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『ずっと好きなのに、私じゃないんだね。』第4話 「ねえ、ひとりで泣かないで」
インスタライブを切った瞬間。
私はスマホを胸に抱きしめたまま、ベッドに顔を埋めた。
「……最悪だぁ……」
みんなの前で、あんなこと言っちゃった。
『私が勝手に好きなだけだから』
及川さん、どんな顔してたんだろう。
困ったかな。
引いちゃったかな。
それとも、もう私のこと、面倒くさいって思ったかな。
「……っ、うぅ……」
涙が止まらない。
もう今日は誰とも話したくない。
スマホも見たくない。
そう思って、枕に顔を押しつけた。
——その瞬間。
♪♪♪♪♪
「……え?」
スマホが鳴った。
画面を見ると。
着信:日向翔陽
「……ひ、日向くん?」
なんで!?
慌てて涙を拭き、電話に出る。
「も、もしもし……?」
『○○先輩っ!?!?』
「わっ!? な、なに!?」
『大丈夫ですか!?』
「……え?」
『今のインスタライブ!! 見ました!!』
…………。
「…………えっ」
終わった。
私の人生、終わった。
『影山も月島も山口も見てて!! みんなめっちゃ心配してます!!』
「ちょ、ちょっと待って!? なんで烏野のみんなが!?」
『え? だって、○○先輩のインスタ、みんなフォローしてますよ!?』
「…………あ」
そうだった。
以前、練習試合で仲良くなって、連絡先も交換して、インスタも相互フォローしていたんだった。
忘れてた……。
『とにかく!! 今からみんなで電話しますね!!』
「えっ、ちょ——」
プツッ。
切れた。
「…………」
……今から?
みんなで?
嫌な予感がした、その直後。
♪♪♪♪♪
着信:烏野高校(グループ通話)
「うそでしょぉぉぉ……!」
*烏野高校*
恐る恐る通話に参加すると。
『○○!!』
『おい、日向! 声がでけえ!』
『お前も十分うるせえよ、田中!』
『ちょっと、みんな落ち着いて!』
一気に聞こえてくる声。
澤村さん、菅原さん、東峰さん、田中くん、西谷くん、日向くん、影山くん、月島くん、山口くん。
……全員いる。
「……み、みんな、こんばんは……」
『こんばんはじゃないべ!!』
菅原さんの声が飛んできた。
『○○、大丈夫?』
その優しい声に、喉がきゅっと詰まる。
「……うん、大丈夫だよ」
『嘘だな』
……影山くん!?
『さっき泣いてたろ』
「っ……!」
『あー!! 影山! そういう言い方すんなって!』
日向くんが慌てている。
『でも、泣いてたのは本当だろ』
『ツッキー、今それ言わなくていいから!』
『山口うるさい』
いつものやり取り。
いつもなら笑えるのに、今は涙が出そうだった。
『……○○』
澤村さんの落ち着いた声が聞こえた。
『無理に話さなくていいからな』
「……っ」
『俺たちは心配して電話しただけだから』
「……ありがとう、ございます……」
声が震えた。
『あ、○○先輩、泣いてます!?』
日向くんが叫ぶ。
『バカ、声でけえって!』
『お前が一番うるせえよ!』
『おい、静かにしろ!』
みんなが一斉に騒ぎ始める。
その賑やかさが、なんだか温かくて。
「……ふふっ」
思わず笑ってしまった。
『あっ! 笑った!』
日向くんの嬉しそうな声。
『よかったぁ……』
「……みんな、ごめんね。心配かけて」
『謝んなくていいべ!』
菅原さんがすぐに言った。
『好きな人のことで泣くのなんて、悪いことじゃないんだから』
……好きな人。
その言葉だけで、また胸が痛くなった。
「……でも、相手には彼女がいるから」
電話の向こうが、静かになった。
「私が勝手に好きなだけで……。その人は何も悪くないのに、勝手に傷ついて、勝手に泣いて……」
ぽろぽろと涙が落ちる。
「……こんなの、迷惑だよね」
『迷惑なわけねえだろ』
低い声。
澤村さんだった。
『誰かを好きになるのは自由だし、つらいときに泣くのも自由だ』
『そうそう! 好きって気持ちは止められないもんな!』
西谷くんが続ける。
『俺は応援するぞ!!』
『お前はまず声量を応援してもらえ』
田中くんのツッコミに、みんなが笑った。
私も笑った。
泣きながら、笑った。
「……ありがとう」
本当に、ありがとう。
みんながいてくれてよかった。
そう思った、そのとき。
『……で?』
菅原さんの声が、少しだけ変わった。
『その相手って、及川?』
「…………え?」
………………。
『えっ!? 及川さん!?』
日向くんの声が裏返る。
『青城の及川か!?』
田中くんが叫ぶ。
『マジかよ……』
東峰さんが絶句する。
『あー……なるほどね』
月島くんが何かを察したように呟いた。
「ちょ、ちょっと待って!? なんで及川さんってわかったの!?」
『いや、ライブで名前出てたべ』
菅原さんの一言。
「…………」
忘れてた。
全部見られてたんだった。
『……そっか』
澤村さんが静かに言った。
『及川には彼女ができたんだよな』
「……うん」
『それで、今日告白したのか?』
「……昼間、うっかり言っちゃって……」
『うっかりで告白!?』
日向くんが驚く。
『いや、でも……ずっと好きだったんだろ?』
影山くんの言葉に、私は唇を噛んだ。
「……うん」
『……そっか』
影山くんはそれ以上、何も言わなかった。
でも、その短い言葉が優しく聞こえた。
そして。
『……○○』
菅原さんが、穏やかに話しかけてくれた。
『今夜はちゃんと寝ろよ。ひとりで考えすぎんな』
「……うん」
『明日もつらかったら、また電話してきていいからな』
「……ありがとう、菅原さん」
通話の向こうで、みんなが口々に「いつでもいいぞ」「気にすんな」と言ってくれた。
その温かさに、私はもう一度泣いてしまった。
*その頃、音駒高校*
烏野との電話が終わった直後。
♪♪♪♪♪
今度は別の着信。
着信:孤爪研磨
「…………え?」
研磨くん!?
慌てて電話に出る。
「も、もしもし?」
『……○○?』
いつも通りの、少し眠そうな声。
「研磨くん、どうしたの?」
『……インスタ、見た』
「…………あ」
『……泣いてたね』
その一言で、また目が熱くなる。
「……うん」
『……そっか』
少しの沈黙。
『……今、電話しても大丈夫?』
「え?」
『……黒尾が、すごく心配してるから』
その瞬間。
『おーい! ○○ちゃーん!! 聞こえてるー!?』
遠くから黒尾さんの声がした。
『ちょっ、クロ、うるさい』
『いやいや、心配してんの!』
『……スマホ、耳から離して』
『はいはい』
どうやら、研磨くんの隣に黒尾さんがいるらしい。
その後ろから、夜久さんの声まで聞こえた。
『研磨、ちゃんと代わってやれよ!』
『リエーフ、勝手にスマホ触んな!』
『えっ、俺まだ何もしてないっすよ!?』
……待って。
まさか。
「……研磨くん、もしかして……」
『……うん』
研磨くんが小さく答えた。
『……音駒、みんないる』
「…………ええええ!?」
*音駒高校・緊急集合(本人たちは通常運転)*
『○○ちゃーん! 大丈夫かー!?』
黒尾さんの声が響く。
「く、黒尾さん!? 夜久さんも!? リエーフくんまで!?」
『おう! みんなで心配してたんだよ!』
『黒尾、声がでかい!』
『夜久さんも十分でかいっす!』
『リエーフ、黙れ』
研磨くんの冷静な一言。
「……っ、ふふっ」
また笑ってしまった。
黒尾さんが嬉しそうに言う。
『お、笑ったな! よしよし!』
『……黒尾、そういうのうざい』
『ひどくない!?』
音駒らしいやり取り。
その声を聞いていたら、少しだけ心が軽くなった。
『……なあ、○○』
黒尾さんが、いつもより真面目な声を出した。
『及川のこと、好きなんだって?』
「…………うん」
『そっか』
黒尾さんは、少し考えるように間を置いた。
『……つらいよな。好きな相手に好きな人がいるって』
「……っ」
『でもさ』
黒尾さんの声が柔らかくなる。
『お前の気持ちまで、なかったことにしなくていいんだぞ』
……あ。
「……黒尾さん……」
『好きだった時間も、今つらいことも、全部お前の本当の気持ちだろ?』
涙が頬を伝った。
『だから、自分のことまで責めんなよ』
「……うん……っ」
『……泣いていいからな』
その言葉に、私はとうとう声を上げて泣いてしまった。
『うわっ、クロが泣かせた!』
『リエーフ、違うだろ!』
『……うるさい』
研磨くんが小さく呟く。
そして、しばらくしてから。
『……○○』
研磨くんの声が聞こえた。
「……なに?」
『……明日、ゲームする?』
「……え?」
『……嫌なこと、少し忘れられるかもしれないし』
……研磨くんらしい。
無理に励ましたりしない。
無理に忘れろとも言わない。
ただ、隣にいてくれようとする。
「……する」
私は涙を拭きながら笑った。
「……研磨くん、ありがとう」
『……ん』
その向こうで、黒尾さんが満足そうに言った。
『よし! じゃあ明日、音駒集合な! みんなで遊ぶぞ!』
『おー!』
『俺、ゲームなら負けないっす!』
『リエーフ、お前はまずルール覚えろ』
笑い声が広がる。
私はその声を聞きながら、静かに目を閉じた。
今日は、つらいことばかりだった。
好きな人に彼女ができて。
告白してしまって。
インスタライブで泣いて。
でも。
こんなふうに心配してくれる人たちがいる。
ひとりじゃないんだ。
そう思えた。
*そして、深夜 23:48*
音駒のみんなとの電話が終わったあと。
スマホに通知が届いた。
及川徹:さっき、ごめん
…………。
心臓が跳ねた。
続けて、もう一件。
及川徹:今、電話できる?
画面を見つめたまま、指が動かなかった。
だって。
もう、十分だよ。
今日だけで、何度泣いたと思ってるの。
あなたは彼女がいるのに。
どうして、こんな時間に連絡してくるの?
どうして、優しくするの?
スマホが、もう一度震えた。
及川徹:……声、聞きたい
「…………っ」
涙が、またこぼれた。
ねえ、及川さん。
そんなこと言われたら。
私、まだあなたのことを諦められないよ。
——つづく。
コメント
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うわっ……第4話、泣けたわ…😢 烏野みんなが一斉に電話かけてきてくれたシーン、めっちゃ温かかった。チームカラー出まくりの掛け合いなのに、ちゃんと主人公のこと思ってるのが伝わってきて、こっちももらい泣きしそうになった。 研磨くんの「明日ゲームする?」も、無理に励まさない距離感がガチで優しいし、黒尾さんの「気持ちまでなかったことにすんな」は心に刺さる…。 ラストの及川さんからの連絡、まだ余韻がやばい。続きが気になりすぎる🔥
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