テラーノベル
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「カラスバ様、もってきま───」
〖ばきゃう!!〗
〖バァウ!!〗
シオンを見るなり、ボールから飛び出しシオンの方へ駆け寄るリザードン達
「!?」
「あかん!シオンが埋もれとる!」
慌ててシオンの方へ向かうが、当の本人は少し戸惑いつつも笑みを浮かべていた
しかしすぐにその笑顔は消え、どこかバツの悪そうな顔をしながらスマホに文字を打つ
『ごめんなさい、私貴方達のこと今は忘れてしまってて…』
そんな言葉にリザードン達は少しキョトンとした後、「大丈夫」というように再びシオンに顔を擦り寄せる
「大丈夫や言うとるで。それよりコイツらもっと撫でたってや」
カラスバの言葉に少しぎこちないがそれぞれの頭を撫でる
すると嬉しそうに飛び跳ねるリザードンやオンバーン、もっと撫でてというように頭を擦り付けるデンリュウにヌメイル
そして、どこか誇らしげにずっとシオンの肩の上に乗っているアチャモ
『ごめんね、いつか絶対思い出すから』
「……そうや、これ返しとくわ」
シオンの言葉に何か考えるように目線を少し下に落とした後、すぐに顔を上げシオンにキーストーンの着いたネックレスを渡す
『これ私のですか?』
「お前のや」
ネックレスを受け取ると目を輝かし、嬉しそうに笑うシオン
『メガシンカってどうやるんですか?』
「どう言われてもな、そのキーストーンを触ってポケモンと心を1つにするんや」
イマイチ分からないのか首を傾げ、キーストーンを見つめているとリザードンがシオンに「やろう!」というように近寄る
『…少し、やってみてもいいですか?』
「ええよ」
そう言うとバトルコートの方へ行き、キーストーンを握り締める
──しかしキーストーンは反応しない
〖クルル…〗
「声が出ないからかしら…」
リザードンが悲しそうに顔を下に落とす
アザミが頭を悩ませていると、カラスバがシオンに近寄りキーストーンを見る
「…もしかしたら、記憶がなくなってしもうとるからかもな……メガシンカはポケモンとトレーナーの絆がないとできひん」
『私が記憶を失ったから…ごめんね、リザードン』
〖!ギュア!ギュッ!!〗
謝るシオンに対し、慌てて首を横に振るリザードン
「少し時間が掛かるやろうけど、これからリザードンらと色んな所言ったらええ。そしたら、自然とできるようなるさかい」
『本当ですか?頑張ってみます。それに記憶も早く取り戻さないとですね』
笑うシオンに対し、少し複雑そうな笑みを浮かべシオンの頭を撫でるカラスバ
「…んな、無理して記憶思い出そうとせんでええんや。」
「お前アイツにはどこまで話したんや」
「不慮の事故で3年眠っていて、その前の1年でポケモンやカラスバと出会ったって事くらい」
「…アイツはなんか言いよったか?」
「『迷惑かけてごめん』くらいかな」
その言葉に「はぁ」とため息を着くカラスバ
シオンが居なくなった事務所の中でアザミとカラスバが話す
「…カラスバ、本当に言わなくていいの?自分との関係…」
「恋人なんて言ったら、アイツに気ぃ使わせてしまうやろ。 」
「でもそれじゃ…」
「オレが簡単に諦める訳ないやろ?こっから手に入れたらええんや。どんな手使っても 」
そう話すカラスバの目は獲物を見つけた獣のような目をしており、そんな瞳にゾッと恐怖を抱くアザミとジプソ
「それと 仕込まれとった毒の事は言わん方がええやろ。」
自分で命を絶とうとしていた。なんて事実到底受け入れれるはずかない
本人が勘づかない限りは黙っておく方がいい
「分かった。また、何かあったら連絡するよ」
そういってサビ組事務所を去るアザミ
ジプソと2人きりになった事務所でカラスバがジプソの名を呼ぶ
「…なぁジプソ。」
「どうされましたか」
「前な先生から、記憶を無理に思い出そうとしたらショックでまた倒れてまう可能性がある言われてな 」
カラスバは視線を下に向け、どこか悲しそうに笑う
「…そらオレの欲望だけ言うたら、記憶戻したい。やけどまた、シオンが眠ってしまうんだけは勘弁なんや」
シオンが眠っていた3年間、生きていた心地がしなかった
あんなに寂しくて辛くて苦しかった思いはもうしたくない
過去の記憶が消えたとしても、それでも元気に歩いてくれるのならそれで良かった
「…やからって、シオンの横をどこぞの男に取られる気はサラサラあらへん 」
彼奴の横にはオレ以外の男を立たせる訳にはいかない
彼奴の隣はオレだけや
『カラスバさ〜ん!!今日もかわいいですねっ!』
『私はカラスバさんの事ずっと好きなのになぁ』
『──カラスバさん、大好き』
「…ま、やけど声も聞けへんし、オレの事好きなアイツはもう居らん思うと…やっぱ堪えるもんがあんな。」
そういってメガネを取り、眉間を手で押えながら悲しげに笑う
そんなカラスバに対し、ジプソは複雑な表情を浮かべた
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