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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第108話 〚崩れた計算〛
― 西園寺恒一視点 ―
今日は、
確信していた。
澪は、
一人で帰る。
理由は単純だ。
最近、
距離がある。
誰も前に出てこない。
だから――
今日だと思った。
校門の少し手前。
人目につかない位置。
俺は、
そこで待っていた。
時間も、
動線も、
全部計算した。
(……来る)
そう思った瞬間。
見えたのは、
二人だった。
澪と――
海翔。
並んで歩いている。
距離は近い。
会話は少ない。
でも、
空気が違う。
その瞬間。
――ガラガラッ。
頭の中で、
何かが
一気に崩れた音がした。
(……は?)
計算が、
成立しない。
一人じゃない。
しかも、
一番想定してなかった
組み合わせ。
数秒、
動けなかった。
でも、
すぐに考え直す。
(……追いかけるか)
まだ、
二人きりだ。
そう思った――
その瞬間。
後ろから、
気配がした。
一人じゃない。
複数。
振り向いた瞬間、
目を疑った。
怜央。
湊。
えま。
しおり。
みさと。
りあ。
それだけじゃない。
知らない男子が三人。
――神崎瑠斗。
――田中悠真。
――佐藤陽翔。
全員、
一斉に出てくる。
バーッと。
示し合わせたみたいに。
でも、
誰も近づかない。
ただ、
見ている。
澪と海翔が
二人で帰る背中を。
(……多すぎだろ)
思わず、
そう思った。
逆に、
怖い。
人数が多すぎて、
何もできない。
そこで、
やっと分かった。
これは、
偶然じゃない。
守ってる。
囲ってるわけじゃない。
でも、
完全に
“空間を押さえている”。
俺は、
一歩も動けなかった。
追いかけるという選択肢が、
消えていた。
計画は、
崩れた。
いや――
最初から、
成立していなかった。
澪は、
一人になる前提じゃなかった。
校門の影で、
俺は立ち尽くす。
誰にも、
気づかれないまま。
見えない輪は、
今日もそこにあった。
そして俺は、
完全に
その外側にいた。