テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
夜明け前。
ノアは、目を覚ましていた。
焚き火は、もう消えている。
空は、薄い藍色。
――嫌な予感が、していた。
「……レイヴン?」
返事はない。
彼のマントも、剣も、そこになかった。
ノアの胸が、ぎゅっと締めつけられる。
⸻
少し離れた森の奥。
レイヴンは、一人で立っていた。
血の匂いが、微かに漂っている。
地面には、黒い紋章。
――黄昏の徒の印。
「……やっぱり、来たか」
レイヴンは、剣を抜く。
「ノアに近づくな」
その瞬間。
空気が、歪んだ。
黒いローブの男が、現れる。
「……君が“彼女の代わり”か」
「……何の話だ」
「カイの代わり。
哀れだな」
レイヴンの表情が、凍る。
「……言葉、選べ」
⸻
一方。
ノアは、必死に森を駆けていた。
胸の奥が、ざわざわする。
「……嫌だ……
また……誰か、失うの……」
地面に、血の跡。
「……レイヴン……!」
魔力が、無意識に漏れ出す。
⸻
戦闘。
ローブの男は、異様に強かった。
刃が、レイヴンの脇腹を裂く。
「……っ!」
毒。
黒い血が、滴る。
「……ノアの名前、何度呼べばいいんだよ……」
レイヴンは、膝をつく。
⸻
そのとき――
「レイヴン!!!」
ノアが、飛び込んでくる。
ローブの男が、嗤う。
「……来たか。
次は君の番だ」
「……黙れ」
ノアの魔力が、爆発する。
でも、敵の魔法が先に放たれる。
黒い槍が、レイヴンの胸を貫く。
「――ッ!!」
レイヴンが、倒れる。
「……レイヴン……?」
ノアの声が、震える。
時間が、止まったみたいだった。
⸻
ノアは、叫ぶ。
「……やめて……やめて……!!」
魔力が、暴走する。
周囲の木々が、吹き飛ぶ。
ローブの男は、撤退する。
「……いい反応だ。
やはり君は“鍵”だな」
姿が、消える。
⸻
ノアは、レイヴンに駆け寄る。
「……ねえ……ねえ……
嘘でしょ……」
胸に、血が広がっている。
呼吸が、ほとんどない。
「……お願い……」
ノアは、治癒魔法を叩き込む。
でも、魔力が足りない。
「……足りない……」
手が、震える。
「……やだ……
また……一人にしないで……」
涙が、ぼろぼろ落ちる。
⸻
そのとき。
指輪が、淡く光った。
――カイの遺品。
ノアの耳元で、
幻みたいな声が聞こえる。
「……生きろ……」
「……守れ……」
ノアは、歯を食いしばる。
「……私……選ぶ……」
ノアは、自分の命を削る禁呪を使う。
白い光が、爆発する。
⸻
しばらくして。
ノアは、地面に倒れていた。
目を覚ます。
そこは、アイリスの簡易治療陣。
「……ノア!!」
アイリスが、抱きしめる。
「……無茶しすぎよ……」
ノアは、震える声で聞く。
「……レイヴンは……?」
アイリスは、少し間を置いて言う。
「……生きてる」
ノアの目から、涙が溢れる。
⸻
夜。
レイヴンは、意識を取り戻す。
ノアは、ベッドの横で眠っていた。
その手を、ぎゅっと握っている。
レイヴンは、小さく笑う。
「……俺のほうが……重かったか……」
ノアが、目を覚ます。
「……レイヴン……?」
次の瞬間。
ノアは、泣きながら抱きつく。
「……バカ……
勝手に……死にかけないでよ……」
レイヴンは、驚いてから、
そっと抱き返す。
「……悪い」
「……嫌だった……」
「……何が」
「……あなた、失うの……」
レイヴンの心臓が、跳ねる。
「……それって……」
ノアは、顔を上げる。
涙でぐちゃぐちゃの顔で、言う。
「……好きとか……
まだ……分かんない……」
「……でも……
あなたがいなくなるのは……
耐えられない……」
レイヴンは、苦笑する。
「……それで十分だ」
ノアの額に、そっと額を当てる。
「……俺は、そばにいる」
ノアは、小さく頷く。
⸻
ラストカット。
ノアは、夜空を見上げている。
「……私は、また誰かを選んだ。
それが正しいかどうかは、分からない。
でも……
もう二度と、何も選ばずに失うのは嫌だ。」
遠くで、
黄昏の徒の紋章が、闇に浮かんでいた。