テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
夜の山奥に、遠くからエンジン音が響いた。その低い唸りは、静寂を裂く死神の足音のようだった。
🎼📢「……来やがったな」
いるまはカーテンを閉じ、机の下から拳銃を取り出す。
弾倉を確かめ、すぐさまスライドを引いた。
その表情は冷静に見えて、どこか焦りを帯びていた。
🎼🌸「……俺も手伝えることある?」
🎼📢「バカ言え。お前は後ろに隠れてろ」
🎼🌸「……隠れてるだけなんて、もう嫌なんだよ」
らんの声は小さく震えていた。
けれど、その目はまっすぐいるまを見ていた。
一瞬、いるまの胸に何かが突き刺さる。
――自分のために怯える少年を、これ以上無力な存在にしたくなかった。
🎼📢「……じゃあ、俺から離れんな。必ず隣にいろ」
🎼🌸「うん」
窓の外、黒い影が木々を抜け、家を取り囲んでいく。
銃声が炸裂した。
バンッ――!
ガラスが弾け飛び、冷たい雨が室内に流れ込む。
いるまは即座にらんを抱き寄せ、床に伏せさせた。
🎼📢「クソッ……! やっぱ裏切り者がいる!」
🎼🌸「いるま……っ!」
耳をつんざく銃声の中、いるまは壁際に身を滑らせながら応戦する。
弾丸が次々に木材を砕き、部屋に雨が降り注いだ。
だが、不思議なことに――らんの心は、もう恐怖だけじゃなかった。
背中を守るように立ついるまの存在が、胸に温かさを残していた。
🎼🌸(……俺、この人の隣にいたい。怖くても、逃げなくていいって思える)
銃声の合間、ふと二人の目が合った。
互いの呼吸が、荒く重なる。
🎼📢「……らん」
🎼🌸「……いるま」
その瞬間、何かが弾けた。
いるまは衝動のまま、らんの顎を掴み、唇を塞いだ。
銃声と雨音の中――それでもはっきりと感じる、柔らかい温もり。
唇が触れ合った瞬間、全ての音が遠ざかった。
🎼🌸「……っ、いるま……」
🎼📢「今さら後戻りできねぇ。……お前は、俺のもんだ」
頬に伝う雨粒が、涙と混じったのか分からなかった。
けれどらんは小さく頷き、震える声で答えた。
🎼🌸「……うん。俺も……もう、逃げない」
雨に濡れた部屋で、ふたりは初めて恋人としての口づけを交わした。
たとえ次の瞬間、銃弾が飛んできても――その心だけは奪われない。