ゆあです。
今回の話でも、違和感の正体明かされないんですよね、乱モブ♀︎も出てこないんですよね、、、本当に申し訳ないです、!!!
状況説明ばかりですが一応次に続きはするので読んでいただけると幸いです、!
それではどうぞ。
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温泉を後にして部屋に戻り、今は夕食中に敷かれたであろう布団の上で、何故か彼と見つめ合っているところだ。
私は正座、乱歩さんは胡座で座り、無言で見つめ合っている。
こんな状況になっているのは他でもなく私が「話がしたい」なんて言ったからなのだろうが、なんというか、気まずくて、なかなか言い出せない。
普段は糸目な彼の目が今はしっかり開いていて、翡翠色の澄んだ瞳がこちらをじっと見詰めてくる。
彼の瞳は綺麗だけれど、全て見透かされてしまいそうで少し怖いのだ。 私は、それが好きだったりしたのだが。
なんとなく目を離してはいけない気がして、負けじと彼を見詰め返す。怖いから、少し薄目で。
判っていた事だけれど、空気が重い。
話がしたいなんて先に言わなければよかったかもしれない。なんの前触れもなく話し出した方が良かったかも。
そんな事を考えていたら、彼の口がゆっくりと動いた。
「太宰」
「⋯⋯はい」
「ここで話すのなんか厭じゃない?」
「え?」
「なんか、うん。暑苦しいし」
「え、じゃあ冷房を」
「それは大丈夫!まぁ兎に角ここじゃ嫌だから別の場所で話そう。そうだな⋯⋯あ!海とか、どう?」
海とか、どう。
海とか、どう、?
え、海?
「え、あの、海って、あの、海ですか?」
「どれか知らないけど多分その海だよ」
海。
別に普通の海ならば行った。なんの疑問も抱かず、「判りました」と了承しただろう。乱歩さんがそう言うのなら、と。
だが今はそうはいかない。何故なら此処の旅館の隣に広がる海は、海水浴場でもなんでもないからだ。
確かに砂浜はある。あるけれど、木の枝や岩が其処ら中にあって、行くのは危ない。それに今日は風が強く波も高いので最悪命の危険を伴うだろう。
灯台の光がぐるぐると回りながら海を照らしてはいるものの(海岸へ行く者の為の光ではなく船に位置を知らせる為の光であろうが)、其れさえ不気味な要素になっている。
「えっと⋯⋯⋯⋯心中をご希望で、?」
「馬鹿なの?そんな訳ないでしょ。ただ一寸、うん、話すなら広い所がいいなと思っただけ」
「へぇ、?⋯⋯本当に行くんですか、?」
「勿論。僕はこういう真面目な時に冗談でものを言ったりしない」
「⋯⋯」
嗚呼、何故だろう。前の彼に対してであればこの言葉に笑って返せたのに、今は声が出ない。
変わってしまったのは、私か、彼か。
「⋯⋯貴女がそう言うなら、行きましょうか、海」
「うん、有難う」
そう言って彼は微笑みを浮かべた。
何処か、悲しそうに。
「太宰ー!大丈夫ー!?」
「否!!正直全然駄目です!!!この、岩が!!貴方どうやってこの岩越えたんですか!?!?」
「回り道しなよ!!!ていうか後ろついて来てなかったの!?」
「貴方は気にしないかも知れませんけど!!私は浴衣の着崩れを気にするんですよ!!!大股じゃ歩けません!!歩幅!!考えてくださいよ!!!」
「ごめんー!!!!待ってるから!!そこ右!! 右行けば通れるから!!!」
「う゛・・・・・・あーーもう!!待っててください今行きますから!!!!」
こんなに馬鹿みたいに大声で話している理由は、岩が邪魔なのと波が煩いので普通の声量では全く相手に届かないからだ。だから渋々、馬鹿みたいに大声を出している。
本当に、どうして彼は海に行こうなんて言い出したのだろうか。
海岸に来る前、ロビーの男性に「何方へ?」と聞かれ、私が「ええと、少々海岸へ」と答えると、当たり前だが「海岸ですか、?あの、危険ですのでやめておいた方が宜しいかと⋯⋯」と言われた。言われたのだが、 乱歩さんが「大丈夫」と軽く流して会話を終わらせてしまった。
そして、今に至るのだが⋯⋯本当に勘弁して欲しい。
回り道をすればいいと言われたが、其方は長い草が沢山生えていて。 虫も沢山いそうで、本当に有り得ないくらい通りたくなかった。
通りたくなかったが、乱歩さんが待っているからと自分に言い聞かせ、何とか走り抜けた。
もちろん浴衣は崩れた。半ばヤケクソだった。
「はぁ、はぁっ、、乱歩、さんっ!!」
「お! 太宰!!遅かったじゃないか」
「否、多分貴方が早すぎるのだと思いますよ⋯⋯」
「そうかな?」
からからと楽しそうに笑う彼を見て、また少し安堵してしまった。
今の彼の笑みは、なんというか、疲れと自嘲に満ちている様に見えるから。
彼に笑っていて欲しいと思うのは、別に、恋などでは無いけれど。愛では、あるかもしれなかった。
親愛、敬愛、友愛、とか。
「太宰」
彼が静かに私の名前を呼ぶ。 波の音が煩い。
「話そうか。お前が話したい事、全部」
そう言い彼は振り向いて、私の方を見た。
乱歩さんの方が海に近い所に立っていて、私は其の、5mくらい後ろに立っている。
「⋯⋯ええ」
乱歩さんの表情は、暗くて見えない。
今日が曇りじゃなければ良かったのに、 と心底思う。そうしたら私達は月に照らされて、互いの表情が良く見えるのに。
⋯⋯否、晴れていても見えないか。今日は多分、新月だ。
最近ナオミちゃんが可愛いからと言って使っている月の満ち欠けカレンダーでは、今日の日付の月は新月だった、気がする。
あまりにも「可愛いでしょう!ね、太宰さんもそう思いますわよね!!」と言ってくるものだから、何となく覚えてしまったのだ。
⋯⋯だから?
だから彼は、今日有給を取ったのだろうか。
ここまで、見越していた?
部屋で話したくなかったのは、顔を見られるのが嫌だったから? でもどうして? 私が違和感を指摘することを見抜いていた? 何処まで彼の頭に入っている?
⋯⋯判らない。
考えれば考える程、判らなくなっていく。
彼の違和感は考えれば考える程増えて、判っていくのに、彼の思考は考えれば考える程判らなくなっていく。
なんて、悲しい。
「太宰」
「嗚呼、すみません。話、ですね。はい、ええ、」
「⋯⋯」
これを言ってしまったら、彼は悲しむだろうか。
だって言ってしまったら、圧倒的に強くて賢い江戸川乱歩の像が、崩れてしまう。
否、そもそも彼はそんなこと望んでいなかったのだろうか?
私や周りの人間が勝手に彼を強いと決めつけて、苦しめていたのかもしれない。
嗚呼、考えたくない。
彼の弱さなど、知りたくない。
⋯⋯でも、知らなくては。彼について。
だって彼は、乱歩さんは⋯⋯同僚で仲間、なのだから__。
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はい。まず、すみません!
この話、ほぼ状況説明で終わってしまった⋯でも長くしすぎると読みづらいし⋯という葛藤が、私にもございます。
申し訳ありません。
次で、違和感の正体わかるかな、!わかると思います、!はい、頑張ります、!
ここまで読んで下さりありがとうございました。
それではまた次の話で。