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外から聞こえる、まだ鳴くのが下手なウグイスの声で目が覚める。
見慣れない天井に一瞬困惑したが、寺の客室で寝ることを思い出した。
(今、何時だ…?)
布団を畳んで押し入れの中に置き、客室から出る。
少し冷たい廊下を歩き、顔を洗うための外へ出た。
明治時代初期の洗面所は、家の外の井戸に置かれることが多いのだ。
井戸と簡素な囲いを見つけてそこに向かうと、先客がいた。
「おはよ〜ございます…」
寝起きの声で羂索に挨拶する。
「おはよう、今日は9時ごろに出発するよ。」
羂索と入れ替わって私も顔を洗った。
朝食を食べ終え身支度をする。
昼食用の昆布や梅が入ったおにぎりを作り、弁当箱に入れた。
水筒に井戸の水を入れたりしているうちに9時になる。
「そろそろ時間だね、行こうか。」
「はい。おにぎりと水筒を持っていくので、空腹になったり喉が渇いたときは使ってください。」
寺の外に出ると目の前に広がる墓地。少し右を見れば、井戸と洗面所がある。
その先に広がる森を歩き始めた。
聞こえてくる音は私達が歩く音ぐらいで、とても静寂な森だ。
「何か目途はあるんですか?」
「森を抜けた先には廃村があってね。そこに呪霊が出たらしいんだ。」
しばらく歩いていると、開けた道に出た。
「多分この辺かな。」
十数軒の今にも倒壊しそうな廃屋と、雑草が大量に生えてる長年放置された畑が見えた。
廃村に近付くほど寒気がする。呪霊のせいだろうか。
(普通に怖いから戻りたい…)
そう思いながらも横を見ると、羂索がいなかった。
全方向を確認しても、それらしき姿は見当たらない。
「どこ、ですか…?」
(呪霊の影響なのか…?でもあの羂索がただの呪霊ごときの術中にはまるなんて到底ありえないし…じゃあ私が呪霊の影響を受けてる??というか、ここに1人でいるの怖いんだけど…)
恐怖で身体が震えたり心拍数が上がる。
羂索が突然いなくなった今、どうすればいいかも分からない私は立ちつくすことしかできなかった。
羂索視点
私は一際高い木の上に立った。ここなら廃村全体が見える。
奥にある1軒の廃屋から呪力を感じた。2級ぐらいの呪霊だろう。
暁琥珀の方を見ると、遠目でもすぐに分かるほど怖がっていた。
(呪霊との子を孕める特異体質を持った暁琥珀に対して、あの呪霊はどのように接触するのかが気になるね。)