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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第107話 〚前に立たない選択〛
― 佐藤陽翔視点 ―
俺は、
前に立つタイプじゃない。
目立つのは、
嫌いじゃないけど。
主役になるのは、
違う。
廊下で澪を見つけた時、
一瞬で分かった。
――今日は、
一人で帰ろうとしてる。
顔で分かる。
歩き方で分かる。
(あー、
この感じか)
だから、
俺が最初に声をかけた。
軽く。
チャラく。
「よ、澪ちゃん」
重くならない距離。
逃げ道のある距離。
これが、
俺の立ち位置。
悠真が来る。
相変わらず普通。
でも、
その普通さが
場を安定させる。
瑠斗は、
いつも通り。
「俺、イケメンだろ?」
はいはい。
でも――
あいつ、
ちゃんと周り見てる。
俺は、
遠くを見る。
視線の先。
――海翔。
やっぱり居た。
見守ってる。
前に出ない。
でも、
離れすぎない。
(……出てこいよ)
とは、
思わない。
出させる。
それが、
俺の役目。
タイミングを見て、
自然に腕を掴む。
「はいはい」
連れていく。
強くは引かない。
拒否されたら、
すぐ離す。
でも――
拒否されなかった。
目の前に来た海翔は、
一瞬で分かるくらい
分かりやすく照れてた。
(あー、
こいつ)
前に出ないくせに、
一番前に立ってるやつだ。
俺は、
一歩下がる。
悠真も下がる。
瑠斗は、
ちょっとだけ笑う。
完璧。
女子たちが、
見てるのも分かってた。
えま。
しおり。
みさと。
りあ。
笑ってる。
大丈夫。
この場は、
安全。
二人で歩き出したのを見て、
俺は立ち止まる。
追わない。
ついて行かない。
見てるだけ。
守るって、
前に立つことじゃない。
一番前に居続けると、
それは
支配になる。
だから俺は、
横にも前にも立たない。
後ろ。
少し斜め。
声が届く位置。
必要なら、
呼ばれる。
必要なければ、
消える。
それでいい。
今日も、
俺は前に出ない。
それが、
一番うまくいく役目だって
知ってるから。