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ふぅ、と息をつきため息を漏らす。今日はゆっくり湯船に浸かることにした。
普段のこの時間、僕は上司の長い説教とキツいパワハラに耐えている。この夕日が沈むゆったりとした時間で風呂に入ることが出来ている。その幸せを噛み締めて肩まで浸かる。
「……あっつ」
物理的に体を芯まで温める。
パワハラの種類によっては性的暴行だ。最近だとスーツの中にローションを入れられた。気持ち悪い。おかげでパリッとしたスーツがでろんでろんにヨレてしまった。スーツは支給品で替えは一回しか効かない。
「………」
あまりにも静かだ、都会の喧騒も鳥の囀りも聞こえない。
あ、この静けさが心地よいのかもしれない。今までずっと忙しなかった。あの大きなホワイトボードも今日は見なくてよい。パワハラも周りの冷たい目も痛いけれど、一人よりかはマシなのかもしれない。
「……出よ」
少し経って、風呂場から出るとコタツの上に蜜柑が置いてあった。父からの贈り物だ。
『最近、元気してるか?仕事が落ち着いたら連絡してくれ、あまり無理するなよ。』
という手紙と一緒に置かれてあった。蜜柑の皮を剥き、頬張ると口いっぱいに甘さが広がり幸せな気持ちになった。
「………!?んまっ!」
これで心身ともにこの人生の寒波を乗り切れそうだ。転職できる権利がある。僕にあの上司が合わなかっただけだ。
「おやすみ……」
また始まる明日へ、この腐った世界を生き続けなくちゃいけないのだから。