テラーノベル
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3話です
次回で終了!
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いろいろ注意⚠️
ここはどこだろうか。住んでいた都市も蘇枋がだいぶ稼いでくれるのもあって立地はいい場所で、周りには高層マンションがあり、都会といえば都会だが、ここはすごい。大きな開けた道に高いビルが所狭しと並び、下町も綺麗で店がずらりと並んでいた。何か違う世界に来たみたいだ。ここはどこなのか、碌に確認してなかったなと苦笑して今では扱いも慣れたスマホのマップ画面を開き現在位置を確認する。家から何キロも離れた都市。まさにどこだここはという感じだ。
でも、今はキラキラした都市は少し気持ちが悪くて。こんな惨めで醜い自分を嘲笑するようで、見たくなかった。輝く下町を背に、少しでも落ち着いた場所を探すために歩を進める。
少し歩くと小さな公園を見つけた。少し大きい、でも平均的であろう滑り台にそこまでの高さはないジャングルジム、小さめの砂場が並んだ田舎のような公園。この時代の子はあんな大きくてすごいものがあるのなら公園なんかに行かずに他のもので遊ぶのか、人っ子一人いない無人の公園。窮屈そうに並ぶ住宅にひっそりと佇む閑静な公園。
引き寄せられるように公園に入って春の暖かな木漏れ日が射すベンチに腰掛ける。それがどうにも心地よくて瞼を閉じる。
────そういや昔、そんなこともあったなぁ
まだ高校の風鈴生で俺たちが付き合って、少し経った頃。──高校2年生ほどだろうか──に昼休みの時間、級友たちと話しながらさぼてんのカレーパンに齧り付いていた時、急に蘇枋に話を持ちかけられた。
“ねぇ、桜くん。今から俺とデートしない?”
“で、ででででデートぉ?!”
急な提案に頬が紅潮し、体はびくりと反応する。そんな桜の反応を楽しむように、でも壊れものの儚い人形を慈しむように、大切で愛おしいという蘇枋の視線を目一杯浴びてしまってさらに顔が赤く染まる。
それを誤魔化すかのように声を発する。
“ど、どこにいくんだよ…”
“ん〜、桜くんの行きたいところに行きたいかな?”
“?なんでだよ”
蘇枋の提案に小首を傾げる。今までしてきたデートは蘇枋が桜の喜びそうなもの、自分も嬉しいものを調べて半ば引っ張って行くようにデートをする。
蘇枋が考えてくれるプランは毎回面白くて楽しくて、蘇枋に引っ張られていくことも満更じゃないのだが。
だから余計わからなくて頭にはてなマークを浮かばすと蘇枋にクスッと笑われた。
“今回はね。君の好きなものを知りたいんだ。
君の好きな食べ物。場所。趣味とか特技。最近悩んでいることとか楽しいこととか、いつも俺ばっかりがリードしてるんだから今日は君の好きなものをたくさん知りたいと思って。”
幸せそうな笑顔でそう述べるのだから断るのも忍びない。
だから小さく頷いて返事をする。その小さな答えが伝わったのか、胡散臭い、偽ったような笑顔ではなく、優しく包むような柔らかな笑顔でニコリと微笑み返されてうぐっと声が出る。
まだまだ彼の甘々な表情には慣れないらしい。
途中、楡井や桐生の生暖かい視線を感じたが、気づかないふりをした。
授業が終わっていよいよお待ちかねのデートが始まる。
とはいえデートなんかどこに行けばいいのだろうか?好きな場所……ばしょ……ば…しょ……?
それがなかなか思いつかなくて午後の授業でそれを反芻しながら悩んでいた。そんなことだから授業も聞いているわけなく、内容が処理しきれなくてスペース状態になった桜を教師が教科書でぱこんと叩き、授業終わりに蘇枋含むクラスメイトに揶揄われたのは記憶に新しい。
悩んだ末に一つの場所を思いついた。そんな場所でいいのだろうか、つまらなくはないだろうかと心配するがもうこんな時間だ。今からどうこうしようとしても時すでに遅し、後の祭りだ。
学校帰りの蘇枋を連れて道を歩く。
蘇枋とは他愛ない話はすれど、桜がどこに行こうとしているのか、どこに向かっているのかは何も言及してこない。今は蘇枋のその心遣いが優しくて心がほんわかした。でも桜がどこに行きたいのか、見るのを楽しんでいるかのようにも見えるがそれについては何も思わないでおく。
しばらく歩いた先に、小さな公園が見える。
見えた小さな公園に蘇枋がわぁと感嘆の声を漏らす。
ほんとにこんなところで良かったのだろうか。今更ちょっとした後悔が襲う。言ってしまえば、一番最初に’好きな場所’で思い浮かんだのはこの公園だった。
でも流石に公園はデートとしてだめじゃねぇか………?なんて思って優先順位は低くしたのだが、結局公園以上にしっくり来るものがなくて致し方なく決定した感じだ。
まあ、もうきてしまったものは仕方ない。少し怖くなりながらも蘇枋の言葉を待つ。すると嬉しいような、穏やかな彼の口調を乗せた甘い声が降ってくる。
“ここが桜くんの好きな場所なんだね。そっか〜………いいね。とっても綺麗で素敵な場所だ。”
“な…んで……?”
“だって綺麗じゃないか。誰もいない公園。なんか、独占?してるみたいでさ。それに、ここ、いつも桜くんが散歩で通ってるところでしょ?君はいつも、暇があったら散歩する散歩大好きちゃんだからね。それに、ここを散歩するたびにこの公園が好きだなとか、俺に見せたいなって思ってくれていると思うと可愛くて。”
“そーかよ…………”
ニコニコしながら言う蘇枋に思いっきり赤面してしまう。でも、自分の好きな場所がわかってくれて、理解してくれて嬉しかった。
無人の公園にひっそりと存在するする長めの背もたれ付きのベンチに二人で腰掛けようとする。すると蘇枋はベンチに座った桜を自身の方へと傾かせ、桜の頭を蘇枋の太ももの部分に置いた。
これは膝枕というものだろうか。さっきから愛おしむような視線を向けてくる分も量増しで恥ずかしくなって何度目かの赤面をする。
“てめっ!なにを!!”
反論しようとして上半身を起き上がらせようとすると蘇枋が桜の髪に触れ、ゆっくりと撫でた。その感触が妙に気持ちが良くて起き上げようとしていた腹筋の筋肉が緩む。それにさっきは気づかなかったが、膝枕をしていると、桜の大好きな紅茶のような、蘇枋の甘い匂いがふわりと香り、に身長はほぼ同じはずなのに体のサイズは少し大きい蘇枋に包まれるようで、安心して少し張り詰めていた息をほうと吐く。
頭を撫でる手が前後し、ゆっくりと動く。
優しい手が心地よくて眠気に襲われる。
でも今はデート中、寝るわけには行かないと目をかっ開いて眠らないように努めようとすると頭を撫でていた手が離れ、桜の目元を塞ぐ。
急にそんなことをされてびっくりしたが視界が遮られたことで見えるものが暗くなり、そうなればもちろん眠くなってしまうわけで。
それでも頑張って眠気と奮闘していると蘇枋が言った。
“桜くん、眠いんでしょ?今日珍しく授業ちゃんと受けてたし、疲れたでしょう?それにここは日差しも微風もとても気持ちいいからね。眠っていいんだよ?”
“ッ……でも……今、でーと……してるんだろ?”
“いいよ、そんなことは。それに行ったでしょ?今日は桜くんが好きなものを見て、好きなことをするデートにしたいって。だから、自由にしていいんだよ。”
眠気に耐えられなくなってきて蘇枋の声が途切れ途切れに聞こえる。うつらうつらとしている俺を横目に蘇枋は苦笑した。
“もう寝ちゃいそうじゃないか。俺のことは気にしなくていいから、ゆっくりおやすみ。”
“ぅん…………”
そこまで言われちゃなんで寝ないように努力していたのかわからなくなってそれに費やしていた力を抜くと驚くほどすんなり眠りに入れそうだ。
‘蘇枋に迷惑かけたくない’と言う気持ちが完全に解け、今まで枷になっていたものから解放されてダムが決壊したかのごとく眠れるだろう。
頭を撫でる桜より一回り大きい手が温かい。
“─────”
薄れゆく意識の中で蘇枋らしき声が聞こえた気がするが今度こそ抗いようのない眠りに誘われ、何を言ったか確認する術もなく意識は暗転した。
「ん…………………?」
意識が浮上すると一瞬ここがどこかわからなかった。だがぼんやりとしていた意識が戻り始め、自分の状況をゆっくりと悟っていく。
そうだ。俺は蘇枋から離れてどこか知らない場所に来たんだっけ。
どうやら心を落ち着かせるために寄り道程度に入った人のいない公園のベンチで眠ってしまったらしい。
何か長い夢見ていたような気がするが思い出せない。いや、思い出したくないのだろうか。
だが今はそんなことを考えても何も始まらないと首を左右に振って邪念を払い、茜色に染まった黄昏の空を視界に入れながらかろうじて持ってきた携帯電話の電源を付けて時間を確認する。
だが真っ先に視界に飛び込んできたのは大量の通知。ぱっと見だけで50件以上はあるのではないかと言うほどつらつらと通知の山が並んでいた。恐る恐る差出人を確認すると、案の定、蘇枋からのものだった。
今日は早く帰ってくるって言ってたっけ…………
そんなことをぼんやりと考える。
おおかた、仕事から帰ってきたにも関わらず、家に桜はいない。何も言わずに出ていってしまったから吃驚したのだろうか。それなら悪いことをしてしまった。でも、今は余程のことがない限り蘇枋とは話したくない。
今でもポコンポコンと増える通知を横目に電源を切ろうとした。
プルルルルルッッッッ!
急に携帯電話が大きくブルリと震えて手に振動が伝わる。耳を劈くいきなりな音に仰天して、反射で通話ボタンを押してしまった。
やって………しまった………
でもここまできたのなら諦めるしかない。桜が出ていった旨をしっかり蘇枋に話して理解し、納得してもらうために、こうなったら話すしかないだろう。携帯電話を顔の横に当て、通話をする。
最初に聞こえたのは焦ったような男の声。
「遙くん⁉︎今どこにいるの⁉︎」
彼にしては珍しい声色だ。焦っているような、不安がっているような、電話越しでもわかるくらいに彼の声は困惑の色を宿している。
少し申し訳ない。今考えたら自分勝手に出ていって、迷惑をかけただろう。でも、これを言えば全て終わる。俺は彼の前から潔く消えて彼は好き合っているであろうあの美しい女性と結ばれてハッピーエンド。いいシナリオじゃないか。
ひとりでに胸がずきりと痛む。俺だってこんなことは考えたくない。でも、今まで俺を救ってくれた蘇枋を、せめて今からでも幸せになって欲しい。俺が彼を引き止める理由も権利も何もない。
理不尽なのは分かってる。でもそこまでしないと彼は俺から離れてくれない。彼は優しいから、だったら君はどうするの?とでも聞いてきそうだな。
だから今、しっかりとこの縁を断ち切ってやる。二人とも何も後腐れがないように、終わらせないといけない。釣り合わないと分かっていても、好きでいてしまう自分の乱れた煩悩を、愚かな思考を完全に潰すためのものにもなれるだろう。
俺は意を決して、ゆっくりと言葉を繋いだ。
「…………蘇枋、別れようぜ。俺たち」
「は?」
いつも完璧な彼とは想像もつかないような間抜けな声が電話越しに耳に届く。
永遠にも似た数秒感が二人の間を通る。1秒……2秒………3秒、たっぷり3秒フリーズした蘇枋が声色を変えて桜を問いただす。
「別れるって……え?…なんで急に…ッ、それに…名前………」
「ごめんな蘇枋。俺が悪かったんだ。全部。こんなゴミみたいな俺が、愛されるわけないよな……ごめん。」
「え……?ごめんって何?……どう言うこと⁉︎、ッ遥くん⁉︎」
「じゃあな、蘇枋」
「ちょっ!ちょっとまッッ!」
繋がっていた通話が桜の手によってぶつりと切れた。
また電話なり通知なりくるかもしれない。無慈悲な機械音を鳴らす携帯電話は電源をしっかり落としてポケットにしまう。
ふと、自分の視界がゆらゆらと揺れた。なんだ?これは………
瞳に透明な血液が溜まり、視界を遮る。ぽたりと自身の手に落ちた水滴を見て、今自分が涙を流していることに気づいた。
「ふっ……、ぅ…ぁ……」
声を抑えようとしても嗚咽のように喉から滲み出る音。揺らぐ視界から涙がこぼれ落ち、簡素な服に小さなシミを作る。
自分は何を泣いているのだろうか。涙は、あの時全て出し尽くしたと思っていたのに、今でも大粒の雫がオッドアイの瞳から溢れ落ちる。
こんなところで一人、何をしてるのだろう。でも今だけは、蘇枋との関係を断ち切った今だけは泣いちゃダメだ。俺は諦めないといけない。こんな俺を救ってくれた彼に恩返しをしたいから。
視界を上に振り上げて天を仰ぐ。空にはすっかり暗くなって一番星が輝いていた。その星に元気付けられるように深呼吸をして、腕で涙を乱雑に拭う。
「はは、俺今日泣きすぎだろ…っ」
蘇枋の声を聞いてしまったからまだ迷ってしまっている自分の思考を無理やり振り払うようにベンチから勢いよく腰を上げて地面に立つ。この思考をどうにかするのは走るのが一番だ。そう思って足を進める速度を上げ、ほぼ全速の力で走る。この現状から逃げるように、考えないようにするために必死に走る。
今は、脳につく彼の声が一瞬でも忘れられるまで走りたい。
途中嫌でも目に入るキラキラと輝く街。昼間も圧巻だったが日が落ちてからもそれに劣らない、いや余裕で越してくるほどに輝く摩天楼に嫌気がさす。こんな気持ち悪くて情けない俺が見ていいものじゃない。というか自分という存在を全面的に否定されてるように感じてみたくない。
そんな逃げ切れないほどの光から己を守るように影になった人通りの少ない路地裏に入る。
走りすぎただからだろうか。
呼吸がしづらく、酸素を肺いっぱいに吸い込むために大きく深呼吸しながら肩を上下させる。
「はッ、…は~……………ふぅッ」
「何してるのかな〜?」
息が整ってきた時、背後から声が聞こえた。持ち前の反射で後ろを振り返る。
するとそこには六人ほどの男の集団がいた。
「なんだ!てめーら!!」
雰囲気的にあまり友好的な奴らではないと長年積んできた警戒心が働いてすぐに相手の動きに注意する体制に入る。
「いや〜、最近お前みたいに間抜けに出歩いてくれる奴が居なくてな〜、ちょうど欲求不満で死にそうだったんだ」
ニタリと笑う男たちが気味悪くて嫌悪感で顔を歪める。でもこうなって仕舞えば自分の身は自分で守るしかない。高校の時ではないにしろ、腕っぷしには自信がある。
嫌悪感を押し殺してニタニタと気持ち悪く笑う男の顔面に一発入れる────その時、後ろから気配を感じる。振り返ろうとしたが、もう遅かった。
バッと大きく振り翳した金属バットが目に入る。それはもうなんの抵抗もなくなったかのように重力に従って桜の頭に一直線に降ってきた。
ゴッと鈍い音がする。当たったと認識する暇もなく男に押し倒される。やっと自分に何が起こったかを理解したその時、ズキズキと痛む頭と、押し倒された恐怖が波のように一気に流れくる。
「ハハっ、油断したなァ〜、大丈夫だ、俺がしっかり可愛がってやるからな?」
桜の上に馬乗りになって跨り、ニヤニヤしながら体を触る男がどうしても受け入れられなくて暴れる。
「腰細いな〜〜、女みてぇ!」
「な、っ!やめろ!!触んなッ!!!」
だが、暴れる体も無駄だというように気色悪い手で押さえつけられる。
男が桜を弄る手が下腹部へ移動した時、ゾッとする。怖い。今から自分に何が起こるのか、いやでも理解してしまって全身に悪寒が走る。
「あっっ、…………やっ、、、すぉ………」
服を大きく捲られ、男の手がゆっくりと桜に触れる。目をギュッと瞑り、もうダメだと思った刹那───────桜の大好きな彼の匂いがした。
「桜くんッ!」
声が聞こえたその瞬間、桜の上に跨っていた男が横に5メートルほど吹っ飛んだ。狭い路地では飛ばされる場もなく、男の体は壁に激突して呻き声をあげ、動かなくなる。
それに驚く暇もなく自分より少し大きい体に勢いよく抱きしめられた。桜の大好きな、あたたかな彼の体温に包まれる。冬の気温はやっぱり冷えていてさっきまで凍え死にそうだったほどの胎内の寒さがじんわりと緩和されて暖かくなってくる。半日会ってないだけなのにまるで何年も会ってなかったかのような気持ちに陥る。久しぶりの彼の温度は暖かくて、やっぱり優しい、桜の好きな彼。
「あ………すぉ」
「はぁ〜〜、よかった………」
蘇枋は暫く桜を抱いていたかと思うとそんな、ひどく安堵したかのような声を漏らした。
「何してくれんだテメェ!!!」
「ふざけんな!!!」
突然、男たちの怒声が飛び交う。吹っ飛ばされた男の仲間だろうか、今何が起きたのかをやっと理解したのか、急に登場してきた蘇枋に突っかかる。
蘇枋は、はぁ〜〜〜とため息をつくと桜の前でいつも通りの笑顔でニコリと笑う。でも目の奥が笑っていない。今まで見たこともないほど憤慨し、人を殺してきたのかのような冷酷な目をしている。こうなった蘇枋は止められないだろう。ご愁傷様だ。
「桜くん。大丈夫だからね。あいつらは俺が始末するから。安心して?」
そう言って蘇枋は着ていた大きめのダウンコートを脱いで、ふわりと桜に被せる。そしてそのまま桜を移動させて路地裏の壁へもたれかけさせた。そのコートは蘇枋の優しい匂いがして、縋り付くようにギュッと握ってしまう。
蘇枋は優しい視線で桜の姿をしっかり確認してから前の男たちを睨みつけながら見据える。
そんな蘇枋を見たその時に先ほどまでは違うものに必死すぎて気付かなかった頭の痛みが一気にぶりかえす。まるで頭を鈍器で殴られたかのような衝撃。あまりの痛みに顔を顰めてしまう。
そしてそのまま意識が朦朧としてくる。脳震盪だろうか。でも今はそんな冷静なことを悠長に考えられる状況でもなく。
背後からでもわかるほどの怒りの気持ちを纏った蘇枋の男らしい背中が走り出したのを最後に、意識は暗転した。
◇ ◇ ◇
桜くんが眠ってしまったのを横目に確認する。今日1日でいろいろなことがあって疲れたのだろう。肩にかけた蘇枋のダウンコートを愛おしいというように体に纏い、顔を寄せながら眠っている姿を見てそんな状況じゃないとわかっているのに最愛の人が可愛すぎて口角が上がってしまう。
「てめぇ!!何笑ってんだ!!!なめてんのか!?」
いかにも三下のようなセリフにため息が出る。なんでこんなやつに時間を割かなければいけないのか、全く理解できない。一刻でも早く桜としっかり話をしたいというのに。
まあ、今の俺の気持ちをぶつけるにはちょうどいいか。遥をもっと早く見つけられなかった俺の怒りを存分ぶつけさせて貰おう。
「舐めてなんかないですよ。ただちょうどいいなって」
嘲笑うようにニコリと笑う。
男たちが俺の言葉に反応するより先に男の眼前に拳が飛んだ。
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