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いつも通りの時間。
狐塚景はバイト先のロッカーで身支度をしていた。
その時だった。彼、稲荷銀司と出会ったのは
「今日から働くことになりました、稲荷銀司です!よろしくお願いします!」
活発そうで愛嬌もあり、落ち着いた自分とは真逆そのもの
そんな彼に景は「よろしく」とだけ返す。
その日から2人はよくシフトが被ることが増えた。
「狐塚さん!あっちもうやっといたんで大丈夫ですよ」
「……ありがと」
銀司はよく働き、苦手な分野まで率先して手伝ってくれる、景のバイト仲間としてはかなりありがたい存在になっていた。
そんな銀司が周りと溶け込むのは簡単で、景の心もいつの間にか絆されてしまっていた。
ある日の休憩中
「銀司さん」
景は珍しく自分から銀司へ話しかけた。
「はい?」
スマホを置いて銀司はこちらを見る
「連絡先、交換したい」
「えっ」
その言葉に銀司は一瞬目を見開き驚いた表情を見せた
「嫌だったらいい」
「ぜ、全然嫌じゃないですって!」
「むしろ…狐塚さんとは早く連絡先交換したいなって思ってて!」
慌てながらもスマホを取り出す銀司を景は少し微笑みながら眺めていた
「…あれ、狐塚さんってオレと同い年?」
銀司は景のプロフィールを見ながら言う
「そうだよ。気付いてなかった?」
「全然…狐塚さんって凄い大人ぽくて年上かと…」
「ちゃんと同い年。だからタメでもいいよ」
「…あと景って呼んで」
「良いの!?」
目をキラキラさせながら「嬉しい〜」と呟く銀司に景は
(…犬みたいな子)
と既に情が湧いていた
それから2人はバイト以外でも会うことが増えた
意外なことに2人は通っている学校が近く、帰り道やスーパーなどで合流してから次のシフトについての話や学校での出来事を話しながら帰る。それが彼らの日課になっていたのだ。
「今日はちょっと失敗しちゃってさ〜」
少し悲しげにそう話す銀司を景は
「そういう事もある」
と微笑みながらフォローしたり
「オレ悪くねぇもんー!」
と怒りながら腕を組む銀司に
「それは君が悪い」
「う゛っ……」
真顔でストレートに指摘をすることもあった。
そんなふうに帰り道を共に歩いていた時だった。
ふと銀司の方へ振り向くと僅かにシャツの襟元がズレて痣のようなものが見えていた
(……痣?)
初めは影か何かでできた見間違えだとそう思っていた。
だが、明らかに赤黒い。何かに絞められたような痣が見えてしまった。思えば、バイト先に来た時からやたらと首や体のあちこちを見せないように服で隠していたと景は気付く。
(……無理に触れるべき話ではない気がする。)
そう思った景は何も言わずに無邪気な笑顔で嬉々として語る銀司の横顔をただ見つめていた。