日中スマートフォンでネットサーフィンして色々ブックマークしておいたものを、愛用の白いノートパソコンから開く。
スマートフォンとパソコンのWebブラウザ、連動してるからとっても便利♪
開発してくれた皆様、有難うございます!
画面を見せながら「絵柄は違うんですけど、こっちのナマケモノもすっごく可愛いと思いませんか?」と前のめり気味に声を弾ませたら、クスッと笑われてしまった。
つい大好きなナマケモノグッズに興奮しすぎた事に気がついて真っ赤になったら、「だったらついでに春凪も同じものを買いませんか?」と、まさかの提案。
オマケのように、にっこりと柔らかな最上級の微笑み付き。
時折そんな風にふと見せられる笑顔が、私へ向けられた心の底からの信頼の証みたいに思えて、ドキッとさせられる。
だけど、あくまでも私と宗親さんは偽りの関係。
そんな勘違いをしてはいけない。
「同じのにしたら、見分けがつかなくなっちゃうじゃないですか」
長く一緒にいるマグカップを裏切れないという気持ちとともに、何とかして宗親さんとの間に、ある一定の線引きをしておかないとしんどくなっちゃう!とも思って。
私、自然に笑えているかな?って頭の片隅で考えながら言ったら「それもそうですね」ってちょっとだけ悲しそうな顔をされた――気がした。
きっとそれもこれも私の中の「そうだったらいいな」って願望が見せているものだと思う。
「――あ、でしたらこういうのはいかがでしょう?」
でも私の大好きな宗親さんは、一筋縄ではいかないのです。
ニコッと笑うと、宗親さんが「ちょっと失礼しますね」と言いながら私のパソコンをちょちょいと操作なさって。
私にある画面を見せてきた。
「これ……」
それはピンクを基調としたカップと、水色を基調としたカップ各々に、様々な動物が描かれているマグカップのページだった。
動物たちは、口元だけがほんのちょっとカップから突き出すように立体的に盛り上がっていて。
ピンクと水色は対になるらしく、持ち手と持ち手を外側に向けてカップ同士を合わせると、描かれた動物たちがキスをするようになっていた。
生き物の種類は猫、犬、兎、小鳥、コアラ、カンガルー、猿、熊、パンダ、などなど。
ナマケモノこそなかったけれど、結構種類が豊富で、組み合わせも好きに出来るみたい。
おまけに、望めばイニシャルも入れてくれるんだとか。
「すごいですね、これ」
ナマケモノ縛りの罠に陥っていた私は、こういうページもあったんだ、と宗親さんのリサーチ力に改めて感心させられる。
やっぱり宗親さんはすごいなぁと思って。
それと同時――。
「まさかお仕事中にこんなの探してらしたんですかっ?」
ドキドキしながら問いかけたら
「いくら何でもそんな不謹慎なことはしませんよ。昼休みにRed Roofでホットサンドを齧りながら、ね」
と心外そうな顔をなさる。
ごめんなさい。そりゃそうですよね。宗親さん、お仕事に対しては鬼のように真面目な方でした。
そういえば、普段から、宗親さんは片手でつまめるものを食べながらパソコンに向かっていらっしゃることが時々あって。
私、宗親さんにお弁当を作ってもいいものかどうか迷っているのは時折そう言う姿を拝見したことがあったから。
きっと内容がお仕事ではなかったから、今回は喫茶店まで出向いてスマートフォン片手にネットサーフィンをしていらしたんだろうな、と思ったら何だか可笑しくなってしまった。
だってだって……きっと傍目に見たら真剣なお顔をしてお仕事をしていらっしゃるように見えたでしょうけれど、実際見てらした画面はこれなんですよ?
自分だけが、宗親さんの素敵な秘密を知ったみたいに思えて嬉しくて。
思わず笑ったら、即座に宗親さんから「春凪、今夜もベッドで朝まで泣かされたいですか?」と声を低められてしまう。
「いっ、いえっ。あっ、ああいうのは週末だけでっ! でないと宗親さんも私もきっと身が持ちません!」
思わず条件反射。考えなしに言ったら、一瞬キョトンとした宗親さんが、次の瞬間には「週末なら良いの? それはとても楽しみです」と極上の腹黒スマイルを浮かべていらした。
きゃーっ! 私の馬鹿っ。
ぼ、墓穴掘っちゃったじゃない!
しかも実際はそうなることが嫌じゃないと思っている自分がいるのも確かで。
どんどん自分がエッチになっていくのを感じてちょっぴり怖いです。
***
「で、どの組み合わせにしますか?」
画面を指さされて、私は「う〜」と真剣に悩む。
自分のはどれでもいい気がして決めづらいけれど、何故か宗親さんには「これしかない!」と思えるデザインがあって。
二人でそれに統一するのも変かなぁとかあれこれ思い悩んで迷いまくっていたら、業を煮やされたのかな?
宗親さんが「お互いに相手のイメージに似合うと思うのを選びっこするのはどうでしょう?」と提案していらした。
宗親さんにはこれだ!って言うのがビビッときていた私は、二つ返事でOKをして。
せーの!でお互いに何を選んだか指差したら、宗親さんは「小さくて愛らしいところが春凪っぽいので」とハムスターを選んで下さって。
私は――。
「まぁ確かに僕らしいかもしれないですけどね」
と宗親さんを苦笑させてしまいました。ごめんなさい。
結局、「せっかくだから」とイニシャルも入れてもらうように申し込んだので、届くまでに二週間かかるみたいです。
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