コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
期末テストまでのこり1週間となった。私はあれからずっと勉強に集中し、気づけば深瀬さんと話す機会も減ってきてしまった。
もちろん話したいと思ったことは何度かあるけど、テストまでは浮かれないと決めたからには話すのはだめだと思った。
深瀬さんも、勉強に集中しているみたいだったので特に気にすることは無かった。
お互い、できることを尽くすため。
「いや真面目かっ!」
そのことを昔からの親友である柚香(ゆずか)に話すと、信じられないと言うような顔をされてしまった。
「え?」
「いやいやいや、真面目すぎる…。私なんてまだ勉強してないよ?」
「それは遅すぎると思うけど…。それに、深瀬さんもあんまり気にしてないみたいだし。」
柚香はのこり少なくなったコーヒーを飲み干すと、言葉を続けた。
「あのねぇ、あんたの前ではそう装ってるかもしれないけど、実は結構寂しがってるんじゃないの?」
「え?」
「はあ…せめて週1で電話しなさいよ。全く話さないなんてありえない!…あー、もうはっきり言わせてもらうね。」
柚香は姿勢を正し、私を真っ直ぐ見つめる。
「あんた、このままじゃ愛想尽かされるわよ!」
その瞬間、私に衝撃が走った。
愛想尽かされる…、確かに、私はもう深瀬さんと結ばれた時点で浮かれていたのかもしれない。もしかしたらフられるかもとか微塵も思ったこと無かった!だって、付き合ったばかりだし…それに…
「おーい、大丈夫っすかー?市ノ瀬美都里(みどり)さーん?」
「…私、明日たくさん深瀬さんとお話する…。もう、びっくりするぐらい…。」
「お、おお…。💧」
次の日の平日、私は朝から深瀬さんの教室まで足を運んだ。
今日一緒に昼を食べようと誘うため。
「あ、あの〜…」
と言っても、やはり他学年のクラスに行くのは勇気がいる。
恐る恐る教室を覗くと、そこにはひと際目立つ綺麗な女性が長いまつげを下ろしながら本を読んでいた。
他にも人はいた。かわいい女性もちょっと顔が良い男性もいた。だけどなぜか、無意識に私の目線は深瀬さんに吸い寄せられている。
あぁ、ほんとに綺麗な人なんだなぁ。
「あれ、1年がなんでいんの?」
深瀬さんに見惚れてしまって、後ろにいた男子生徒に気づくのが遅れてしまった。
「あ、すみません…!あの、深瀬さんを…。」
「あのなぁ、深瀬さんはお忙しいんだ。お前なんかが話しかけていい人じゃないの!ラブレター、ファンレターなら俺が預かってー…」
どう説明しようか迷っていると、ドアから黒い髪を靡かせながら、深瀬さんが飛び出てきた。
「い、市ノ瀬ちゃん…!」
切れ長の目を見開いて、嬉しそうに飛びついてきたのだ。
男子生徒は驚いたように「え!?」と尻もちをついた。それに気づいた2年生がぞろぞろと様子を見に来る。
「なんだなんだ?」
「わっ!深瀬さんだ!」
「美しすぎる…」
様々な言葉が廊下に飛び交う。
「あ…えと、その…」
なんとかしなければ。やはり教室まで行くのは間違っていたか。
私の頭は一瞬でカオス状態になったが、深瀬さんは私の手を握り、人混みから抜け出してくれたおかげで一瞬でその状態は終わった。
そのまま走って、深瀬さんと私は屋上にたどり着いた。
「す、すみません!!あの…迷惑かけてしまって!!でも決して邪魔したかったわけじゃなくて!!」
必死に頭を下げて謝るが、深瀬さんは私に背を向けたままだった。
終わった…。急に教室に押しかけた挙げ句、逃げ出させてしまうなんて…。しばらく話してなかったから尚更気まずい…。
すると、深瀬さんは振り返って思いっきり私を抱きしめた。
「ふ、深瀬さん!?!?」
「…会いたかった。ずっとそう思ってた。今さき本を読んでいたときも、ずっと。」
深瀬さんはまた顔をうずめる。
「でも、勉強の邪魔しちゃだめだからってずっと我慢してたの。市ノ瀬ちゃんは頑張ってるんだから、私が邪魔してどうするの。って。でも私は性格が悪いから、だから、あのときノートなんて渡すんじゃなかったなんて思ってしまって…。無理矢理でも会いに行こうかなって…。ほんとにごめんなさい。謝るのは私のほうよ。」
私はしばらく固まってしまった。嬉しいというより、これは…
「深瀬さん、」
そう呼ぶと、深瀬さんは可愛い顔を上げた。
「私も同じです。すごく会いたかった。」
とても愛おしいっ!!!!!!!
すると深瀬さんは顔を真っ赤にして、また私の胸に顔を埋めた。
良かった。かわいい深瀬さんで。
心からそう思った。