テラーノベル
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革命どころか、私にとっては人生最大のバッドエンド(物理的な意味で)の再来だった。
マリンは興奮冷めやらぬまま
「私、陰ながらお二人の恋路を全力で見守らせていただきますわ!」とだけ言い残し
まるでお花畑が見えるようなうきうきとした足取りで去っていった。
(誰も……私の味方はいないの!? 本来のヒロインが恋のキューピッドになるとか、物語的にこれいいの!?)
◆◇◆◇
その日の夕刻
逃げ場のない絶望を抱えて自室へ戻ると、まるで私の帰宅を予見して待ち構えていたかのように
レオン様が部屋の扉の前に立っていた。
レオン様は私を見ると、聖母のような静かな微笑みを浮かべ、音もなく扉を開けて私を中へと促した。
いつもと変わらない、洗練された騎士の仕草。
なのに、なぜか今日は部屋の空気が薄く感じるほど、妙に居心地が悪い。
「……メリッサ様? 先程からずっと、物憂げなお顔をしていらっしゃいますね」
気づけば、彼の革手袋越しではない、素肌の指先が私の額に優しく触れていた。
「ひゃっ!?」
びくりと肩を揺らす私の、小動物のような反応を見て、レオン様はふっと口角を上げる。
「おや…驚かせてしまいましたか?」
「い、いえ……少し、明日の献立のこととか、考え事を……」
言い終わる間もなく、彼は音もなく私の背後に回り込み───
ドンッ!
「え……?」
次の瞬間、私は壁と彼の長い腕の間に完全に閉じ込められていた。
いわゆる、前世の記憶にある「壁ドン」というやつだ。
振り返れば、すぐそこに、彫刻のように整った端正な顔立ちの彼が迫っている。
その青い瞳には、いつもの冷徹な理性の光ではなく、どろりと溶け出すような底知れない熱情が渦巻いていた。
「本当に考え事だけですか?」
鼓膜を直接震わせるような、甘く低い囁きが耳元を掠める。
「例えば……僕のこととか。それとも、あのマリン様と、また僕を誰かに押し付ける相談でもしていたのですか?」
吐息さえ感じるほどの至近距離。
(何これ!? ゲームの追加DLCでも、こんな心臓に悪いイベントなかったわよ!?)
頭の中は、まさにショートした機械のように火花を散らして大混乱。
「レオンとマリンさんがお似合いだから、私は──」
逃げたい。
でも、レオン様の手が私の細い手首を
壊れ物を扱うような、けれど絶対に離さないという意志を込めて掴んでいて、身動きひとつ取れない。
「マリン様と親密になられるのは良いことです。ですが」
彼は一度言葉を切り、私の目をまっすぐ、逃げ場を塞ぐように見つめた。
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