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どこの大学にもある、この新入生歓迎会という名の飲み会。

もちろん僕もサークルやゼミで誘われてヘベレケになるまで飲んで公道に吐瀉物を撒き散らしたりなどした記憶がある。

大学生なんて週末となればどこかで飲み会を開いていつだって飲む理由を探している。


僕がこのバイトを始めた頃もそんな飲み会が盛んに行われていた頃だった。

前日に散々飲み散らかして二日酔いでぐるぐるした頭のまま講義に出て、内容なんて頭に入ってこないまま言われたことをこなしてやっとまともになってきた頭でバイト先にたどり着く。


S岡さんは先に来ていて検品作業や発注をこなしていた。


「…っざす」


エプロンに腕を通しながら挨拶するとS岡さんはチラと僕に視線だけ向けてすぐに作業に戻ってしまった。

とりあえず僕はタイムカードを押してレジに向かう。


しばらくするとバックルームからS岡さんがフェイスアップをしながら現れた。


「僕君。ちょっといい」


S岡さんは徐に日本酒をレジに通すと小銭を乱暴にレジに詰め込んだ。


「え、どうしたんですか?」


僕の腕を引っ掴んでぐいぐいとバックルームに連れて行くS岡さん。

店内から見えなくなるや否や日本酒のパックをあけ僕の口に流し込んできた。


「うぇっ…え、ちょ、S岡さん、いくらなんでももう要らないです!」


やっと二日酔いが治ってきたというのに何をしてるんだこの人は。さっきの挨拶が気に食わなかったのか!?

戸惑う僕に構わずS岡さんは口を開けろ、といって日本酒を押し付けてくる。


「S岡さん、すいません。でも僕今ちょっとお酒は」


「いいから!」


問答無用と言わんばかりのS岡さんの圧にまけて一口口に含んだ。


に、苦い。とてつもなく苦い。S岡さんが渡してきたお酒はどこにでもある普通のものだ。こんなローカルコンビニですら置いてある。僕だって当然飲んだことはある。こんな味なんてしなかったはずだ。


苦い。そして、臭い。どこかで嗅いだ匂い、鉄臭い、血生臭い、

ーーー血?


掃除用具を洗うのに使う深いシンク?のような場所に顔を突っ込み思い切り吐いた。白い陶器に真っ赤な鮮血が滴り落ちる。


血!?なんで!?え?胃潰瘍とか!?


「もう一口!」


後ろからS岡さんの声がしてまた口に酒を流し込まれる。

吐く。赤い。吐く。赤い。


パニックに陥る僕の背中をトンッとS岡さんが叩いた。


その瞬間真っ赤な液体しか出てこなかった口から昼に食べたラーメンが胃の奥底から込み上がって出てきた。


「…っ…なん、で」


吐いても吐いても赤い液体しか出てこなかってのになんで今更。

S岡さんからティッシュと水を受け取って口を濯いで拭った。


「…急性アルコール中毒この時期多いからね。」


僕の吐いたものをテキパキと片付けながらS岡さんはレジで待つお客さんの元に走って行ってしまった。

僕はそのあとガムのマウスウォッシュを自腹で買った。


「S岡さん、さっきのなんだったんですか。」


「君のサークル〇〇でしょ。」


タバコの補充をしながらS岡さんが聞いてくる。

確かに僕の在籍するサークルだ。


「そうですけど。」


「…今はどうかわかんないけど僕が一年の時はそこのサークル飲ませるので有名でね。」


いつもの猫背を今日は一段と丸めたS岡さんがぼそぼそっと話してくれた。


「二年前の新入生歓迎会で調子に乗って飲ませすぎて女の子が緊急搬送されて亡くなったんだよ。」


「…そうだったんですか。」


なんとも後味の悪い話だ。とばつの悪い顔をしているとS岡さんはニヤリと笑う。


「死因は急性アルコール中毒ではないけどね」


そのサークルの先輩に弄ばれた末の当てつけの自殺だという。

喉を切ったそうだよ。アルコールで血が止まらなかったんだって。


そう言ってS岡さんは指を首のところで横にスライドさせた。


アルコールって怖いねと塩飴を僕に手渡しながら。

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