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銃声と雨音が、まだ外から響いていた。隠れ家の木造の壁は穴だらけになり、崩れるのも時間の問題だった。
🎼📢「……ここはもう持たねぇな」
いるまは短く息を吐き、銃を再装填する。
その横顔は鋭く冷静――けれど、その目の奥にはらんを守る決意が宿っていた。
🎼🌸「……どうするの?」
🎼📢「裏の森を抜けて、廃工場に出る。そこまで行けりゃ撒ける」
🎼🌸「でも……」
🎼📢「“でも”じゃねぇ。……信じろ。俺を」
らんは一瞬迷った。
けれど、その言葉に頷くしかなかった。
――信じたい。
どんな状況でも、この人となら進めるって。
⸻
裏口を蹴破り、ふたりは雨の森へ飛び込む。
泥で足を取られながらも、必死に走った。
背後からは追っ手の声とライトの光。
銃弾が木の幹を抉り、破片が飛び散る。
🎼📢「走れ! 止まんじゃねぇ!」
🎼🌸「わ、分かってる!」
足がもつれ、らんが転びそうになる。
その瞬間、いるまが腕を掴んで引き上げた。
強く握られた手の感触に、らんの胸が熱くなる。
――これは“守られるだけの手”じゃない。
自分も、この人と一緒に生きるための手なんだ。
⸻
しばらく走った後、古びた廃工場にたどり着く。
息を切らしながら、ふたりは鉄骨の影に身を隠した。
雨が屋根を打ちつける音だけが響く。
🎼🌸「……はぁ、はぁ……っ。ここなら……大丈夫?」
🎼📢「一時的にな。……けど、長くはもたねぇ」
いるまは濡れた前髪をかき上げ、煙草を取り出した。
火をつけずに指先で転がすだけで、深い影を落とした表情を見せる。
🎼🌸「……いるま、顔、怖いよ」
🎼📢「……なあ、らん。
昔、俺のせいで死んだガキがいる」
🎼🌸「……え?」
声が震えた。
いるまの言葉は、いつもの軽口とは違い、ずっしりと重かった。
🎼📢「ガキのくせに俺の真似して、銃を持って……撃たれて死んだ。
俺は“守る”って言ったのによ。結局、何もできなかった」
拳を握る音が聞こえるほど、悔しさが滲んでいた。
🎼📢「……だから俺は、もう二度と繰り返さねぇって決めた。
お前だけは……絶対に、俺の手から離さねぇ」
🎼🌸「……いるま」
らんはゆっくりとその手に触れた。
冷たい指を包み込むように握りしめる。
🎼🌸「……俺は、“守られるだけの存在”でいたくない。
一緒に生きたいんだよ。……それじゃ、だめ?」
いるまの目が大きく揺れる。
いつもの鋭さが消えて、ただひとりの少年を映していた。
🎼📢「……チッ。ガキのくせに、生意気言いやがって」
けれど、その声は震えていた。
次の瞬間、いるまはらんを強く抱きしめる。
🎼📢「……分かったよ。じゃあ一緒に、生き延びようぜ」
🎼🌸「……うん」
鉄骨の隙間から差し込む雷光が、ふたりの影を照らした。
嵐の夜の中、彼らは初めて“逃げ場”ではなく“居場所”を見つけたのだった。