テラーノベル
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手の温もりを感じながらフワフワした気持ちで少し遠慮がちに歩いていると、
「ユウユウちょっと遠回りして帰ろうか〜
駅までお散歩しよう!」
絃さんがもう普通に私を’ユウユウ’と呼んでくれたことに驚きと嬉しさを感じた。
だとしたら私はまた絃さんを’ケンケン’と呼ばないとならないと思った。
それだけではなく’ケンケン’に’さん’を付けるか付けないか問題も更に発生してくるわけである。
「いいですね。どの道回って帰ります⁈」
とりあえずわざわざ名前呼ばなくていい返しをしておいた。
「そうだな、でもちょっとまだ足りない事があるんだけどなっ、ユウユウ〜」
(うわぁ、もう絶対’さん’.なしで呼ばないといけない流れやんか)
「え、あの…ケンケンさんは何処か行きたい所あるのですか?」
さすがに’さん’は付けておいたがかなりぎこちなさが否めない。
「うん?あともう一歩!」
(何がやねん、やっぱり’さん’付けのことだよね…)
「あ、だから何処か回り道知ってますか?ケンケン…」自分でも顔が赤いのが分かるほどだった。
ケンケンが消えそうなくらい小さな声となってしまったのだが。
すると絃さんは両手で私の顔を軽く挟み
「ちょっと赤いほっぺのユウユウも可愛いよっ」
私は余計に顔が赤くなっているのを感じた。
「ケンケンは嬉しいぞ!」
絃さんはおどけた感じでそう言うとまた私の手を握って歩き出した。
そして私達は少し遠回りの裏の道を通り公園を抜けて駅に向かって行った。
歩きながら私は少し涙が出ていた。
自分で涙の理由を気にする事はしなかった。
でもいろんな感情が入り混じった涙であるのは間違いない。
それに気が付かれないようにとそっと繋いでいない手で涙を拭った。
本当はわかっているが直視したくない流した涙の水滴は嬉しい成分だけでなく、
いくつかの理由がある複雑な成分が含まれている水滴であることを絃さんは多分気づいていたのかもしれない。
何事もなかった様に繋いだ手をキュッと握り直して複雑な胸中ではあるが駅までのお散歩を楽しもうと思った。
コメント
1件
あ〜もう、めっちゃ可愛いエピソードでした…!「ユウユウ」「ケンケン」呼びに変わる流れ、焦って顔を赤くする主人公が目に浮かぶようで思わずにやけちゃいました。それでいて最後の涙のシーン——嬉しさだけじゃない複雑な成分があるって描写、すごくリアルで心に刺さりました。気づいてるかもしれないけどあえて触れずに手を握り直す絃さんの優しさ…大人の余裕というか。二人の距離が確実に縮まった23話、じんわり沁みました🌸