💜side
ニューフェイスの2人。
翔子ちゃんと宮舘。あの2人って、デキてるのかな?
校庭に遅れて一緒に出て来た2人を見て、俺は考えていた。
普通、男女って思春期を経てもう少し距離ができるものじゃない?
それなのに、まるで2人は同性同士のように仲良く見える。不思議だ。
もしかして、俺たちに隠れて付き合ってるのかもしれない。
それか、元カノ元カレの関係とか。
💜「可愛いなあ、それにしても」
💛「ふっか先輩、鼻の下伸びてますよ」
💜「うるせぇ」
学校指定のジャージをダボっと着ているから、ぱっと見ちょっとわかりにくいけど、翔子ちゃんはめちゃくちゃスタイルがいい。
足も長いし、身体も華奢で俺の好みだ。アクセサリー代わりの赤いハチマキも可愛い。佐久間も同じ格好してるけど、タイプが違う。ロリ系と綺麗なお姉さんって感じだ。
佐久間はいくら可愛くても男だし、俺は断然こっちだな。
💜「夏になったら、生脚見れるかなあ…」
💛「きも」
💜「うぉいっ!!!!」
💚「はーい!今日は100メートル走のタイムを測りまーす」
緑のジャージ姿の阿部ちゃん先生が大きな声でみんなに声を掛けた。
阿部ちゃん先生は本当にマルチな先生で、この学校に数学科の教師として雇われたのに、大人の事情で結局全教科を受け持っている。
俺たちは人数が少ないので、別にそれで授業は回っているけど、よく遅くまで職員室の電気がついてるから、他教科も必死で勉強しているのだろう。本当に努力家だ。てか、佐久間んち金あるんだからもっと他にも人を雇え。
💚「じゃあまず、渡辺さんと深澤、行こうか」
阿部ちゃん先生に呼ばれてスタート位置に立つよう指示される。
💜「えっ、俺たちから?ってか、翔子ちゃんと俺?それはいくらなんでも…」
相手は女の子だ。本気で走ったら差をつけすぎて可哀想だなあと思って、翔子ちゃんを見た。しかし、彼女は平然とスタート位置に移動している。
自信あるのかな…?
でも俺だっていくらなんでも女子に負けるわけにはいかない。何より翔子ちゃんにカッコ悪いとこ見せたくないし。
💜「翔子ちゃん、俺、手加減してあげるね」
優しくそう声を掛けてあげると、翔子ちゃんは俺の方をちらっ、と見た。
その時ほんの少し、目つきが変わった気がした。
💚「位置に着いて…よーーーい」
ピッ!!!!!
一斉に走り出した俺たち。
💜「えっ…」
速い。
長い髪が後ろになびく。遅れまいと必死に走るけど、全然追いつけない。
💜「なんで……っ???」
戸惑いつつも、全力で追い上げたが、2人の距離が縮まることは最後までなかった。
そしてトラックを回って、ゴールに戻って来る頃には、俺は翔子ちゃんから何メートルも離されていた。
💚「おお、渡辺さん、男子相手にすごいね」
🖤「渡辺先輩すごい!!!」
💛「ふっか先輩、だっさ…」
🤍「ふっかさん、手加減してあげたんでしょ?」
みんな口々に色んなことを言ってたけど。
💜「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
いやガチ。
マジで俺、ガチで走ったんだけど。
何で負けたの?????????
後で調べたら、翔子ちゃんのタイムは、高校生男子の平均タイムを大きく上回っていた。
💜「何なの、あの女」
ちょっとふっかさん、ムカついたかも。
俺、女の子にこういうことで負けるの大っ嫌いなんだよね。
だって、俺、超エリートだし。
素乃学園は、高等部に上がるのに試験なんてものは一切なくて、中等部の中から選りすぐりのエリートが選ばれるという話だった。
俺は成績も別に良くなかったし、外部へ進学することになるんだろうなあとぼんやりと思っていた。
しかし、中等部3年の夏を前に、急に高等部への進学を打診された。
一言で言うと、むちゃくちゃ嬉しかった。
他のクラスメイトが羨む中、俺だけが選ばれたのだ。ひとクラス30人、5クラスあって、俺だけが選ばれた。150人の頂点。
ああ、俺って特別なんだなと思った。高等部は授業料も無料だし、親も喜んでくれた。
佐久間は明らかにコネで高等部から入ったし、本物のエリートは俺だけだ。
ここにいるみんなは、それぞれの経緯でここにいるが、一番の実力者は俺だと俺は勝手に自負していた。
翔子ちゃんは一体何者なんだろう。
かよわい女の分際で、この俺より優れているかもしれないなんて。途中で転校して来たのも気になるし。
いつも放課後に行われる課外授業。
今日は得意な種目だ。
俺はあの授業が得意なんだ。そこで決着を着けてやる。可愛い顔が、俺に負けを認めて悔しがるのを俺は早く見たい。
💜「ぜってぇ…負けねえ」
俺は久しぶりにマジになって、闘志を燃やしていた。
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