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京都の旅館。
消灯時間をとっくに過ぎた頃。
部屋の中では、さっきまで騒いでいた男子たちが雑魚寝状態で寝息を立てていた。
「……ロゼ、起きとる?」
布団の中から小声がする。
「起きてる」
窓際に座っていたロゼが振り返る。
らいとは布団からちょこんと顔だけ出していた。
「寝れん」
「知ってた」
「なんで?」
「枕投げで一番騒いでたやつ、だいたい後から目冴えるから」
「偏見やん……」
くすくす笑いながら、らいとは布団を抜け出す。
浴衣の袖がずるっと落ちて、ロゼは一瞬目を逸らした。
「……寒くない?」
「ちょっと」
ロゼは自分の羽織をらいとの肩にかける。
「うわ、あったか……」
「風邪引くなよ」
「ロゼってほんま過保護よな」
「らいが危なっかしいから」
「俺そんな子供やないし?」
「朝も起こされないと集合時間に間に合わなかった人が?」
「それはロゼのモーニングコール前提で生きとるけん……」
「だめ人間すぎる」
二人で笑いを堪える。
周りを起こさないようにしてるせいで、余計に距離が近い。
しばらくして、らいとがぽつりと呟いた。
「……今日、楽しかったな」
「ん?」
「班行動。ロゼと一緒やったし」
「俺も楽しかったよ」
「ロゼ、どこ行っても人気者やん。店員さんにも話しかけられとったし」
「らい、拗ねてる?」
「拗ねとらん!」
即答。
でも耳が赤い。
ロゼは笑いながら、らいとの頬を軽くつついた。
「かわいい」
「やけんそれ言うなって……」
「だって本当にかわいいし」
「っ、」
らいとは逃げるように窓の方を見る。
京都の夜景が静かに光っていた。
「……ロゼってさ」
「うん?」
「誰にでも優しいやん」
「まあ、人は好きだし」
「……そういうとこ、ずるい」
「え」
「俺だけ特別みたいにしてくるのに、普通に他のやつにも優しかけん……勘違いするやろ」
その声は、思ったよりずっと小さかった。
ロゼは少しだけ目を見開く。
「勘違い?」
らいとはしまった、みたいな顔をした。
「……今のなし」
「なしにしない」
「ロゼ〜……」
困ったように眉を下げるらいとを見て、ロゼはたまらず笑った。
「らい」
「……なに」
「俺、らいには特別に優しいよ」
「…………。」
「気づいてなかった?」
らいとの顔が一瞬で赤くなる。
「っ、無理、近い……!」
ロゼはいつの間にかかなり近くにいた。
「だってらい、すぐ逃げるし」
「逃げるやろこんなん!!」
「じゃあ逃げないように捕まえとく?」
「ろ、ロゼ!?!?」
慌てるらいとの口を、ロゼがそっと手で塞ぐ。
「しー。みんな起きる」
「……っ」
「静かにできたら偉い」
「子供扱いすんなぁ……」
でも、らいとは振り払かなかった。
ロゼは優しく笑って、
赤くなった額にそっと自分の額をくっつける。
「修学旅行終わっても、こうやって一緒にいたいな」
らいとは目をぱちぱちさせて、それから小さく笑った。
「……それ、俺も思っとった」
するとロゼが柔らかく目を細める。
「じゃあ帰ってからも、毎朝起こしてあげる」
「それはもう彼氏やん」
「違うの?」
「…………。」
「らい?」
「……今の聞こえんかったことにして」
「真っ赤」
「うるさぁい……」