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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第1話 〚その後も続く日常〛(澪視点)
――終わった、はずだった。
教室の窓から見える冬の空は、
あの時と同じ色をしている。
でも、もう違う。
席に座って、机に手を置く。
心臓は、静かだ。
あの夜、
触れられなかった壁。
壊されなかった距離。
そして、私が自分で選んだ答え。
全部、ちゃんとここに残っている。
「澪」
名前を呼ばれて顔を上げると、海翔が立っていた。
前みたいに、急に距離を詰めてこない。
でも、離れすぎてもいない。
その立ち位置が、今の答えみたいだった。
「行こ」
「うん」
一緒に歩く廊下。
視線が交わっても、心臓は暴れない。
“守られる”だけの存在じゃない。
“信じてもらう”側に立てた。
教室では、えまが相変わらず騒がしくて、
しおりとみさとは呆れながら笑っている。
玲央はそれを見て肩をすくめた。
りあは――
少しだけ遅れて入ってきた。
でも、俯かない。
誰かの顔色も、もう伺っていない。
私と目が合って、
ほんの少し、自然に笑った。
それを見て、胸の奥があたたかくなる。
(ちゃんと、続いてる)
全部が元通りになったわけじゃない。
忘れたわけでもない。
恒一の名前は、もう教室では出ない。
でも、消えたとも言えない。
それでも――
今は、ここにある。
昼休み、机に伏せていると、
窓の外で風が吹いた。
心臓が、一瞬だけ小さく鳴る。
でも、未来は見えない。
(……選べる)
それだけが、分かった。
何かが起きるかもしれない。
また、裏側が顔を出すかもしれない。
それでも私は、戻らない。
あの結末の先へ。
誰も知らない日常の、その続きを生きる。
――「裏側3」は、
終わった物語の“その後”から、静かに始まった。