静寂を引き裂く警告音が、タクトのスマートフォンから響き渡った。画面には大きく赤い文字で、こう表示されていた。
タイムリミット:あと10時間
悪魔の根源を討伐せよ!失敗すれば人間界は破滅の危機に陥る。
目標:ヘルズロアおよび根源の悪魔を全滅させること。
「くそ……時間がない!」タクトは歯を食いしばり、周囲を見渡した。
マデスは苦笑いしながら肩をすくめた。「せやけど、焦ったところでどないもならんやろ。ここは冷静にならんと、命取りになるで。」
「冷静にって、どうやってだよ!」タクトは叫んだ。「10時間なんてあっという間だろ!」
ミカエルも腕を組んで険しい表情をしていた。「ヘルズロアを倒すだけじゃ終わらない。根源の悪魔ってのがどこにいるのか、まだ分かってないんだ。」
「ふむ……」マデスは顎に手を当て、目を細めた。「それやったら、ヘルズロアを尋問して情報を引き出すしかないな。」
「尋問?あのキモオタが簡単に口を割るとは思えないけどな。」タクトは眉をひそめた。
「そんなん、ねじ伏せたらええやん。」マデスの目には、いつもの軽薄さとは違う鋭さが宿っていた。「今は神風タクトの実力を信じるしかないんちゃうか?」
タクトは大きく息を吸い込み、スマートフォンを見つめた。「……分かった。まずはヘルズロアを追い詰める。」
再びヘルズロアが潜む路地裏に足を踏み入れた三人。そこには、先ほどの戦いで荒れ果てた痕跡が残っていた。瓦礫と血の匂いが漂う中、ヘルズロアが不気味な笑い声をあげながら待ち構えていた。
「おお、戻ってきたんだね!時間がないって焦ってる君たちを見るの、ほんと楽しいなぁ~!」ヘルズロアはギョロギョロした目で三人を見回した。
「お前を倒して根源の場所を吐かせる。それだけだ。」タクトは冷たい視線を送りながら、武器を構えた。
「倒すって言うけどさぁ、ボクはもっと強くなっちゃったんだよね~。見てよ、この新しい術式!」ヘルズロアは手を広げ、全身から黒い霧を放ち始めた。
その霧の中から現れたのは、無数の人間の形をした影。それらは苦しげに呻きながら、タクトたちに向かって襲いかかってきた。
「なんやこれ!?」マデスが驚く。
「これが『外凡解剖者』の本領さ!」ヘルズロアは高笑いを続ける。「愚か者たちの肉体と魔力を吸収した結果さ!さぁ、どうやってこのボクを倒すつもりかな?」
「あと9時間43分だ。」スマートフォンのタイマーが無情にカウントダウンを続ける。タクトは奥歯を噛みしめ、影を斬り伏せながら叫んだ。
「マデス!ミカエル!術式を止める方法を探せ!」
「わかった!」ミカエルは後退しながら応じ、マデスは霧の中心を睨んだ。「奴が術式を維持しとる限り、影は無限に湧いてくるで!」
タクトはヘルズロアを見据え、「お前をここで終わらせる!」と叫び、一直線に突進する。その眼差しには、時間に追われながらも揺るぎない決意が宿っていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!