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「身体全体が薄らと桜色です、春凪。白い肌が薄紅に染まる様、すっごく綺麗ですけど……キミはこの姿を、元彼にも見せたんですか?」
胸の頂に。肌に吐息がかかるほど近く顔を寄せられて紡がれる言葉に、私は小さく息を飲んだ。
「あんっ、……それ、ダメっ、宗親さ……っ」
言いたいことは山ほどあるのに……口から出るのはそんなセリフばかりで。
今にもピンと固く張り詰めたそこを、宗親さんに食べられてしまうんじゃないかという期待が、さらに先端を固く尖らせる。
宗親さんからの質問にだってまともに応えられないままに全身に鳥肌を立てて身悶える私に、宗親さんが〝男〟の顔をして私を見下ろしてくるの。
スッと細く眇められた宗親さんからの視線が、ゾクゾクするぐらい冷たくて……なのにその目で見つめられただけで、身体の芯が燃えるみたいに熱くなっていく。
「……宗親っ、さんが……初めてですっ」
コウちゃんは、――元彼はこんな風に私を昂らせた事なんて、ただの1度だってなかったのだから。
宗親さんからの視線に耐えきれなくなって、思わずそう口走った私に、彼が「それは良かった」とにっこり微笑んだ。
その笑顔に思わずキュンとして。
それと同時、下腹部がトロリと生温かく濡れたのが分かって、信じられない気持ちでいっぱいになる。
だって私、行為のたびにずっとずっと……濡れにくいってコウちゃんから責められていて……実際元カレには何をされても全然潤ったことなかったんだもの。
敏感な秘芽に触れられるのも、その下の入り口に触られるのも、ただただ痛いだけだった。
さっき、宗親さんに触れられて、初めて快感を感じて……そこがしとどに濡れたことにも驚いたけれど、今は何にもされていないのにこれ。
いつも、ローションをたっぷり垂らされてからでないと、男の人を受け入れることがままならなかった私なのに、一体どうしちゃったんだろう。
今日はたまたま?濡れたけれど、いつもはローションが必須なんです、って正直にお話したら、宗親さんはどんな反応をなさるのかな?
面倒くさくなって、夫婦ごっこはやっぱりやめましょうっておっしゃるかしら。
きっと、宗親さんはローションなんて、用意したりなさらないはずだもの。
そこまでして私みたいな不出来な女の子を抱かなくても、きっと彼ならもっといい女性が見つけられるはず。
頭ではそう思うのに、何故か割り切れない気持ちがして、胸の奥がチリチリと痛んだ。
おかしいな。さっきまでは宗親さんが他の女の人に手を出してもいいって思ってて……。
こんな風に嫌だとか感じたりしなかったはずなのに。
――私、どうしちゃったんだろう。
今まで感じたことのない快感を、初めて宗親さんによって植え付けられたから?
私をこんな風に淫らな女の子に変えておいて。
その宗親さんが、私以外の人とどうこうなるのは……イヤだって思ってしまってる?
ああ。私、この感情、知ってる。
――これは……独占欲と嫉妬心だ。
そうハッキリと自覚した私は、涙に潤んだ目で宗親さんを見上げた。
***
「春凪、さっきから何かよそ事を考えているようですけど……やけに余裕がありますね」
――余裕なんて、あるわけないです。
言われて、そう反論しようと口を開きかけた私に、宗親さんが小声で付け加えて来るの。
「僕は結構一杯一杯だって言ったら……どうしますか?」
って。
私はその言葉を聞いたと同時に、宗親さんにギュッとしがみついていた。
「だったら……証明してください」
――私を本気で欲しているってこと。
宗親さんの耳元、懇願するみたいにそうささやいたら、宗親さんに噛み付くように唇を塞がれた。
***
宗親さんとはあんなに淫らな行為をしたくせに、結局最後の一線は越えられなかった――。
正直に言います。
私自身はそうなってもいいって思っていたのに、宗親さんが寸前のところでそこを越えてくださらなかったのです。
「春凪。本当の契りを交わすのは、名実ともにキミが僕の妻になってからにしましょう」
そう淡く微笑んだ宗親さんは、はちきれんばかりに硬くなったご自身を、私の中に埋めることなく、代わりに私の手に握らせた。
そのまま私の手ごと、ご自身の手でそこをギュッと握って、何度も何度も上下に往復させて。
手の中の宗親さんがその動きに呼応したように更に一層硬度を増したと感じたのと同時、ビクビクとした震えとともに、私はお腹に熱いものを吐精された。
男の人に精液を浴びせられたことのなかった私は、もうそれだけでビックリして。
「ひゃっ」
思わず小さく声を上げたら、呼吸を少し乱れさせたままの宗親さんに、気怠げに見下ろされた。
その色気を含んだ、でもどこかとても優しく見える眼差しにドキッとする。
この人は……こんなに穏やかな目で私を見る人だった……?
「ごめんね、熱かった?」
言われて、混乱した頭のままコクコクとうなずいたら、「素直な子は大好きです」って頬に口付けを落とされる。
「宗親……さん、わた、し……すごく嬉……」
お腹から胸、鎖骨のあたりまでを濡らす宗親さんの体液をぼんやりと見下ろして……。
まるで、宗親さんに「春凪は自分のものだ」ってマーキングされたみたいに思えたことを、心の底から「嬉しい」と心動かされてしまった。
思わず思ったままにそう告げそうになって、慌てて口をつぐむ。
ダメだ。偽装の夫婦になろうかという相手に対して、こんな気持ち――。
バレたら絶対面倒に思われてしまう。
そう思った私は、
「う、う、う……海! 海に行きたいですっ!」
誤魔化すみたいに「う」で始まる言葉を適当に言って、宗親さんをキョトンとさせてしまう。
そりゃそうだよね。
私も、「支離滅裂すぎるでしょ!」って思いながら言ったもん。
「春凪は本当、何を考えているか予測不能ですね。こう言うと変に思われるかもしれませんが、僕は案外キミのそう言うところが楽しくて嫌いじゃないみたいです」
クスッと笑われて、私は胸の奥にチクリとした痛みを感じながらも、「私のこと、変な子みたいに言わないでください」って眉根を寄せた。
「嫌いじゃない」はきっと、「好きでもない」と同義なんですよね、宗親さん。
そんな風に思いながら。
***
「ちょっと待ってくださいね」
宗親さんがベッドサイドからティッシュを取って、私の身体を濡らす彼自身の吐き出したものを軽く拭ってくださって。
「シャワー、先にどうぞ?」
先刻脱がされてしまったシャツを、私の身体に掛けてくださいながら、そう提案してくださった。
「あ、あの……」
恐る恐る宗親さんを見上げたら、
「新しいシャツ、出しておきますのでそれは洗濯機に」
って言われて、言いたかった言葉を吐息とともにゴクッと飲み込む羽目になる。
――ねぇ、宗親さん。私の身体は……貴方のお眼鏡にかないましたか? また抱いてもいいって……そう思って下さいましたか?