テラーノベル
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「帰りにさ、コトん家の近くのコンビニ寄って、酒とか買って行かね? 何かまだ飲み足りねぇし」
タクシーを呼ぶなりそう言って、窺うようにこちらを見てきたヒロの提案に、今から彼が〝恋人として〟我が家に来るんだと実感させられて、にわかに緊張して……。
それをほぐすのにお酒の力を借りるのは大賛成だって思った。
結果、やって来たタクシーの運転手さんには、うちのアパート近くのコンビニを指定してそこで降ろしてもらって。
いま店内で、各々が飲みたいお酒を選んでいる所です。
「ヒロって結構お酒の好みが老成した感じだよね」
ほぼ迷うことなくコンビニオリジナルブランドのパック入り焼酎――1800ml入り!――をかごにひとつだけポン、と入れたヒロを見て、私は思わず本音がポロリ。
そう言えば失恋したばかりの彼を労おうと『菌次郎』に行った時も、ヒロの2杯目は焼酎だった。
「しかも〝芋の達人〟って……」
何とも微妙なネーミングにクスクス笑ったら、「芋焼酎ってさ、結構まろやかな口当たりで美味いんだぞ? 知らねえのか?」って言いながら、私が抱えて来た缶酎ハイを奪うようにカゴに入れてくれる。
そうして、「コトこそ桃、グレープ、コーラって……ジュースみたいなんばっかじゃん。こんなんでお前、酔えるの?」ってケチをつけてくるの。
本当は私、ビールか日本酒でもいいかなって思ったんだけど、大好きなヒロとの初めての宅飲みだし……何となく女の子っぽさをアピールしてみたくなっただけ。
――それにっ。いつぞやみたいに酔い潰れるわけにはいかないのよ!
それぐらい汲みなさいよね?
思って、ちょっぴり唇をとんがらせたら、
「今更猫被らなくても俺、コトのこと結構知ってるつもりだからな?」
って声のトーンを変えて少し屈みがちに耳元へささやいてくるとか……ずるい。
「俺さ、一緒にいてコトがあんまし気負わずにいられるような、そんな存在になりてぇんだよ」
付け加えるように言ってから、私の頭をクシャリと撫でると、「ま、最初は緊張しちまうだろうけどな」って笑うの。
「柳……ヒロも今、実は緊張してたり……する?」
ふと思って問いかけたら、「さぁな」って応えてそっぽを向いたヒロの耳が、ほんのちょっぴり赤みを帯びていて嬉しくなる。
緊張してるのは私だけじゃないんだね。
***
「どうぞ」
コンビニで買ったものは水物ばかりだったから、すごく重くて。半分持つよ?って言ったんだけど、ヒロは「こんくらいどーってことねぇよ」って持たせてくれなかった。
コンビニからアパートまでは徒歩数分圏内だったけれど、少しでも早くヒロを労いたくて、私はアパートに着くなり小走りに階段を駆け上がって、ドアを開けてヒロを部屋に迎え入れた。
「――ごめんね。重かったでしょ」
眉根を寄せながら言ったら、ヒロが「んー? こんくらい平気だって言ったろ?」って言いながらも、荷物をリビングのテーブルに置くなり「けどご褒美もらえたら嬉しいかも?」って自分の頬をちょんちょんってするの。
私はヒロからのその催促に、ちょっと照れながらも彼のほっぺにチュッてキスをしてから、逃げるようにキッチンに戻った。
「ちょ、ちょっと待っててね。す、すぐにおつまみ作るから」
#極道
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鷹槻れん

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照れ隠しにしどろもどろに早口でまくしたてながら、「テレビでも観てて?」って付け加える。
***
実はコンビニで、ヒロは「つまみになるものも何か買って帰ろう」って言ってくれたんだけれど、私が彼に何か作って食べてもらいたかったから。
何となく彼女っぽいことをしたくて、コンビニのお惣菜コーナーの前で「お願い、作らせて?」って言ったら、ヒロが物凄く驚いた顔をしてびっくりさせられたのを思い出す。
「ヒロ?」
カゴを手に、私をソワソワとした視線で見つめてくる彼の態度を不思議に思って小首を傾げたら、「マジで……作って……くれんの?」って何故かしどろもどろになるの。
そう言えばヒロ、花々里ちゃんには自分が差し入れすることはあっても、彼女から何かをもらったことはなかったって言ってた。
自分には何も食べさせてくれたことのなかった彼女が、選んだ男性には食べ物をあげていたと知って、ショックを受けたとも。
それを思い出した私は、ますますヒロに何かを作ってあげたいって思ったの。
幸い私は料理することが、実験に似ていて結構好きで。
アレとこれを組み合わせてこうしたら、きっとこんな味になるだろうなって想像しながら創作料理を作ったりするのも割と楽しいって思えるタイプ。
私、基本的には毎日自炊しているから、ひとり暮らしの割には、冷蔵庫の中にあれこれと食材が入っている方だと思う。
買い置きしてある食材をふと頭の中に思い浮かべて、とりあえず一品目はこれにしようと思えるものがすぐ構想できて、にっこり笑って「もちろん!」ってヒロに応えてあげることができた。
キッチンに向かうとすぐ、私は先に思い浮かべた通り、冷蔵庫の中から明太子を出して、オーブントースターに入れた。
焼き上がりまでの数分間を利用して、冷蔵庫からベランダ栽培で先日収穫したばかりのラディッシュを入れておいたタッパーを取り出すと、2ミリぐらいの幅にスライスしていく。
冷蔵庫内の別のタッパーから昨日料理で使いきれなくてのけておいた大葉の残りを出してお皿に敷いて、その上にさっきスライスしたラディッシュを並べた。
それが済んだと同時にチン!とオーブントースターが鳴って、「いいタイミング」とひとり心の中でガッツポーズをしてみたり。
実験もそうだけど、自分の思った通りの時間配分でうまい具合にことが運ぶと何だか嬉しくなってしまう。
程よく焦げ目のついた焼きたらこを、火傷に気をつけながらオーブントースターから取り出すと、2センチ幅くらいにカットしてから大葉とラディッシュの上に載っけて超絶簡単なおつまみを4セット完成させた。
でも、これだけは何だか寂しい。
そう考えた私は、そういえばお味噌汁に入れようと油揚げを買っておいたよね、と思い出す。
まだ封を切っていなかった油揚げ丸一枚を、一口大に切ってとろけるチーズをのっけてから、アルミホイルを敷いたオーブントースターへ。
今、焼きたらこを作るのに使ったばかりだから、庫内はいつもよりかなり温度がお高め。
それを加味して気持ち少なめにタイマーを回すと、お弁当用に買い置きしていた味付け海苔をキッチンバサミで細く刻みながら、時折中身が焦げすぎていないかと、トースターに視線を走らせた。
チーズがとろけて美味しそうな焦げ目がついてきたところで、トースターのタイマーつまみをオフにして中身を取り出すと、刻み海苔をパラパラッとまぶして何ちゃってピザもどきを完成させる。
いいにおいにほっこりして、「そうだ! ついでに」って冷蔵庫からちくわを2本取り出して、各々を4分の1に切り分けてからトースターでちょっとだけあぶって。
粗熱が取れたところできゅうりを細く切ったものを穴に差し込んでもう一品。
このくらいあれば大丈夫かな?
そう思ったところで――。
コメント
2件
両想いのふたり、いいっ(*´□︎`*)スキ♡︎
うわぁ〜〜〜!!😭💕 この回、甘すぎて心臓もたないんだけど!?!? ヒロが「コトのこと結構知ってる」って耳元でささやくシーン、反則すぎでしょ…!!✨ しかも自分の耳が赤くなってるとことか、ツンデレすぎるよもうっ!🫣💗 コトが必死に「彼女っぽいこと」しようとしてる健気さと、ヒロが「作ってくれるの…?」って戸惑う感じ、花々里ちゃんの話を知ってるからこそ胸にくるものがあるなあ…😢 おつまみ作るコトの手際の良さも、ちゃんとヒロのためにって気持ちが詰まってて尊い🥺💕 次どうなるか気になりすぎるよ〜!!次話も楽しみにしてるね🌸