テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
狭く湿った地下道を、紗羅は膝を擦りながら進んでいた。天井は低く、頭を少しでも上げれば岩にぶつかる。
足元は泥水が溜まり、冷たさが骨まで染みた。
健、ちゃんと来るよね……?
後ろを振り返っても、そこには真っ暗な闇しかない。
遠くで、金属がぶつかるような音と怒鳴り声が響いている。
健がまだ看守たちと戦っているのだろう。
「早く……」
心臓が早鐘を打つ。
でも前に進まなければ、ここまでの健の行動が無駄になる。
やがて、微かに光が見えた。
出口だ。
紗羅は這いながらその光に向かい、外の冷たい空気を吸い込んだ。
その瞬間、背後から水を蹴る音が近づいてくる。
「……健?」
返事はない。
代わりに、暗闇の奥から低い唸り声が響く。
狼の、それも化けオオカミのような重く低い声。
紗羅は息を呑み、その場に立ち尽くした。
次の瞬間、黒い影が勢いよく飛び出してくる……。