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飛び出してきた黒い影は、紗羅のすぐ前で止まった。泥水を弾き、肩で息をするその姿……健だった。


ただし、完全に人間の姿ではない。

腕や背中には黒い毛がまだ残り、瞳は黄金色に光っていた。

呪いが完全には解けきっていない証だ。


『……間に合った』

低く、かすれた声。

紗羅は震える手で健の頬に触れる。

「健……怪我は?それより、なんでオオカミに?呪いはとけたんじゃ……。」

『大丈夫や。いつの間にかオオカミになってたんや。多分、紗羅を守りたい気持ちとアイツらからどうやって逃げようか迷ってできた呪いや、でも安心し、俺は誰も襲ってへん。……それより早よ行こ』

健は紗羅の腕を掴み、出口へ向かって走り出す。

しかし、背後から松明の光が迫ってきていた。

複数の足音と怒鳴り声……

村人たちだ。

【捕まえろ!化けオオカミと女だ!】


健は歯を食いしばり、紗羅を庇いながら走る。

外に出れば、そこは月明かりの差す森の縁。

冷たい夜風が二人を包み込む。

『……ここから離れたら、もう戻られへんかもしれん』

健の言葉に、紗羅は迷わず頷いた。

「いいよ。健と一緒なら、どこでも」

二人は闇の中へと駆け出した……

けれど、その先で待っていたのは、思いがけない障害だった。

月夜に吠える、君の名を 《続》

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