこむ。
持ってきた荷物は本当にわずかで、置く場所に困ることはない。
生活もスタートさせてみないことには、「分からないこと」が分からない。
「特にないな」
言いながら、俺はほとけが使っていないらしい方のベッドに腰かける。
「それよりあいつ、どんな奴なん?」
ベッドは部屋の両サイドに置かれていて、互いに自分のそれに腰かけると向かい合う形になる。
ほとけも自分のベッドに座ってこちらをきょとんと見つめ返した。
「あいつって……ないちゃん?」
俺が知らないのがこのチームでないこだけだったから、そう思ったのだろう。
尋ね返されて小さく頷く。
「どんな奴って…いい人だよ。強いし優しいし。…何で?」
「急にポッと出てきたみたいやから、何かあるんかな、と思て。信用できるんかとか」
俺の答えに、ほとけは思わずといった感じに吹き出した。
「ないちゃんから見たらいふくんだって急にポッと出てきた感じだよ」
「…確かに」
肩を竦めてそう応じたときだった。
「まろちゃーん、出てこれる?」
ドアをノックする音と共に、しょにだの声がする。
首を傾げた俺だったけれど、ほとけは何かを知っているらしい。
にやりと笑いながら「行こ行こ」と手を引っ張られて、俺はその部屋を出た。
2階の一番奥にある自室を出て、階段を下りる。
吹き抜けになっているそのリビングからは、階段を下りている途中でもう既に良い香りが漂ってきていた。
ほとけに促されるまま下に下りると、テーブルいっぱいにピザやら寿司やらチキンやら…まるでクリスマスか何かのパーティーのように色鮮やかに料理が広げられていた。
「まろの歓迎会始めるぞー」
料理を用意してくれたのはほとんどあにきらしく、そう場を取り仕切るように声を張る。
…そんで何でそんなにエプロンが似合うねん、とは思ったけれど口にしなかった。
「まろ、お帰りー」
グラスを持ち上げたりうらがそう言いながら、乾杯の音頭を取る。俺に持たせたチューハイの缶に、カツンと自分のグラスをぶつけてきた。
「っていうか、これ全部食える?」
テーブルの上に広がっているのは相当量で、随分食べ進めたつもりだけどまだまだ残されている。
「最終的にはないちゃんがいれば大丈夫だよ」
もう自分は満腹でリタイアするつもりなのか、ほとけがそう言った。
「ないくんの胃はブラックホールだからね」
こちらも少食すぎることで評判のりうら。
自分の前にあるサラダが残された皿を、ずいとないこの前に押し出した。
その間もないこはうまそうにピザを食べ続けている。
なるほど、ブラックホールとはうまくいったもんだ。
ここにいる誰よりさっきから食べ続けているくせに、まだ止まる気配はない。
「…なんかキャラが掴めんのやけど」
隣の席で食べ続けるないこを横目にそう言うと、「え、俺?」とないこが不思議そうな顔をする。
「噂ではカリスマって聞いとったし、テストとは言え戦いの場では殺意高いし、今は単に大食いのフードファイターやし」
「『カリスマ』!」
俺の言葉を復唱して、ないこは笑い出した。
自分では不似合いな形容だと思うのか、大笑いしている。
「ないちゃんは単なる残念イケメンやけどな」
ニヤッと笑うしょにだの言葉に「残念は余計」とないこはわざとらしく唇を歪めた。
「俺もまろの噂は聞いてたよ」
手にしていたフォークを置いて、ないこは隣の俺の方に体ごと向き直る。
「実力あって、頭も良くて参謀タイプ」
誰に聞いたのか、過分な褒め言葉を羅列してからないこはこちらに手を伸ばした。
「それと、さっき戦ってるときに思ったけど」
俺の頬を両手で包み、クイと顔を上げさせる。
「キレイな目してる。透き通るみたいな青色」
あの戦いの場で、俺も同じことをないこに対して考えたことを思い出す。
何もかもを見透かすように吸い込まれそうなピンクの瞳が、今も至近距離で俺を捕らえている。
「…っ、お前、距離感バグってない?」
何とかそれだけ口にすると、ほとけが後ろから「そうだよないちゃん」と眉を寄せた。
「セクハラは訴えられるよ」
「えぇ!? これでセクハラになんの!?」
天然なのか、本気で驚いたようにないこは慌てて手を離す。
ないとは思うけれど、これが計算だったらとんだ小悪魔だと背筋に寒気が走った。
テンションが上がって酒に手を出した子供組が酔い潰れた頃。
あにきは準備やら何やらで疲れてしまったらしく、テーブルに突っ伏して眠ってしまった。
その肩に、手近にあった毛布だけかける。
そしてチューハイの缶を手に持ったまま、俺は2階の自室からベランダに出た。
夜の冷たい風が吹き抜ける。
一度だけ身震いして、本日何缶目かのレモン味のチューハイに口をつけた。
「まろ、ここにいたんだ」
しばらくそこで夜風に当たっていると、不意に後ろから声をかけられた。
隣の部屋とはベランダが繋がっているらしく、ないこが顔を出す。
俺とほとけの部屋の隣は、ないことあにきの部屋らしい。
「よっと」と、飲んだ酒のせいか少しぐらつきそうになりながらもないこはベランダに出てくる。
自分も甘めの酒の缶を手にし、俺の隣に立った。
「5人共仲良いよね」
今日同じ時を過ごしてそう思ったのか、不意にそんなことを言う。
そこにないこ自身は含まれていないような言葉だったけれど、それでも嬉しそうに。
「…まぁ、2年前までずっと一緒やったしな」
「そのときも同じチームだった?」
「いや、俺とあにきだけ。子供組3人はまだ戦力にならんから、訓練と実戦演習ばっかりやらされとったし」
その時たまに指導係として面倒を見てやっていたことを思い出す。
その時からの腐れ縁だ。
当時を振り返ると、特にりうらは本当に成長したと思う。
「ないこは何でこの組織に来たん?」
隣を振り返って尋ねると、ピンク髪を風になびかせながら少し思案するような顔をする。
しばし目線を泳がせて何かを考え巡らせた後で、再び口を開いた。
「俺さ、大学で法学部だったんだよね」
少し飛躍したようにも思えた話に、俺はそれでも口を挟まず小さく頷く。
「法律の勉強は楽しかったんだけどさ。ある時疑問を持つようになって」
当時を思い出しているのか、少し遠い目をした。
「法律の道に進んでさ、例えば検察官になったとするじゃん。そしたら被告人の罪を追求するわけじゃん。正義感ある立派な仕事だと思うんだけど、その被告人が冤罪だって分かってる場合だとしても、罪を問わなきゃいけないんだよな」
「…まぁ、それが仕事やからな」
小さく相槌を打った俺に、ないこは「そう」と頷く。
「逆も然り。弁護士になったら被告人を守らなきゃいけない。無実の人のために戦えたらかっこいいけど、明らかに罪を犯してるクズみたいな人間でも、無罪や減刑を求めて戦わなきゃいけない」
手にした酒を一口呷り、ないこは続ける。
「そんで裁判官は、自分が見た物や集めてきた物じゃなくて…検察官や弁護士が提出した証拠や弁論で、被告人の罪を裁かなきゃいけない」
「……」
「俺はさ、まろ」
夜空を見上げながら呼びかけてくるないこは、それでもその目に何をも映していないように見えた。
ただ自分の心の中に向き合っているのかもしれない。
「自分の目で見たものを信じて、自分の耳で聞いたことだけ信じて、自分の中の正義に従いたいんだよ」
「…だから法律家じゃダメってこと?」
尋ねると、ないこは唇を歪めて皮肉な笑みを浮かべた。
「俺が高校生の時にさ。近所になついてくれてるかわいい小学生の女の子がいて」
急に話を改めたように思えたないこだったけれど、俺は黙ってその先を待つ。
「ある日、誘拐されたんだ。数日して警察が保護したから命に別状はなかったけど…ひどい目にあってたらしい」
具体的には口にしなかったけれど、ないこは恐らく内容を知っているんだろう。
ぐっと唇を噛む。
「捕まったのは近所の男子中学生だった。…少年法って怖いよな。そんなひどいことをした中学生でも、当時の少年法に守られて社会的には裁けなかった」
「……」
「法律に守られて逮捕はされないけど、精神鑑定は受けたんだって。でも結果は異常なしだったらしくてさ」
ピンク色の瞳を伏せて、ないこは一つ息をついた。
「結局どうなったと思う? 異常がないのにそんな犯罪を犯した奴をさ、それでも今のこの国では裁けないんだよ。『精神異常がないのにこんなことをしたことこそが異常』って考えらしい。『この少年が悪いんじゃなくて、異常だったから仕方ない。まだ幼い少年の将来も守らなくては』って」
ふざけた理論だ、とないこは付け足した。
「被害者や被害者の家族の気持ちを考えたら、俺はそんな理論認めたくない」
一瞬だけ目を伏せて、ないこは「だからさ」と強く続ける。
「俺は自分の目で見たことだけ信じて、悪人を裁きたいんだ。…この手で」
左手でぐっと拳を握り込んだのは、ないこの決意の表れだったのかもしれない。
「…こんな話したの、実はまろが初めてかも」
そこまで言って振り返ったないこは、微かに笑った。
神妙になりかけていた空気を変えようとするかのように、努めて明るい声を出す。
「俺に力を貸してくれる? まろ」
夜の風にピンク色の髪をなびかせて、ないこが言う。
即答するように頷くことはできなかった俺の頬を、冷たい風が撫でるように流れて行った。
コメント
3件
距離感バグってる桃さんが良すぎます! 「自分の目で見たもので」が桃さんらしいですね!!