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私が色を分けられるようになってから5日がすぎた。

色の分別、”意味を持った形”の形成、図形の組み立て、そのどれもが順調だ。相変わらず意思を込めずにエネルギーの色を分けることはできないが、少しずつ認識するまでに掛かる時間が短縮している。

一度、明確に色を分別することができたからだろう。今後も、焦らずにしっかりと修業を続けていくとしよう。


それはそれとして、だ。最近は1日中背中がむず痒い。

自分の体内のエネルギーに意識を集中してみたところ、大量のエネルギーが私の背中、肩甲骨の内部に集まり続けていることが分かった。不可解なことに、このエネルギーの流れに関しては、私自身ですら制御することができなかった。

私にとって初めての体の不調ともいうべき症状のため、皆に相談してみたところ、ホーディに心当たりがあるそうだ。


彼曰く。


〈新たに部位が生じる際の予兆だな。我もこの角が生える少し前に力が頭に集まり続け、痒みが生じていた〉


とのことだった。なるほど。以前、羽が生えるんじゃないかと予想していたが、どうやらそれで合っているらしい。後どのくらいで生えてくるかはまだ分からないが。


〈だが、何が生ずるか、どれぐらいで生ずるかは、個体によって大きく変わってくる。故に主の背から何が生ずるかは分からん。あまり力になれず、済まん〉

「十分だよ。ありがとう。おかげで不安が解消された。それに、何が出てくるかおおよその予測はできているんだ」


やはり相談はしてみるものだな。特に私のような規格外の力を持った者は、一人で考えを完結させて行動を取るべきではないだろう。その結果、行動を抑止されたとしても、だ。


さて、不安も解消されたことだし、今日も修業を行っていくとしよう。正直なところ、この修行も行った分だけ上達したことが明確に実感できるため、やっていて楽しく感じるのだ。

成果の実感というのはモチベーションを維持するのに大切だ。

勉強や修練などでこれが不明瞭な場合、自分の行っていることが本当に正しいかどうか疑問を感じ、それ故に集中が出来ず、結果満足のいく成果を得られないということも十分あり得るだろう。



話は変わるが、修行の際にエネルギーに『理解』の意志を込めているからか、エネルギーの色に関してどのような性質を持っているのか、この5日間で段々と分かってきた。


まず”橙”。

ゴドファンスとラビックが持つ色だ。この色には土や石、金属。更には重力にまで影響を及ぼすことが分かった。

重力以外は操作すること自体はそれほどエネルギーを消費しない。ただし、土や一部を除いた石はともかく、金属を生成する場合はかなりのエネルギーを必要とするだろう。

重力はそれを更に上回るエネルギー量が必要になる。気軽に使えそうなのは、ゴドファンスぐらいか。


次に”紺”。

私以外に持っている子はいない。この色は水、及び”減少”の概念に影響を与える。

概念であるためか、その解釈の幅は極めて広い。温度の低下は勿論、物体の縮小、速度の低下など、”下げる”だとか、”減らす”といったものに関するあらゆる現象を引き起こす要因となる。

水に関しては説明不要だろう。私の知識で知る限り、大半の生物にとって水は生きていくうえで重要な物質だ。それを生成、操作できるのは重要なことだ。


続いて”赤”。

ホーディとラビックが所持している。この色は紺と対照的な色で、火と”増加”の概念に影響を与える。

減少の概念と同じく、”上げる”、”増やす”といったものに関する現象ならば大抵のことが引き起こせるだろう。勿論、相応のエネルギーは必要になってくるのだろうが。

火に関しては、私は火への影響というよりも、”燃焼する”という現象そのものに影響があるように感じた。


“水色”。

ゴドファンス、ウルミラ、レイブラン、ヤタールが持つ色だ。この色は空気や風だけでなく、空間にも影響を与える。

ウルミラが、容易に”入れ替え《リィプレスム》”を使用できる理由がこれなのだろう。この色のエネルギーを十全に理解することができれば、”入れ替え”以上に制限のない空間転移も夢ではなくなってくる。

尤も、それを実現するためには並外れた空間認識能力と情報処理能力が必要になってくるだろう。容易いことではない筈だ。


“緑”。

フレミーが所持している色。植物と、生命力に影響を与える。

生命力とは生命が持つ生きるための力。私が普段エネルギーと呼んでいる物とは別の、生命エネルギーとでも言えばいいのだろうか?それに影響を与えるようだ。

やりようによっては再生能力を持たない者にとって重要な回復手段になるだろうし、再生能力を持つ者は更に再生能力を高められるだろう。

植物に関しては、植物を操作するだけでなく、新たな植物を生み出すこともできそうだ。当然種子からになるし、声明を生み出す行為のため、膨大なエネルギーも必要になってくるだろう。


“黄”。

ホーディ、ウルミラ、レイブラン、フレミーが所持している。光と”放射”の現象に影響を与える色だ。

私の持つ知識が正しいのならば、光とは波の性質を持っている。その波が私達の目などの感覚器官を刺激することで視覚効果を得られるのだ。

尤も、光の性質はおそらく波だけではない。以前、何度か『視る』意思をエネルギーに乗せて目に集中したことがあったが、その際に光の波を確認できたと同時に、極小の粒子を知覚できたのだ。波と粒。その両方の性質を光は持っているのだろう。

また、この光の性質を辿ってみると、どうやら電気にも関係があるようだ。ホーディが角から放電出来るのは、この辺りが起因しているのかもしれない。


“紫”。

ホーディ、ヤタール、フレミーが所持している。この色は影と”吸収”の現象に影響を与えている。

黄色のエネルギーと対になったエネルギーの色と見て良いだろう。ただ、光が無ければ影は無い。光の当たらない場所、それは陰だ。即ち闇。どうやら、この闇にも影響を与えることができるようだ。やりようによっては、影を用いて物理現象を引き起こすこと可能かもしれない。

そして”吸収”。

周囲のものを取り込み自分へと変換させる力。ホーディの『黒炎』や『黒雷』に対象を引き寄せる力があったのは、この”吸収”が起因していることは間違いないだろう。


エネルギーの色がそれぞれ固有の効果を持つと分かったことで、何故私が意思の力だけで様々な事象を発生させられるのか、分かった気がする。

試しに、”紺”のエネルギーに『加熱』の意思を乗せてみても、温度は全く上昇しない。逆もしかりだ。望んだ事象に対応するエネルギー色に意思を込めることで事象が発生していたのだ。


では、”意味を持った形”と図形について考えてみよう。

図形を用いれば、自分の持たない色の特性の事象を発生させることもできていた。

何故か。

“意味を持った形”に”色”を示す形があるからだ。この”色を示す形”によって図形のエネルギー色を変換させることで、自身が持たない色の特性の事象であっても問題無く事象を発生させられるのだろう。


エネルギーに対する理解も深まり、修業も順調だ。今では多少時間は掛かるが、同時に三つの図形を組み立てて事象を発生させることも可能だ。

この事を皆に説明したら、上達が早すぎるとドン引きされてしまった。まさかフレミーにすら引かれてしまうとは…ちょっと悲しい。


相変わらず背中はむず痒いままだし、もう寝てしまおう。ふて寝だ。ふて寝。

悪いとは思うが、レイブランとヤタールとラビック、そしてウルミラを尻尾と両腕を使って寝床まで運んでいく。モフモフに包まれて悲しい気持ちを吹き飛ばそう。



頭の角を引っ張られる感覚と、背中の辺りを引っ張られる感覚。一ヶ所知らない感覚だ。

おそらくレイブランとヤタールが私の身体を引っ張っているとは思うのだが、何が起きている?そういえば、昨日まで感じていたむず痒さを感じない。


〈ノア様!起きて頂戴!背中が凄いわ!〉〈朝なのよノア様!でもそれよりも翼なのよ!翼!〉


つばさ?


翼か。やっぱり羽が生えたのか。感覚はある。自分の意思で動かすこともできるようだ。

だとすれば、やることはいつも通りだ。


検証の時間である。

ドラ姫様が往く!!

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