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訓練が終わり、楡井秋彦は休憩の間に少しだけ伊織に話しかけていた。「桜さん、さっきの言葉、本当に嬉しかったっす。なんか、オレにもまだやれることがあるんだって思えたっすよ。」
伊織は静かに彼を見つめながら頷き、「その気持ちを忘れないで。自分を信じ続ければ、きっともっと強くなれる。」と短く答えた。その声には冷静さの中に微かな優しさが宿っていた。
少し離れた場所でその様子を見ていた蘇芳隼人は、訓練場の片隅で静かに考え込んでいた。彼の目には、伊織と秋彦のやりとりがどこか微笑ましく映っていたが、同時に心の奥で何かがかすかに揺れているのを感じていた。
その後、訓練場の片隅でふとした瞬間に伊織と蘇芳が二人きりになった。蘇芳はいつもの穏やかな声で、「伊織さん、君は本当にみんなを支えているね。その姿が、なんというか、凄く魅力的だと思う。」と、普段の冷静な彼からは少し意外な言葉を口にした。
伊織は一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに静かな微笑みに戻り、「そんなことはないわ。私はただ、自分にできることをしているだけ。」と返した。
その微かなやり取りには、何かが始まりそうな予感が漂っていた。
旅館の広間で、静かな夜が流れていた。伊織は窓辺に座り、遠くに見える海の景色を眺めながら静かに考え込んでいた。彼女の視線はどこか遠くへと向けられていた。
その様子に気付いた蘇芳隼人が彼女の隣に座り、穏やかな声で話しかけた。「伊織さん、何か進路について考えているのかな?」
伊織はゆっくりと頷き、「ええ。これからどうするべきか、まだ悩んでいるの。誰かのために戦いを続けることは好きだけど、それだけが私の未来じゃないと思うの。」と静かに答えた。
蘇芳は彼女の言葉に耳を傾けながら、「君には強さがある。その強さをどう活かすかは君次第だけど、どんな道を選んでも君ならやり遂げられる。」と短く返した。
その時、楡井秋彦が広間に入ってきて、二人の様子を見て立ち止まる。「伊織さん、進路っすか?オレなんてまだ全然考えてないっすけど、伊織さんならどんな道でもうまくいきそうっすね。」と少し照れながら話しかけた。
伊織は楡井に軽く微笑みを向け、「楡井くんは焦らなくてもいいわ。君のペースで自分にとっての答えを見つければいい。」と優しく言った。
「でも、私はどう進むべきか自分でも分からないの。戦いを続けることを通じて、誰かの助けになりたいと思う。でも、それがどう形になるのかが見えてこないの。」伊織はそう語りながら、窓の外を静かに見つめた。
その言葉に蘇芳がふと微笑み、「君がそう感じているなら、それを形にする方法はきっと見つかる。誰かの助けになることは、君らしい未来を作る鍵になるかもしれないね。」と答えた。
楡井も真剣な顔で「伊織さん、オレも伊織さんみたいな人になれるよう頑張るっす!一緒にそれぞれの道を見つけていきましょう!」と応じた。
伊織は二人の言葉に少しだけ笑みを浮かべ、「ありがとう。少し勇気が出たわ。」と短く感謝を述べた。
楡井秋彦はふと何かを思いついたように声を上げた。「そうだ!桜さん、オレ達みたいに男子校だけど防風鈴高校に来れば良いんすよ!そしたら一緒に格闘技部入って、もっと強くなれるっすよ!」
その提案を聞いた伊織は、一瞬驚いたように彼を見つめ、そして少しだけ微笑んで静かに返した。「ごめんなさい。それは私の進路には入っていないわ。」彼女の声には冷静さと優しさが宿っていた。
楡井は少し困惑しながら、「そっか…でも、桜さんならどんな学校でもうまくいくっすよね。オレももっと頑張るっす!」と、すぐに表情を切り替えた。
そのやり取りを見守っていた蘇芳隼人は穏やかな笑みを浮かべながら、「にれ君、その提案は面白いけれど、伊織さんには彼女なりの道がある。そしてそれを尊重することが大切だね。」と声をかけた。
伊織は静かに窓の外に視線を向けながら、「私には私のやるべきことがあるわ。だから、自分の道を見つけて進むことが重要だと思うの。」と語る。
楡井はその言葉をじっと聞きながら、「分かったっす。桜さんの進路、応援するっす!」と力強く言った。
伊織の進路への決意が明確に描かれる瞬間となり、仲間たちとの絆がさらに深まったように感じられた。
つづく