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ある日の午後、静寂を破るように、重厚な扉がノックされた。
「大公隷様!あの、失礼します!」
返事もないまま、扉が開いた。
そこに立っていたのは、癒やしの魔法を学ぶ、最も魔力の弱い**六葉**だった。
彼女は、廊下に立ち込める冷気に少し驚きながらも、すぐに笑顔を向けた。
六葉は、学院長の命令で「魔力過多による研究員の体調不良」を回復させるためのハーブティーを届けに来たのだったが、まさかそこにいるのが、噂に聞く「絶対零度の玉座」その人だとは思っていなかった。
隷は、初めての不法侵入者に、一切の感情を込めずに冷たい視線を向けた。
「…貴様。許可なく私の領域に足を踏み入れた。即刻、学院から追放する」
その声は、凍てつく冷気を伴っており、普通の生徒なら一歩も動けなくなるほどの威圧感だった。
六葉は一瞬怯んだが、隷の顔色が、青白く、極度の疲労に晒されていることに気づいた。
そして、研究室全体の冷気が、彼の体から漏れ出た魔力の表れであることも、直感的に悟った。
「す、すみません!でも、私は学院長の命令で、体調を崩された方にお届け物を…」
六葉は、冷たい空気に震えながら、小さなハーブティーの入った籠を掲げた。
「無用だ。私は体調など崩していない。今すぐ立ち去れ。二度と私の視界に入るな」