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「「オレだ!」」
「アンタは類を傷付けただろ!」
「だが、お前の知らない類の事を知って、理解した!」
司と彰人が対峙している中、後から追い付いた寧々が保健室を覗き込む。
「ねぇ、類は…?」
「は?!」
「そこに…居ない?!」
類が居たはずのベッドには、誰も居なかった。ベッド横の床に置いてあった上履きも無くなり、さっきまで閉まっていた窓が開いている。
「逃した!」
「追わなければ!」
「あ、ちょっと…!」
司と彰人が先行し、それを追うように寧々も。3人は窓を軽々と越え、外に出る。寧々だってショーキャストのフィジカルお化けである。
今一番可哀想なのは、その場面だけを目撃してしまった保険医である。
「え…?」
上履きのまま走り出した3人。類は案外直ぐに見つかった。運動場の隅に蹲っているのだ。
追体験の名残?
体調不良?
怪我?
そんな事を思って3人は類に駆け寄る。
「あっ」
類の目線の先から、蝶が飛び去った。
「類!大丈夫か!こうなるからオレが」
「オレだっつてんだろ。大丈夫か?帰るぞ、類。」
「ちょっとアンタ達うるさい。類、立てる?」
各々が類に心配の言葉(約2名怪しい人達が居るが。)をかける。
「いやぁ、窓の外をここらでは珍しい蝶が飛んでいたからね、思わず追いかけてしまったのさ。」
類はそう言って立ち上がってからきょとりと司と彰人に聞いた。
「それで、司くんと彰人くん、演技の練習は終わったのかい?」
「は、え?」
司は固まり、寧々は呆れる。彰人は…うん。
「神代センパイさっきまで寝てたんだから戻りましょ。」
「でも、まだあの蝶の生息場所を」
「戻りましょ?」
彰人のニコリとした圧に、類の背中にゾクリとしたものが走り、冷汗が垂れた。
「あ、ぅん…」
彰人が類の手を引く。司はまだ固まっており、寧々が司の顔の前で手を振っていた。
「そうだ、今日俺ん家来ません?」
「いい、けれど…」
「はっ…!」
「あ、生き返った」
「類は?!」
「東雲くんが連れてったけど…」
「はぁ?!」
司はその言葉を聞くやいなや全力で走り出すが、如何せん司は彰人の家を知らない。類に電話するも何故か出ないし、彰人も勿論出ない。
(オレと彰人の言い争いが演技だと誤解しているのなら、何故電話に出ないんだ…?)
同時刻
(東雲くんの圧が強くて思わず頷いて来ちゃったけど…)
「ここがオレの家だ。」
(なぜだか、入ってはいけないような気がする。なんだ?…瞳?)
彰人の瞳を、類は見た。黒くて、粘度がある…何かに執着している瞳。本能的な恐怖に、類は腰が抜けそうになった。
「何突っ立ってんだ?」
その時、類のスマホが震えた。司からの着信だ。類は普通にそれに出ようとするが、類より先に彰人が切るボタンを押した。
「ぇ、どうしたんだい?」
「…入れよ」
類は走り出した。何のために?彰人から逃げるために。
「は?おい!」
彰人も即座に走り出す。運動神経、地の利、軍配が上がっているのは、どちらも彰人である。
#短編集
かの
176
ねずたろう
20
コメント
1件
「彰人のあの瞳の描写、めっちゃ鳥肌立った…🥀」 類が本能で逃げ出したの、正解だよ絶対。窓から蝶追いかけてたのが嘘みたいな空気感になってて、この回だけで彰人のヤバさがグッと深まった感じがする。保険医さんだけ置いてきぼりなのも笑えたw 次、類どうなるんだろ…すごく気になる😶🌫️