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美香からの電話に、清香の大きな黒い瞳が、高塚の顔を見て様子を伺う。
「妹さんだったら、スピーカーで一緒に聞くのは悪趣味ですか?」
「いいえ、妹を知ってもらう為にも、いいと思います」
清香はスピーカーに切り替えて電話にでる。
『ちょっとお姉ちゃん、主婦が昼間から家を空けるって、どういうつもり?』
「また家に来てるの?」
『そうよ。早く帰ってきてご飯を作りなさいよ。お義兄さんも私もお腹ペコペコなんだから』
「旦那には出かけるって言ってきたし、美香がいるんだからご飯作れば」
『私、食事なんて作ったことないの知ってるでしょ。ご飯作るのはお姉ちゃんの役目じゃない』
「┅┅忙しいから切るね」
『ちょっ』
「会っていた時の妹さんは、やっぱり演技だったか。最初から興味がなかったけど」
「いつもあんな感じで、昔から私を家政婦扱いなんです」
「そしてあなたは、思ったより優しくて我慢強い人なんでしょうね」
「え?」
男性で姉妹を比べて、清香の味方をする人に初めてだ。
美香は男性の前では猫を被り、初めて付き合った相手に毎日お弁当を持っていったが、それは毎朝、清香が早起きして作ったお弁当だった。
「そんな風に私の味方をしてくれる人は初めてです」
思わず本音がこぼれてしまう。
「あまり周りの人間に恵まれていないようですね。でも清香さんには原さんもいるし、これからは僕が力になります」
「高塚さんと友美がいてくれて、心強いです」
「お待たせしました。アイス烏龍茶です」
「では、今後の予定を相談しましょう」
高塚は手帳を取り出して、空白ページを開く。
「実は美香は結婚相手には高塚さんが最適で、恋人には私の夫を望んでいるんです」
「なるほど。それで清香さんは、妹さんと旦那さんをどうしたいと思っていますか?」
これは簡単なようでいて、難しい問題で、清香自身も2人についての気持ちが短い間にコロコロ変わってしまう。
「最初は、高塚さんを気に入ったようなので、2人がまとまれば全てが上手くいくと思っていました」
「┅┅」
「でも美香は結婚後も二股をかけるつもりだと知り、美香から高塚さんも旦那も引き離そうと思ったけど」
「また考えが変わったんですね」
コクリと清香はうなずく。
「結論は美香と私の夫はお似合いだということです。私は夫と離婚したいし、美香と夫を奪い合うつもりはありません」
「でも一つだけ、妹さんが他の男に手を出して被害者が出ないようにする必要があると思うな」
「そうですね。また私と同じような被害女性も作りそうですし、美香の本性を身内にだけでも公表するのがいい予防策になるかもしれません」
「身内に公表か、だったら、誕生パーティーを大規模に開いて、そこで本性をばらすとか?」
清香の話しを、高塚は形として言葉にしてくれる
この人は口先だけではなくて、本当に浮気をされた知り合いの知り合いに過ぎない1人の女を助けてくれる気なのね。
「そうですね。美香には味方となる友人も多いので、その人たちにも知っておいて欲しいです」
「作戦を立てて、それを成功させる為には、僕がもう少し妹さんと仲良くなるフリをしないといけませんね」
「確かに。美香は結婚、結婚、騒いでますけど、さすがに3ヶ月の間に週一回夕飯を食べただけで結婚と言うのは無理がありますよね」
「それと僕と旦那さんがいる時に、妹さんと旦那さんがどんな態度に出るかも撮影しとくと使えるかもしれませんよ」
友美に聞いて、どうやら高塚は清香が家中に監視カメラを隠していることを知っているのかもしれない。
「4人で集まるとなると、家に招待するか外でWデートするとかですかね?」
「Wデートか、相手が逆なら楽しめるだろうけど┅┅まだ早いですよね」
コクリ
小さな頭が頬を染めてうつむいてしまう。浮気をされているとは言っても、夫のある身だ。軽率なことは出来ない。
「僕は待ちますよ。ちゃんと旦那さんの浮気を証明して、離婚してから申し込むつもりです」
何をそんなに気に入ってくれたのか清香には分からないが、光一がいなければ高塚の手を取っていただろう。
「今は何も答えられません。答える資格がありません」
それが高塚に言える精一杯の答えだった。
「そうだ。ちょっと意地悪な作戦を思い付きました」
悪戯っ子のような瞳で、自分の考えた作戦を清香に聞かせた。
ふふ。美香があわてる様子が目に浮かぶようだわ。でもイタズラの内容は子供騙しのようなもので、高塚が根っからの善人であることを思わせる。
「もっと一緒にいたいけど、うるさい妹さんもいることだし、我慢します」
「何だか身内の恥をさらしまくって、すみません」
「いいえ、将来の為にもゴミは綺麗に掃除しとかないといけませんから」
あら?割りと毒舌。それに将来って言葉が少し気にかかる。
席を立つと大きな手が、清香に差し出されたので、清香もその手を借りて、ソファから立ち上がる。
支払いのレジカウンターには向かわず、そのまま専用のエレベーターに向かうと、出口にウエイターが立っていた。
清香は高塚が、支払いを忘れたのだと思いバッグから財布を出そうとする。
「こちらご注文いただきましたオードブルの詰め合わせでございます」
「ありがとう」
高塚は菓子折りのような綺麗な紙袋を受け取り、清香の背中にそっと手をそえて歩くように伝える。
ウエイターが呼んだエレベーターで2人は下へ降りた。
「車で送っていきますよ。妹さんに会うといけないから、近くまで」
「よろしくお願いします」
ヒルズから出て車で送ってもらったのだが、外はまだ明るい。
夕方なら夕焼けが、夜なら夜景が綺麗だっただろうなとバカなことを考えてしまう。
「疲れましたか?」
「いいえ、久しぶりにワンピースを着て、素敵なところでお茶をして楽しかったです」
「それは良かった。また作戦会議が必要な時には、一緒に出掛けましょう」
「はい」
いけないと思いつつ、「はい」と肯定してしまう。清香は高塚とまた来たいと思っているのだ。
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#復讐