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海の紅月くらげさん
それから数分後、複数人の足音が聞こえくる。そして勢いよく化学室のドアが開かれた。
「実里!」
潤が実里くんに駆け寄り、背中に触れないようにそっと抱きしめる。
潤は少し息が上がっていて、不安そうな心配そうな顔をしている。あんな風に喧嘩していても、みんなお互いのこと大事に思っているみたいだ。
「……よかった。実里、ごめん。怖かったね」
「な、んだよ……っ」
潤は抱きしめたまま実里くんの頭を優しく撫でる。
「もう大丈夫だから。怖くないよ。俺が傍にいる」
「……っ」
実里くんは何も言わなかった。けれど、その時彼の頬に流れた一筋の涙が答えのように思えた。
「少しずつ、少しずつでいいから…………暗闇を克服していこう」
潤は実里くんをすごく大切に思っていて、家族で、お兄ちゃんだ。
それに、安心したのか実里くんの表情が少し和らいでいるように見える。
「ましろ」
暗い場所にいたせいか和葉の金色の髪が少し眩しい。
「……お前は大丈夫か」
「う、うん」
一瞬、たった一瞬だけ和葉が目を細めて笑った。
こんな和葉……初めて見た。
「お前が実里の傍にいてくれてよかった」
和葉の大きな手が私の頭を軽く撫でる。
今日の和葉はいつもより優しい気がして、少しくすぐったい。
そういえば、一番五月蝿いはずの人が静かだ。もしかしたらこういうときくらいは空気読めるのかな。
と、考えていると――――パシャッ!パシャパシャパシャッ!
「ベストショット!」
武蔵先輩が楽しそうにスマホで写真を撮っている。
「……武蔵先輩、空気読んでください」
武蔵先輩はどんな時も武蔵先輩だ。
こんな時、いつも止めてくれるのは歩くんのはず。けれど、先程までそこにいたはずの歩くんがいなかった。
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