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あるところに、小さな小さな
クマの男の子がいました。
彼はいつも同じリンゴの木の下に
体当たりをしておりました。
「クマッ、クマッ。」
彼は何度も何度も、何度も何度も何度も
体当たりをしていました。
「ガルルル、クマァ!!!!」
彼にはどうしても許せないクマがおりました。
そのクマの名前は《雨の日のレイニー》。
彼の家に上がりこみ、彼の家をめちゃくちゃにし、雨のように去っていったそのクマを
彼はどうしても、どうしても許すことが出来ませんでした。
「クマァ!!……ゥゥゥ。」
リンゴの木に強く頭を打ち過ぎて
男の子はすってんころりんと転んでたんこぶを作ってしまいました。
「ぅぅぅぅ!!!」
雨が降ってきました。
男の子は雨が嫌いでした。
嫌いな雨に打たれながら男の子グマは
何度も何度も、何度も何度も体当たりを
しました。
それをずっと見ているものがおりました。
太陽さんです。
太陽さんは彼を気に入りました。
ぱぁぁぁ、と彼の元を温かい光が
照らしました。
「な、なにクマ!?」
太陽さんは彼をじっと見つめて言いました。
(いいよ。)
こうして彼は、太陽さんと友達になったのです。
「太陽さん太陽さん、このリンゴ焼いてもいいクマ?」
(いいよ。)
太陽さんがそう言うとリンゴはほかほかの焼きリンゴになりました。
「太陽さん太陽さん、この川を干していいクマか。」
太陽さんは答えませんでした。
「わかったクマ、泳いで渡るクマ。」
男の子はゆらゆらと川の中を泳ぎました。
「太陽さん太陽さん、ボク、どうしてもゆるせないクマがいるクマ。」
「そのクマのもとに連れていってくれない
クマ?」
太陽さんは答えません。
「これから鹿さんと猪さんを食べないで生きるクマ、これからお魚さんとカニさんを食べないで生きるクマ。だからどうか、そのクマのもとに連れていってくれないクマか?」
ぽつぽつ、と雨がふりました。
(いいよ。)
こうして彼は《雨の日のレイニー》の元へ
太陽さんに運んでもらいました。
《雨の日のレイニー》は驚きました。
自分の目の前に大きな、大きな、とても大きな クマがいるではありませんか。
《雨の日のレイニー》は低く構えました。
《雨の日のレイニー》はうなりました。
《雨の日のレイニー》は吼え、吼え、吼え
……..そして《雨の日のレイニー》は
厳かに頭を下げました。
大きなクマは静かに彼の元を去りました。
「太陽さん太陽さん、今までありがとう
クマ。」
「ボク太陽さんのおかげで大きくなった
クマ。」
「だからこれからも見守っててほしい
クマ。」
太陽さんはそれからその男の子のことを ずっと、ずっと、静かに見守っていたのでした。