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うわっ…読了。これ後編って形で、前編(だと思う)を読んでないけど、それでも心臓掴まれた。🏺の視点で、死んでからの心情と後悔、そして最後の桜の下での会話とリップ音…泣いた。普段は脳筋のバトルばっか読んでるオレだけど、こういう死ネタでこれだけ泣かされるとは思わなかったわ。「大好きです。愛してます」って言えた🏺と、それを受け取ったアオセンの幸せそうな顔…あれが最期じゃなくて、ちゃんと「見てる」って続くのが救いだな。作者さん、綺麗な話をありがとう。めちゃくちゃ刺さった。
🟦🏺です。どうか忘れてください。
※死ネタです、地雷の方はご注意ください。
胸を撃ち抜かれた。比喩ではなく物理的に。
左胸をなにかが通過していき、その後に焼け付くような痛みが広がって倒れる。背中側に血が流れ出していくのが感じられた。
寒い寒い寒い、生暖かい血が流れ出してその上からよくわからない液体が混ざる。朦朧とする意識の中でもアオセンが俺を撃った人物に銃を撃ち込んでいるのが見えた。比喩などではなく鬼のような形相に少し寒気がした。
周りの仲間達が救急隊に連絡したりしているのが見える。ああ、自分は末期にも人に迷惑をかけ続けるのか。
「…―――浦、つぼ浦!」
この声はアオセンだ。目を開くと、涙を目に溜めた泣きそうな顔でこちらを覗くアオセンがいた。いつもはそんな顔しないのにな。自分の見たことのないアオセンがまだいて、最期に見る顔がコレだなんて嫌だな。
「っくそ血が…救急隊の人もう少しで来るから!」
「っ、ぁぉせん」
喉から絞り出した声は頼りなくか細い。アオセンが聞き漏らさないように耳を澄ましているのが感じられる。
「ッなぁに」
「……ぃままで、ありがと…」
「、やめてつぼ浦、ほんとにッ…」
涙を流すアオセンの顔はとても綺麗だ。最愛の恋人に見送ってもらえるなんて、こんな嬉しくて名誉なことはないだろう。
俺はいま笑顔だろうか。アオセンが最後に見る俺の顔は笑顔であってほしいから、痛みも何もかも無視してアオセンに微笑みかけた。
アオセンが俺を抱き上げる。冷え切った体温がじわじわと温まる気がして、同時に自分の限界を悟った。
アオセンと恋人になれて、一緒に桜を見たり日常を過ごしたり。走馬灯もアオセンだらけだ。
あぁ、なんと素晴らしい人生だっただろう!
「……………またな、ぁおせ…」
「…つぼーら?、、つぼ浦!?」
人間が最期まで残る五感は聴覚らしい。
最期までアオセンの声を聞きながら、俺は意識を手放した。
気がつくと俺は警察署前にいた。
「…は?」
まさか死んでいないのか?なんて考えるが、自分の体を見下ろせばそんな考えは一瞬で霧散した。
身体が透けている。輪郭と色をぼんやり残したような姿になっていて、よくお話に出てくる亡霊と全く同じだ。物に触ろうとするとするりと手が突き抜ける。現世のものにも干渉できないとはよくできてんな。
どうせ行く宛もない。本署の扉を抜けてゆけば、そこには複数人の人々がいた。
「…まるん、オルカ」
うつむいて泣くオルカと、それを慰めながらも自身も泣くまるん。
「…キャップ」
俺の名前を呼びながら号泣するキャップ。
「…カニくん」
ペンギンの被り物を珍しく外して泣くカニくん。
署長、ドリーさん、イトセン…
三者三様で、でも確かに俺が死んだことを悲しんでくれている。
あんなにも迷惑をかけていたというのに、俺のことを愛してくれていたんだな。
俺も泣きたくなってきたが、ぐっとこらえて全員の頭をなんとなく撫でたりした。干渉できないから気が付かれはしなかったが。
いつもは何も思わなかったはずの本署の景色はいまや、寂しく懐かしいものになってしまった。
しばらくあちこちを飛び回った。
ギャングも、救急隊も、市民も、皆俺の死を悲しんでいた。その度に胸が傷んだ。こんなことならもう少し役に立っておけばよかったかもしれねぇな。
「…ぁ」
結局街を飛び回ってもアオセンはいなかった。
ならあのマンションはどうだろう、とやってくると人の気配がする。
幽霊なので施錠なんてものは関係ない。するりと扉をすり抜けた。
中は酷い有様だった。
ぐちゃぐちゃの衣服や掃除されていない部屋や家具、捨てていない弁当の空箱。まだ食事を取るという理性は残っているらしい。
探し回ると、部屋の奥に設置されたベットにアオセンがいた。体を起こしてぼんやりとしている。
「…アオセン」
どうせ干渉できやしないが、そうっとアオセンの横に座る。
「来たぜ。元気にしてたか?」
濃い隈とやつれた姿はどう見たって元気ではない。どうせこの声も聞こえないからと軽口を叩く。
するとアオセンがグチャ、とシーツを握りしめてうずくまった。
なんだ、具合が悪いのかと顔を覗き込もうとすると、灰色のスウェットを着た背中が震え始めた。
泣いている。あのアオセンが。
「…ッぅぐ……うぁっ…つぼーら、つぼーらっ…ごめ、ごめんね…」
「ッ……なんで」
アオセンが謝ることなんて一つもない。
撃たれたのは俺の不注意だ。本署でChillをしていたら、気を抜いて後ろの存在に気がつけなかった。
ただそれだけだ。それだけなのに。
あぁ、そうか。
俺は後悔しているんだ、アオセンを置いて逝ったことを。
「………ごめん、ごめんな。アオセン」
死んでしまって、置いていってしまって、後悔させてしまってごめん。
アオセンの背中を擦る。触っても気が付かれない。この声で弁解すらできない。亡霊という姿を今は恨むしかない。
もう本人には届かない謝罪を、背中を擦り続けながら繰り返した。
アオセンが外出した。
あんなにも外に出なかったというのに、急に花屋によってからヘリに乗り込み、少し街から離れた場所へ向かっていく。
幽霊というものは便利なもので、あっという間にアオセンのヘリに追いついた。
俺の眼窩では日常が繰り広げられている。街の声が頭に響く。
桜が咲いているのが見える。結局今年の桜は一緒に見られなかったな、なんて考えて虚しくなった。
「…これ」
俺の目の前には小さな墓石があった。
ああそうか、俺の墓か。死後自分の墓を見るというのはこういう気持ちなのか。
アオセンは優しく墓標にかかる桜の花びらを払うと、花を供えて手を合わせた。
俺の墓の前には他にもお供えがあった。菓子やら飲み物やら俺の好きな物とかがいろいろとある。どうやらそれには触れることができるようで、とりあえずポケットに詰め込んだ。俺がお供えを持ち上げると幽体離脱した霊体のように透けた物とそのままの姿の二つになるので、無限増殖みたいだなとぼんやり考えた。
「…つぼ浦、久しぶりだね。来るの遅くなってごめん」
「そんなことないけどな」
「最近は全然仕事行けてないんだ。迷惑かけて申し訳ないなぁ…」
「アオセンはむしろ仕事に行きすぎだろ。休め」
「このお花はね、ガーベラっていうんだよ。黄色だしつぼ浦の雰囲気に合ってるかなぁって…」
「…綺麗、だな」
俺の眼前にはガーベラが九本ある。どれも明るい黄色で、とても綺麗だった。
「……つぼ浦が死んじゃうなんて全然考えてなかったから、あんまり思い出とか作れってなくてごめんね」
「…そんな事ないぞ」
「…代わりになれなくてごめん」
「…っは?…」
咄嗟に顔が上げた。
なんで、なんでそんな。
「そんな辛そうな顔すんだよ…」
未だに疑っていた。信じられなかった。だって俺なんてアオセンの横にすら並べない。
もしアオセンを海にたとえるのなら、俺はそこに浮かぶ漂流物みたいなものだ。アオセンの気分で振り回される、いてもいなくても変わらないしその気になれば無視できるちっぽけな物。
アオセンに存在することを意識してほしくて、もし都合よく俺のことしか見てくれなかったら。それを期待してグレも投げたしロケランも撃った。市民とギャングと面倒事をおこした。
もし海に浮かぶものが危険な爆発物だったのなら嫌でも意識を向けるだろう。そうんなふうにアオセンはやってきて一緒に謝ってくれる。俺に注意を向けてくれる。
それがアオセンの負担になってるだなんて重々承知していた。だがそうする以外の方法が思いつかなかった。
アオセンと付き合えたのだって現実感がなかった。本当に俺のことを愛してくれてるかなんてわかっちゃいなかった。
あぁ、俺って最低だな。
アオセンのことを信じきれていなかったのに、代わりたいだなんて思ってもらえるくらい俺は愛されていていたんだ。
最期に愛の言葉すら言えなかった。なんならアオセンのことを疑ってすらいた。
こんなの拷問か生き地獄だ。死んじまってるけど。
もし、もしアオセンに少しでいいから愛してると言えたら―――
刹那、ぶわりと膨れ上がるみたいに桜の花びらが目の前に広がる。
その時なんとなく理解した。あぁ、これはきっと最後のチャンスなんだろう。
「…アオセンは泣き虫だな」
前を見ればアオセンがこちらを見上げていた。偶然なんかじゃない、アオセンの目に俺が映り込んでいる。
「…ぁ、つぼー、ら?」
「おう!そうだぜ!」
竜胆色の目にまたたく間に薄く膜が広がる。パクパクと口を動かす様は金魚のようで、少し笑ってしまう。
「……ぅあ゙、、ぅ゙わあ゙あ゙ぁぁぁぁッ!!!」
子供みたいに俺にすがりついてアオセンが泣き出した。アオセンの背中に手を回せば、確かな温かさと質量がそこにある。俺の勘違いじゃない。
もう離さないように願いながら、アオセンを抱きしめた。
アオセンが泣き止んだので手持ちのハンカチで顔を拭いてやると、アオセンはポツポツと喋りだした。
「なん、で」
「なんだ?」
「なんでいる、の?つぼーらは、…」
「あー、それがな」
困って視線を少しずらした。言えない。アンタのことを信じきれてなかっただなんて。
「わかんねぇ」
「え?」
「アオセンが泣いてるな、なんて考えたら気がついたらここにいたからな」
勿論嘘だ。ずっと俺はアオセンと一緒だったから。
「…なにそれ」
アオセンがふっと笑う。その笑顔であいも変わらず心臓が跳ねた。
照れ隠しにアオセンの頭に手をおいた。
「まぁ、だからな。俺は多分またいなくなっちまう」
「…そっか」
この時間は有限だろう。だから、今のうちに聞いておこう。
「…アオセン」
「なぁに」
「…俺のこと好きでした?」
「勿論」
あぁ、やっぱあんたは俺のことが好きなんだな。
「そうっすか。…じゃあ大丈夫だな」
「なにが?」
「こっちの話っす」
ふと、嫌な予感がして顔を上げた。そろそろか。
「じゃあ、アオセン」
「まって」
「?なんす…」
急にアオセンの顔が近づいてきて、口元でリップ音がなる。
何をされたか理解すると同時に顔に熱が集まる。やはりアオセンには敵わない。
「…アオセン」
「なぁに」
「大好きです。愛してます」
「…俺も」
この言葉を言えたから、返事をもらったから。もう大丈夫。
風が吹く。
「じゃあアオセン。またな!!」
「…またね、つぼ浦!!」
アオセンの幸せそうな顔を目に焼き付けた。あ、そうだ。
サングラスを外し地面に落とす。少し賭けてみるか。
目の前が桜吹雪で覆われた。
アオセンが立ち尽くしているのが見える。
「…あー」
きっと桜吹雪に飲まれた亡霊に俺は戻ったんだろう。
「ん?……!」
アオセンの声で、視線の先を辿れば。そこには俺のサングラスがあった。
博打はジャックポットを引いたようだ。
「…ふふふ、あはははっ!」
「…やっぱアオセンは笑顔が似合うぞ」
ぼそりと、一言つぶやいた。
アオセンが職場に復帰した。
身支度を整えるのを見ながら、これなら大丈夫だろうと考える。
もう夏だ。暑い日差しに目を細める。明るくて何もかも照らし尽くす、だから俺は夏が好きだ。
アオセンが玄関から出るのと同時に外に出る。
「見ててね、つぼ浦」
「見てるぜ、アオセン」
アオセンの独り言に、俺もまた独り言で返す。
きっとアンタは前に進める。
だから俺のことなんて忘れちまえ。日常を普通に過ごして、そしてたまに桜をみて少し思い出してくれるくらいでいい。
「…特殊刑事課つぼ浦匠、On duty!」
きっと誰にも聞こえない挨拶でも。
この挨拶を繰り返す日常に、ロケランを撃って馬鹿をすることに、本署の俺の家だなんて言っていたソファーに、ギャング達と、救急隊の人々と、市民達と、同僚達と、そしてアオセンと共にいた日々に俺の心があったことも、忘れてください。
アオセンへ
元気か?あの時から時間も立って、あの桜の花も散っちまったな。
これをアオセンが見ることはできないしありえねぇが、手紙をもらったから返事をしようと思う。
まずひとつ。勝手に置いてってごめんな。アオセンに迷惑をかけまくった事をここに謝罪するぜ。でも、それだけ俺のことが好きだったんだと実感できた。
次に、俺の事を考えてヘリで事故を起こしてたよな?俺のことなんてさっさと忘れて、たまに思い出すくらいでいい。でもアオセンは忘れようとなんてしねぇんだろうな。
次!俺のサングラス、大事にしてくれ。
アンタのことはいつでも見守ってる。だから、身体を大事にしてすごしてほしい。アオセンが死ぬ時は絶対迎えに行くからな。勝手に死ぬなんて許さねぇぞ。
アンタのことを愛し続ける俺より。 つぼ浦匠
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きおつち
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