……週末、彼と共に外食へ出かけた後で、モールの中にあるリカーショップでお酒を選んだ。
「……これは、どうですか?」
彼が手に取ったのは箱入りで、いかにも高級感のある雰囲気が漂っていて、
「それって……」と、言いかけたけれど、さすがにいくらなのかまでは聞けなずに口をつぐんだ。
「ドンペリのロゼです」
「ドンペリ……」名前くらいは知ってるけど、やっぱりすごく高いんじゃ……と思っていると、
「数万くらいですから、手頃なのでは」
彼がそう口にするのに、数万円もするなんてと思い、「そんなにしないのでいいです。もっと気軽に飲めるようなのでいいので」と話すと、
「では、数千円くらいのを幾つか買いましょうか」
返事が戻されて、(数千円でも自分には高い気がするけど……)と、感じた。
高級レストランやスゥイートルームにいつもスマートに連れて行ってくれて、こんな風に自分ではなかなか買わないような物を買ってくれる彼に、私はちゃんとお返しができてるのかなとふと考えてしまう。
「どうかしましたか? 浮かない顔をされて」
私の心情を察したらしい彼から尋ねられて、
「いつもしてもらっているばかりで、お返しができてるのかなって……」
ぽつりと口にすると、
「そんなことを……」
と、肩がスッと片腕に抱き寄せられた。
「私は、あなたがいてくれればそれでいいので。
そばにいてくれるだけで、あなたには充分にお返しはもらっていますので」
髪がそっと耳にかけられ、ちゅっと軽く頬にキスをされると、心配はすーっと消え去って彼と一緒にいられる温かな幸せが胸を込み上げた……。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!