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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第32話 〚受け入れられたと思えた日〛(真壁恒一視点)
黒板に、
自分の名前が書かれていた。
「1班」
その二文字の横。
(……入れた)
胸の奥が、
一気に軽くなる。
誰も、
はっきり反対しなかった。
誰も、
「嫌だ」と言わなかった。
それはつまり——
(受け入れられた)
そう、
思ってしまった。
澪たちは、
黙っていた。
でも、
黙るってことは、
拒否じゃない。
そうだろ?
(大人が決めたとか、関係ない)
結果が、
全部だ。
席に戻る途中、
1班の近くを通る。
えまが笑ってる。
しおりが何か話してる。
みさとが頷いている。
海翔と玲央は、
少し離れて立っている。
湊は、
澪の隣。
その輪の中に、
俺も入る。
(……普通だ)
誰も、
俺を追い出さない。
視線を逸らされることも、
さっきより少ない。
(な?)
(やっぱり、
俺が嫌われてたわけじゃない)
今までが、
噛み合ってなかっただけ。
冗談の言い方とか、
距離感とか。
修学旅行で、
一緒に動けば、
分かり合える。
そうに、
決まってる。
澪の方を見る。
澪は、
こちらを見ていない。
でも、
それも普通だ。
(意識してないだけ)
(避けてるわけじゃない)
そう、
都合よく考える。
「なぁ」
声をかけようとして、
一瞬止まる。
(今は、
まだいい)
焦らない。
だって、
同じ班なんだから。
何日も、
何泊も、
一緒にいる。
(距離は、縮まる)
頭の中で、
未来が勝手に広がる。
写真を撮って、
笑って。
夜、
同じ部屋で話して。
「最初は苦手だったけど、
今は平気」
そう言われる自分。
(……悪くない)
いや、
むしろ——
(これが、正解だった)
俺は、
選ばれなかったんじゃない。
“順番が遅かった”だけ。
澪が、
たまたま優しかったのも、
偶然じゃない。
ちゃんと、
繋がる線だった。
そう信じた。
信じたかった。
教室の窓から、
夕方の光が入る。
その中で、
俺は初めて、
安心して息をした。
——この場所に、
いていいんだと。
その安心が、
誰かの“仕方ない”の上に
成り立っていることに、
気づかないまま。