数日後の午後。
業務を終えたフロントはひと段落し、控室に柔らかな空気が流れていた。
「桜坂さん」
書類を片づけていた律が、ふと声をかけた。
「はい?」
華は顔を上げ、首をかしげる。
律はわずかにためらったあと、視線を合わせた。
「今度、うちのホテルが主催する記念イベントがあるんです。
花火や演奏もあって、結構大きい催しで……」
華の目が輝く。
「えっ、素敵ですね!」
「……よければ、一緒に行きませんか」
その言葉に、華の心臓が大きく跳ねた。
「い、一緒に……?」
律は少し照れくさそうに目を逸らしながらも、はっきりと頷いた。
「はい。プライベートで。あなたと一緒に」
頬に熱が広がり、華は小さく息を呑んだ。
「……喜んで」