🖤蓮side
二人揃ってオフの日に、一緒に駄菓子屋さんに行った。
懐かしいお菓子を見て、しょっぴーとはしゃぐ。
🖤これ、知ってる?
💙知ってる。懐かしい!
🖤俺、このガムも好き
💙あー、これ。俺が美味すぎて飲み込んでたやつだ
🖤えっ、マジ???
両手いっぱいにお菓子を買う。
とても二人じゃ食べきれないからメンバーにもあげようと話す。
💙そうだ、このきなこ棒は涼太にやろう。確かあいつ好きだったから
ちくん。
胸が痛む。
あまり気にしないようにしていたし、そんなに回数出てくるわけじゃないけど、昔話に時々出てくる舘さんの名前。
俺はどんな顔をしたらいいかわからない。
中身のない笑顔でその場を誤魔化している。
他の男の話をすんなよ、と思うけど、しょっぴーは俺のものではないから口には出せない。
俺が男にしか興味がないと気づいたのは小学生の頃。
初恋は担任の先生だった。
新任の優しい男の先生で、いつも俺を可愛がってくれた。
俺はその時今まで誰にも抱いたことのない感情を持て余して、でもそれはなんとなくいけないことだとは頭では分かっていて、誰にも相談することができなかった。
その次は地元のサッカークラブのコーチ。
最後は高校時代の同級生。
勇気を出して青春最後の恋の相手に、同性愛ってどう思う?と聞いたら「キモすぎんだろ」と笑われた。
本気で愛した人とは結ばれず、今の男ばかりの事務所に入ってから割り切った付き合い方を覚えた。
自分の欲求だけ満たしてしまえば、擬似的な恋愛を楽しむ余裕も生まれる。
日常からストレートの演技を続けてきたから、ラブストーリーの芝居の評価が高くても驚かない。
だって俺は子供の頃からずっと演技をしてきたんだから。
💙次どこ行く?
🖤観覧車乗らない?近くにあるみたいだし
💙は?デートみたいにならない?
しょっぴーが少し嫌そうにする。
俺は踏み込みすぎたかな、と反省した。
高校時代の苦い記憶が蘇る。
気持ち悪がられたら元も子もない。
でも、二人の思い出に乗りたい。
🖤ならないよ。ほら、あそこも女の子二人で乗ってるじゃん
💙女と男は違うだろ
🖤ふるっ。考え方古すぎ
💙んー。まあ、涼太や佐久間も男同士でディズニー行くし、普通か?
🖤ふつう、ふつう
俺はしょっぴーの背中を強引に押して、列に並んだ。
狭いゴンドラの中で見下ろす地上の世界は、まるで現実感がなくて、ゴンドラの中だけ外界から切り離されたような、世界に俺としょっぴーしかいなくなってしまったような、そんな錯覚を起こさせた。
初めは周りの目が気になっていたしょっぴーも、地上から離れて人目がなくなって来たら、窓の外の景色に心を奪われ、終始はしゃいでいた。
💙見て、あそこがテレビ局?
🖤うん、わかりやすいね
💙海も近くて景色も最高!!!
🖤そうだね
ちょうど日が傾きかけた頃で、街の灯りがぼちぼち灯り始めていた。
仕事帰りのサラリーマンやこの時間からデートに出掛けて来る若者たちや…。
建物の中に隠れていた人たちが次々と外に出て来て、街が少しずつ夜の賑やかな顔を見せてくる。
しょっぴーともう少し一緒にいたい…けど。
🖤しょっぴーこのあと…
💙あ。俺、これから約束あるんだ
🖤……そう
💙うん。ごめんな
しょっぴーは腕時計に目を落とすと、やっべ遅れる、と言って観覧車から降りるなり、楽しかったと手を振ってどこかへ行ってしまった。
俺はもう一度列の後ろに並んで、今度は一人でゴンドラに乗った。
さっきまで明るかった外の景色が、夜の帳が下りて暗くなった途端、急によそよそしく俺を突っぱねてるように感じた。
さっきまであんなに楽しかったのに。
夜は俺の味方になってはくれなかった。
コメント
5件
しょっぴーの気持ちがどうなのかしら?? 気になります💓