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今日は仕事が長引きすぎた。SnowManとしての仕事と、舘さんと二人での仕事。どちらもだいぶ押して、帰るのが夜中になってしまった。
「…今日早く帰れると思ってた…」
「車ない、どうしよ……」
『照、お疲れ様。』
舘さんが後ろから優しく声を掛けてくれる。俺は振り返って何事も無いように返す。
「ん、お疲れ様。」
『照、今日車?』
「ううん、早く帰れると思って、」
「歩いて来ちゃったんだよね笑」
お化けが怖い、なんて恐怖心を隠しながら舘さんと接する。見えるし怖いなんて言ったら、きっと信じてもらえないし、バカにされる。
『あらら、そっか、』
『じゃあ、一緒に歩いて帰る?』
「…え、いいの?」
舘さんは免許を持っていないから、大体タクシーか歩きでくる。今日は、たまたま舘さんも歩きだったようで、一緒に帰ってくれると言う。
『うん、照さえ良ければね?』
「俺は全然…」
「なんなら、一緒に帰らせてください…」
俺は軽く頭を下げた。いくら強がっても怖いものは怖いし、見えてしまうものは見えてしまう。一人だったらきっと足がすくんで動けなくなってしまうけれど、舘さんとなら大丈夫な気がして、俺は舘さんと一緒に帰る事にした。
『…はぁ、冷えるね…』
「…もう完全に秋だもんね、」
歩きながら、2人で世間話をする。2人で歩いて帰るなんて、いつぶりだろうか。Jrの頃はたまに舘さんと歩いて帰っていたから、懐かしい感じがする。
『…照、手貸して?』
「…ん、手?はい、」
舘さんに言われた通り手を差し出すと、手に暖かいものが触れる。カイロだ。もう冬に近付いているのだ、と感じる。
「…あったかぁ、」
『ふふ、暖かいでしょ?笑』
『阿部に貰ったんだー、』
嬉しそうに微笑みながら、俺にカイロを1つ渡してくれる。それだけで、心も手も温まったような気がした。
2人で世間話をしながら歩いていると、前から髪の長い女性が歩いてきた。俺はすぐにわかった。こいつは生きている人間じゃない、と。
「っ…、」
カイロを握る手に力が入る。怖さを態度に出さない為、出したら見えているとバレてしまうから。
『…照、どうした、?』
「あ、えっと、なんでもないよ…笑」
俺は笑って誤魔化した。もしここで言ってしまったら、幽霊も俺が見えている事に気付いてしまう。
『……もしかして、アイツ?』
舘さんはそいつの事を指差した。
「え、舘さん、見えるの…?」
俺は驚いて、思わず声に出してしまった。
『…あぁ、うん見えるよ。』
『照も見えるんだね、幽霊_』
俺はこくこく、と頷く。初めて会ったんだ。俺の事を理解してくれる人に。俺と同じ見える人に。きっと世界を探せばもっといるんだろうけど、こんなに近くに居たなんて。
『…大丈夫だよ照、怖がらなくて。』
「…っ、無理、怖いっ、」
俺は、舘さんに抱き着いた。怖さを隠す為、自分が隠れる為、色んな理由の為に舘さんに抱き着いた。
『……照、俺から離れないでね。』
舘さんの声が耳に残る。抱き着いたまま見た光景は、不思議そのものだった。
『……っ、!』
舘さんが幽霊に向かって、お札を向けている。そして、幽霊は苦しんで縮こまっている。
「…だてさ、」
『…静かにしてて。』
言われた通りに、俺は口を閉ざす。ただ、舘さんがやっている事を見るしかできなかった。
『……これで大丈夫。』
そういうと、舘さんは俺から離れ、幽霊の元に近付く。不安になって、俺も着いて行く。
『…来世はいい人生が送れるといいね。』
舘さんは、お札を幽霊に添えて、手を合わせている。この人は優しさの塊なんだろう。幽霊にもここまで優しく出来るだなんて、俺には出来ないから尊敬する。
『よし、じゃあ帰ろうか。』
手を合わせた後、俺に向かって話し掛ける。俺は頭の中が整理出来ていないまま、小さく頷く。
「…色々聞きたいことあんだけどいい、?」
そう言うと、困り眉になりながら、
『…いいけど、聞きすぎはダメだよ?笑』
と、笑みを零す。
「わかった、聞きすぎは気を付ける、」
舘さんの言葉に頷き、握っていたカイロが既に少し冷たくなってきていることに気付かないまま、俺達は2人で帰路を歩いた。
fin__
おはようございます、ハルです。笑
1話完結ストーリーいかがでしたか?
頑張って、短くまとめたよ。笑(
1話完結系、増えると思います。笑
お楽しみに…??笑
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