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ピリピリとした空気。まるで尋問…いや、事情聴取を受けていたあの時を思い出す。いやいやいや、そんな生ぬるい緊張感では無い。「は、はは…一体何言ってんだ風樹は…」

ますます風樹の口調は厳しくなる。

「まだ言うか?お前には偽装の抜け穴がボコボコあるぞ。」

偽装?偽装って…これウィローさんの偽物ってこと…?

「…ちっ。」

ウィローさん?から舌打ちが聞こえた。

「今回は騙せると思ったのに…なンデなんダよ…」

ウィローさんだったものはドロドロと黒い液体のようなものになって溶けて行った。やがてそれは再び人の形になる。くしゃくしゃの白髪に、赤色の目を持ち袴のような服を着る。耳からは派手な飾りを下げ、腰には仮面を、手には酒を、いくつかのごてごてした刀は背中に。明らかに人間では無い容姿。完全体になった時、俺はそれを見て驚いた。


「…“浮条”…?」


――浮条は天界の同僚。翠のライバル的存在であり、良い戦友であった。数年前彼はある日消息を絶ち、大聖軍の中では堕ちたと噂されていた。これが本物なら彼は本人である。

ん?とこちらを向く。

「その服装…人間と同じ…?お前、翠だよな…?」

「ああ翠だ。正真正銘のな。」

そう言うと、彼はぷっと吹き出し大笑いした。

「なっははは!ま、待てお前が!お前が人間に味方するとは!ひぃ、こりゃあ夢でも見てる気分だ!っははは!!」

しばらく静かだった2課に笑い声が響く。

「笑うんじゃない。やかましい。」

俺が彼の笑いをとめた。

その時、平然とした声がした。

「浮条…お前変わってないな…」

そう言ってソファからディアさんは起き上がったようだ。

「お前…誰だ?」

浮条は声のする方を向いた。

「はっ、我が誰だと?お前は何様だ!この言葉で分からないとは言わせまい。」

「…!もしかして…ディア様…?」

彼の血色が急に悪くなる。

「よく分かったな。」

すると彼の先程までの傲慢な態度は急に失せ、縮こまった。

隙を見計らって風樹が短刀で浮条に襲いかかろうとした。問答無用にも程がある気が…

「甘い。」

すんと避けると、浮条は俺の近くまで来た。馴れ馴れしい態度が妙にイラつくところだ。そして小声でこう囁く。

「お前も堕ちてきたなんてな…くく、おかげで下界でどう過ごすか決まった。お前の周りの人間の魂を全て持って行ってやろう。いいな?」

最早拒否権はないような言いぶりだった。そして最後に、

「もう始まっているぞ。さあ、どうにかしてみろ。」

と言い残して浮条は再び液体となって消えた。

「ちっ。」

軽く風樹が舌打ちする。

「あいつ…ずっと前から人になりすましてるんだ…なんだかディアさんも翠も知り合いみたいだったけど…」

「あれは俺の戦友…だったやつです。あの、さっき言われたんですけど」

俺は彼に言われたことを伝えた。

「あいつのことだからいつか必ず絶対になにかします。これは脅しではないでしょう。…待って。」

――もう始まっているぞ。さあ、どうにかしてみろ――

風樹もなにかに気づいたようだ。


「「”もう始まっている”?」」



そう、彼が言ったその瞬間から始まっている。

急に、サイレンが鳴り響く。

「緊急、緊急。中央区広場前で天界災発生。身の安全を守る行動を取ってください。警戒レベルⅡ。繰り返します…」

「おい!外が…」

窓の外を見ていたディアさんが叫ぶ。

見てみると、そこには次々と天界人が湧いている。まるでサバイバル映画のゾンビのように…

そこにいるのは…

「ウィローさんと幽さん…?」

あんな数を2人でやってのかしている。


「手を貸しに行かないと!」


ディアさんがまっさきに飛び出して行った。

「僕たちも行かないと行けませんね、これのせいで飲むの先延ばしとか嫌なんで。とっとと片付けちゃいましょう。」

と言うと風樹も出ていった。

「あっ…お、俺も!!」


ーーーー


ザアザア。バルドと戦った時よりも雨が酷い。そして――目の前の天界人も。

「…」

呆然としてしまう俺をディアさんは引っぱたく。

「だからお前!ああもう!」

すぐさま杖を出してディアさんは飛び込んで行った。

俺も銃を取り出す。

風樹は…もう居なかった。いつの間にかもう戦っている。その手には…大きなハンマーが。鈍い音を立てながら彼はハンマーを振り回す。飛ばされた天界人はものすごい勢いで飛んでいくようだ…


「やっと来たか!全く…」

飛んできた天界人を2つの刀で綺麗に切っていく。ウィローのその戦い方は至ってシンプルだが、こうも簡単に素人が切れるはずがない。

「ああもうずぶ濡れ…最悪。」

幽は大鎌を使っている。天界人に攻撃する度、派手な黒い光が出てくる。その大胆かつ派手な戦い方は少し見てて怖い。まるで死神のようだ。


次々とみんながぶった斬る間に俺も何発か撃った。自分で言うのもなんだが、俺は射撃の正確さだけは誰にも負けない自信がある。


ーーーー

もうどれくらいたっただろう。まだまだ湧く天界人に新人の俺らは疲れてきた。

「まだまだ…こんなもんじゃないぞ…」

とは言うもの、ディアさんの頭の星飾りの輝きが少しずつ弱くなっている。大体わかることは、これがディアさんの体力ゲージみたいなものだということだ。

「疲れたんなら無理しないでいいから!僕たちはまだ大丈夫ー」

風樹は余裕そうに言う。すごい。

ちなみに全員ずぶ濡れを極めている。


狙いを定め、距離を読む。風向きと自分の動く方向、相手の動く方向を見る。

「今。」

撃った。命中するだろう…

そう思った時。


ザアッ…

雨の音が消えた。

その場にいた皆が手を止める。

「?」

クックックと聞きなれた声がする。

皆はいっせいにその声がするほうを向く。

「お前ら、人間のくせしてよく粘るもんだ。いや、我が見くびっていたのが悪かったか?んまあいい。ひとつここで言っておこう。耳の穴かっぽじって聞けよ?」

姿は見えないが多分浮条だ。ちっ、うっとうしいやつめ…

「お前…」

風樹がまた切れている。俺も同感せざるを得ない。

「我を止めて見ろ。」

はあ?と幽が言う。

「我は堕ちた天界人。さっきからの湧く天界人だって我が仕組んだ。次から我は人間の魂を奪う。いいな?」

人の魂を奪う、という事は、正確に言えば負の感情(=天界人から出る黒い光)の過剰摂取で発症する異形化のことを言っている。

「なんでそんな無意味なことをする!」

風樹が言う。

「くくっ、そりゃあ…」

「お前が人間側に回るからだよ、翠。」

「…!」

なんとも言えない苛立ちに腹が立った。心が少し揺れる。

「お前は大人しくこっち側に着いたらどうだ?今から異形化したらまた我たちは仲間ではないか。くく。」

「それだけはさせない。」

キッパリと言ったのはウィローだった。

「ほう?人間の分際でよくペラペラと…」

「まあいい。我は退かせてもらおう…」

あまりにもすんなりひこうとするので苛立って苛立って仕方ない。

去り際に。

「翠。人間は全員がお前を信じていると思うなよ?」

まるで人間をあざ笑うような言葉。

この言葉を残して彼と俺らの前に現れていた天界人たちは消えていった。

ーーーー

「あーー!!いらいらする!!」

風樹は先程の戦いで疲れたからか頭のネジがいくつか飛んでいるようだ。まあ無理もない。

あの後ずぶ濡れになった俺らはとりあえずということで色々して変えの制服に着替えた。

2課に戻る。みんなぐったりしている。

「もう我…疲れて死にそう…」

特に体の負荷が酷かったディアさんは目が死んでいる…


幽はもう寝そうだ…


「やっぱ今日、飲むのやめましょう…」

風樹が言うと少しウィローと幽は喜んだように見えた。疲れたからかな…


「そうだな」


そうして物騒な初日の午後は終わった…


つづく




浮条急に出してごめんなさい。私も急に出しました。

…頑張って書いたおもろいと思う話だけ伸びないの何…今回の話は伸びて欲しい。過去一疲れた。(切実)あと創作してる人と繋がりたい。

下界は地獄です。

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