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kaede🍁
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#mmab
七瀬⛄️
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それから目黒は。
阿部と仲良くなるために、自分なりに努力を始めた。
涼太に言われた。
何をしたら喜ぶのか。
何をしたら怖がるのか。
ちゃんと見る。
自分がしたいことではなく。
阿部がどう思うのかを考える。
だから目黒は考えた。
分からないなら。
本人に聞けばいい。
「あべちゃん」
「……はい」
「人間って朝何食べるの?」
「え?」
朝。
起きて最初の質問。
「米とか……」
「米だけ?」
「いえ、おかずも」
「何のおかず?」
「その日によります」
「今日は?」
「……何でもいいです」
「何でもって何?」
「……」
阿部は朝から困った。
食事中も。
「これ好き?」
「はい」
「これは?」
「普通です」
「普通って好き?」
「好きでも嫌いでもないです」
「じゃあ嫌いじゃないなら好き?」
「違います」
「でも嫌いじゃないんでしょ?」
「だから違いますって」
目黒が真剣な顔で呟く。
「普通って何?」
阿部は少し耐えた。
でも本気で悩む姿を見て、ふっと笑ってしまう。
「……ふふ」
「笑った」
「すみません」
「なんで謝るの?」
「いや……」
阿部は口元を押さえる。
「めめが、そんな真剣に考えることじゃないから」
言ったあと止まった。
めめ。
翔太がそう呼ぶのを聞いていたから。
つい出てしまった。
目黒の目が少し嬉しそうになる。
「今、めめって呼んだ」
「……呼びました?」
「呼んだ」
「気のせいです」
「気のせいじゃない」
「ごはん食べてください」
「俺、食べなくても平気」
「……そうだった」
また阿部は小さく笑った。
その日の午後。
「あべちゃん」
「はい」
「人間は何時間寝るの?」
「人によります」
「何時間寝たら死なない?」
「その言い方やめてください」
「なんで?」
「怖いからです」
目黒は少し考える。
「じゃあ、何時間寝たら元気?」
阿部は目を瞬いた。
「……ちゃんと直すんですね」
「嫌なんでしょ?」
「はい」
「じゃあ言わない」
妙に素直だった。
「俺は七時間くらい寝られれば大丈夫です」
「七時間」
「絶対じゃないですよ」
「分かった」
夜。
阿部が縁側に座っていると、目黒が来た。
「寝るよ」
「まだ眠くないですけど」
「七時間必要なんでしょ?」
「まだ寝なくても七時間あります」
「じゃあ十時間?」
「まあ……」
「十二時間?」
「寝過ぎじゃないですか」
「十五時間?」
「なんで増やすんですか」
阿部は呆れて目黒を見る。
「もう、めめ」
「うん」
「七時間ぴったりじゃなくていいって」
言ってから止まる。
今、完全に敬語が抜けた。
目黒が嬉しそうにする。
「まためめって言った」
「……」
「今度は気のせいじゃない」
「うるさいです」
「なんでまた敬語?」
「知りません」
阿部は顔を逸らす。
目黒はその横で笑っていた。
翌朝。
「あべちゃん」
「はい」
「暑い?」
「大丈夫です」
「寒い?」
「大丈夫です」
「お腹空いた?」
「まだです」
「痛いところある?」
「ありません」
「怖い?」
阿部は目黒を見る。
「何ですか」
「元気かどうか確認」
思わず笑った。
「ふふっ」
「何?」
「ちゃんと覚えてる」
「死なないかって言ったら嫌なんでしょ?」
「うん」
「元気?」
「元気」
「本当に?」
「本当」
そこまで答えて、阿部が眉を寄せる。
「……めめ」
「何?」
「俺、そんな簡単に死なないからね」
「でも最初死にかけた」
「それはめめのせいでしょ」
「ごめん」
また素直に謝る。
「ふふっ」
「なんで笑うの?」
「ちゃんと謝るんだなと思って」
「悪いことしたら謝るんでしょ?」
「そうだけど」
「翔太くんに教えてもらった」
「子どもみたい」
目黒の質問は、それからも止まらなかった。
「あべちゃん」
「今度は何?」
「人間って何されたら嬉しい?」
「人による」
「じゃああべちゃんは?」
「急に聞かれても……」
阿部は少し考える。
「美味しいもの食べた時とか」
「食べ物」
「それだけじゃないよ」
「他は?」
「親切にされた時とか」
「親切って何?」
「そこから?」
「うん」
「……本当に何にも知らないんだね」
阿部は呆れながら笑った。
「笑った」
「また?」
「うん」
「いちいち報告しなくていいよ」
「俺は嬉しい」
「何が?」
「あべちゃんが笑うの」
阿部の笑顔が止まる。
「……そういうの急に言わないで」
「なんで?」
「恥ずかしいから」
「恥ずかしいと笑わなくなる?」
「質問増やさないで」
目黒は素直に口を閉じた。
それがおかしくて。
阿部はまた笑ってしまった。
ある日は。
あの子犬と庭で遊んでいた。
元気になった子犬が、阿部の周りを走っている。
目黒が近付いてきた。
「あべちゃん」
「何?」
「犬って何食べるの?」
阿部は目黒を見る。
「犬を?」
「うん」
「食べるんじゃなくて?」
「食べない」
真面目な顔。
「もう覚えた」
阿部は耐えきれず笑った。
「ふふっ」
「笑った」
「そんな真剣な顔で、もう覚えたって」
「大事でしょ」
「大事だけど」
阿部は子犬を抱き上げる。
「めめ、最初この子俺に食べさせようとしたんだもんね」
「知らなかったから」
「普通、知らなくても犬渡さないよ」
「今は知ってる」
「はいはい」
「はいはいって怒ってる?」
「呆れてる」
「嫌?」
「嫌じゃないよ」
自然に答えた。
二人とも少し黙る。
「嫌じゃない?」
「……うん」
「俺が質問するの」
「しつこいとは思うけど」
「嫌じゃない?」
「何回も聞くと嫌になるよ」
「分かった」
阿部はまた笑う。
「ほんと素直」
「駄目?」
「駄目じゃない」
以前なら。
こんな言い方は絶対にできなかった。
神様。
自分を好きにできる存在。
怒らせたら何をされるか分からない。
そう思っていたから。
でも今は。
「しつこい」
「うるさい」
「もう聞かないで」
そんな言葉まで普通に言える。
ある日。
目黒が聞いた。
「あべちゃん」
「ん?」
「人間ってなんで泣くの?」
「悲しいから」
「悲しい時だけ?」
「嬉しくても泣く」
「怖い時も?」
「泣くよ」
「怒ってる時も?」
「人によってはね」
目黒が難しい顔になる。
「分からない」
「俺だって全部分かるわけじゃないよ」
「人間なのに?」
「人間だからって全部分かったら苦労しないって」
目黒が少し考える。
「じゃあ、相手が何考えてるか分からない時は?」
「聞けばいいんじゃない?」
「やっぱり?」
阿部は目黒を見る。
「だから何でも俺に聞くの?」
「うん」
「ふふっ」
「正解だった?」
「半分くらい」
「半分?」
「聞かれたくないこともあるから」
「じゃあ嫌って言って」
「そうする」
少し前まで。
こんな会話ができるとは思っていなかった。
そして。
とうとう目黒が聞いた。
「あべちゃん」
「何?」
「好きって何?」
阿部の手が止まる。
「それ、まだ気になってたの?」
「うん」
「翔太に聞いた?」
「聞いた」
「何て?」
「本人に聞けって」
「絶対面白がってるじゃん」
目黒が隣へ座る。
「好きってどうなったら分かる?」
「知らない」
「好きになったことある?」
「あるよ」
「誰?」
「言わない」
「なんで?」
「めめに関係ないから」
「どんな感じだった?」
「……しつこい」
目黒が黙る。
「しつこいの嫌?」
「今は嫌」
「分かった」
そう言って本当に立ち上がる。
阿部がぽかんとする。
「え」
「何?」
「本当に行くの?」
「嫌なんでしょ?」
「いや……」
「じゃあいる?」
「極端なんだって、めめは」
阿部はとうとう笑い出した。
「好きの話はやめて」
「うん」
「それ以外ならいていいよ」
目黒がすぐに座り直す。
「じゃあ質問していい?」
「何個?」
「十個」
「多いよ!」
阿部はまた声を出して笑った。
それから。
自分でも分からないくらい。
少しずつ言葉が変わっていった。
敬語をやめようと決めたわけではない。
ただ、必要なくなっていった。
目黒との間に。
自分を守るための壁を作らなくてもよくなった。
ある日。
翔太が二人を見て笑った。
「あべちゃん」
「何?」
「めめに敬語使わなくなったね」
阿部が止まる。
「……え?」
「気付いてなかった?」
目黒を見る。
「俺に聞かれても」
「いつから?」
「分かんない」
「なんで言わなかったの?」
「嫌じゃなかったから」
阿部は少し恥ずかしくなる。
「戻した方がいい?」
目黒がすぐに首を横に振る。
「嫌」
「即答だね」
「今の方がいい」
「なんで?」
「近い感じする」
阿部は一瞬、何も言えなかった。
そして少し笑う。
「……そっか」
「うん」
「じゃあ、このままでいい?」
「いい」
目黒が嬉しそうに笑う。
阿部もつられて笑った。
最初は。
怖くて敬うしかなかった。
神様。
今は。
何でも聞いてきて。
しつこくて。
世間知らずで。
時々、呆れるほど素直な。
めめ。
好きかどうかなんて。
まだ分からない。
でも。
目黒との間から敬語が消れたことに。
阿部自身、もう違和感はなかった。
それは。
恐怖がなくなっただけではなく。
二人の距離が少しずつ変わり始めた証だった。
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本当に無知なんだね。 子供と一緒だな。何もわからない質問だらけ 少しづつ笑顔が楽しくなってる😀 続き待ってます♪
第4話、めっちゃ良かった……! 目黒が阿部に「人間って何食べるの?」って聞くところから始まる、世間知らずな神様と普通の人間のやりとりがもう尊すぎた。「笑った」「近い感じする」っていう目黒のストレートな言葉に、阿部ちゃんがちょっと照れてるのがたまらない。敬語が自然に消えて、二人の距離が本当に変わってきてるのが伝わってきて、心がほっこりしたよ!