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「アリエッタが震えているのよ……」

「安心したら、怒りと一緒に怖い事も思い出したのかな?」

(ゲーミングアリエッタて……やばい、自分で考えておいて、なんかじわじわきた……変な子に思われちゃう)


真剣に心配するミューゼとパフィ、そして真剣に笑いを堪えるアリエッタ。

緊迫している時は、思っている事が行動に現れやすく状況を見て判断出来るが、落ち着いた状態でヒント無しに判断すれば、会話の出来ない意思疎通などこんなものである。

アリエッタは1人で笑いを堪えている為、顔を見られるのが恥ずかしく、パフィの胸に埋もれて肩を小さく震わせている。

そんな虹色のアリエッタの様子を見ていたピアーニャが、ガルディオ王に向かって提案をした。


「まぁもともとたのむヨテイだったコトだが、アリエッタのホゴカンサツのてだすけをたのめるか?たまにようすを、みにいくていどでイイ。あとなにかケンリョクかんけいでこまったら、たすけてあげてくれ」

「……分かりました。これからはテリアをニーニルに向かわせましょう」

「やった! よろしくね、ミューゼ!」

(ふぅ、やっと笑いが落ち着いた。変な事考えるもんじゃないな)


罪悪感もあってか、アリエッタの事をネフテリアに一任する事にした。もちろんアリエッタは怒ってもいなければ、自分の為に王族が引っ掻き回されているなど、知る由も無い。

こうして意思疎通不能な勘違いが原因で、ネフテリアが時々遊びに来る事が決まった。元々自由奔放に動き回る王女なので、定期的な目的が出来る以外の違いは特に無かったりするが。


「でもいいんですか?」

「構いませんよ。今回のお詫びもありますし、なによりパフィちゃんとの接点ができるのは喜ばしい事です」

「そ、そうなのよ?」


フレアの場合は妙にねっとりとした私欲が入っているが、王城に気軽に入れないミューゼにとっても、せっかく仲良くなったネフテリアと会えるのは喜ばしい。

何より、王族の後ろ盾は強力である。


「さて、そうときまれば、もうかえるか」

「はーい、こんな状態のアリエッタを、いつまでもお城にいさせる訳にはいかないですからね」


情報が少なすぎる中で、アリエッタの『虹色の髪』は怒りの合図だという結論に落ち着いてしまった一同は、慎重にアリエッタを宥めながら部屋を出る。

別室に一旦通され、着せられていたドレスから普段着に着替えるが、アリエッタの着替えは決してメイドに手伝わせないようにと、フレアが真剣に指示していた。


(ドレスと違って、この服も恥ずかしいなぁ。でも着替えてるって事は、帰るって事なのかな? なんだか今日は不思議な日だった。『魔法』を使えたのは嬉しかったけど)


ピアーニャとお揃いの魔法少女のような服に着替え、満足したような、何もしていないような、そんな微妙な心境のアリエッタ。

全員の着替えが終わると、ネフテリアがメイドから1つの小さな杖を受け取り、ミューゼに渡す。


「これ、アリエッタちゃんが使った杖です。楽しそうだったので、時々リージョンシーカーで使わせてあげてください」

「ありがとうございます! よかったねーアリエッタ」

(おお~! 杖だ! もしかして貰っていいの!?)

「杖で何かしたのよ?」


ミューゼとネフテリアが歩きながら説明すると、パフィとフレアが驚きをあらわにした。

フレアは混乱していたが、パフィはいつものよくわからない能力だからと、あっさり受け入れていた。


「それじゃ、帰るのよ」

「城前に魔動機を用意してありますから、リージョンシーカーまで送りますね」

「テリア、しっかり家まで送ってあげるのよ。今日中に帰れない場合はシスに言付けを」

「なんだか長い1日だったねー」


ミューゼ達の初めての登城は、とても濃厚なものとなった。残念ながら印象は最悪ではあるが。


(おおー、朝に乗った乗り物だーカッコいい)


前世の様なやや機械的なフォルムの魔動機は、地味にアリエッタのお気に入り。ワクワクしながらパフィに乗せられ、目を輝かせながら機内を見渡している。


「あら、もしかして魔動機も好きなのかな? わたくしが良いのを選んであげましょうか」

「む、ならばパフィにもっとシゴトを」

「無理なのよ!? 高いし置き場無いのよ!」


王女と総長のセレブジョークがパフィに炸裂したところで、運転手が魔動機を発進させた。

機内に夢中なアリエッタは、途中まで移動している事に気づかない。結局『城』を認知する事は、最後まで無かったのだった。




城内の途中までアリエッタ達を見送ったガルディオとフレアは、執務室で仕事をこなしながら、ゆっくりと今日の出来事を話し合っている。


「それでパフィちゃんにこんなモコモコの服も着せてみたの」

「ぐぅ……私も見てみたかったぞ……『サンディちゃん』の娘だからな、さぞ可愛かったであろう」

「ええ、でも流石に着替えの場所にディオはね……」

「分かっている。次回があれば一番良いのを頼む」


話の内容のほとんどがパフィの事だった。パフィの母親の事で意気投合して結ばれたのだから、当然の内容とも言える。

かなり長い間パフィについて語り合った後、真面目な話を切り出した。


「アリエッタという娘、どう見る?」


日中は常にフレアとパフィが一緒に行動し、ネフテリアはミューゼと一緒に行動。人と一緒にいるネフテリアには見張りは必要無いと判断し、オスルェンシスには朝からアリエッタを観察してもらっていた。

オスルェンシスから報告書を受け取り、フレアがそれに一通り目を通したが、やはり分かる事は少ない。


「少し大人しすぎる気もするけど、概ね普通の子供ね……」

「ああ……驚く程『普通』なのだ。名前も言葉も分からない程、幼い頃から長い間森の中で1人にいたのだろう? 人として馴染むのが早すぎる」

「……そうね」


物心がつく前に捨てられたのであれば、普通なら命は無い。助かるには野生の獣として強く生き、別種の生き物ヒトに対しての警戒がどうしても強くなる。そして森の中にいたのであれば、その場所に適した生活習慣になるはずなのに、ミューゼ達から聞いた話では、初めて遭遇した時には人のようにミューゼをかばい、すぐに懐き、連れてきたその日からすでに人の生活に馴染んでいる。

王族や一般人、さらには別リージョンという人同士の生活の差でさえ、慣れるのにはそれなりの時間がかかる事を知っている身としては、不思議かつ不自然でならなかった。


「あの子には謎が多すぎる。グラウレスタにいた事、見た事の無い能力、知識が無いのに人社会に馴染みすぎる」

「それに…あの完璧な程の容姿。ディランが暴走するのも分かる気がします。色々心配ね」

「そこは大丈夫だろう。お前達がまとめて逃げる程の保護者っぷりだからな。下手に手を出すと、私も躊躇なく殺られるだろうな」


それはそれで問題だが、普通に暮らしていれば、アリエッタの身の安全は問題無いだろうと判断された。


「まぁ当分は、テリアとピアーニャ先生に期待しよう。もしかしたら生まれ故郷が見つかるかもしれぬからな」


結局アリエッタについては続報待ちである。影ながら支援するにも、情報が無さすぎる。まさか100日ちょっと前に転生したうまれたなどと、誰も推測出来るわけが無く、アリエッタの故郷が見つかる事を祈りながら、話は家族の事へと移っていく。


「テリアにとっては社会勉強になると思えば、運がよかったわね。抜け出した時には、追いかけた兵はよく疲弊していましたし」

「どうせ城でじっとしている娘ではないのだ。ならば現地で活動してもらうのも悪くない」


それっぽく言っているが、城内トラブルを減らす為の口実だったりする。どうしようかといつも困っていたが、今回の事件を機に、思い切ってネフテリアを外に出す事にしたのだ。


「それに、ニーニルならばあいつがいるしな。頼る事になるとは思わなかったが」

「ええ、安心ね」

「私達は、バカ息子の再教育をなんとかするとしよう」


この夜、ディランの過酷な未来が決定した。



厳しい再教育が決定してしまったディランはというと、


「むぅ……夜は冷えるな」

「だからって、部屋で焚火……」


見張りも兼任している側仕え4人と共に、自室で野宿をしていた。大きな穴が開いている為、星空と街並みがよく見える。


「こんな時に、僕を温めてくれる幼女がいれば……」

「そんな事言ってるから、こんな目に合うんですよ。そろそろ諦めてくれませんかね」

「くっ…あの愛らしい子らと、なぜ結ばれる事を許されないのか」

「もうやだこの王子様……」

「はぁ、キッチンが恋しい」


王城上部の寒空の中、5人はそれぞれの意味で、この罰を噛みしめていた。

からふるシーカーズ

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