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凪川 彩絵
#独占欲
カゴの中には、確実に〝瑠璃香のもの〟が増えていく。
それを強く否定できないままに歩いている瑠璃香の横顔を見て、晴永は思った。
(……今は、とりあえずこれでいい)
ただ、頭の中で算段はしているのだ。
どうやったら瑠璃香が〝自らの意思で〟晴永の家に住みたいと思ってくれるか……。
晴永は繋がれたままの瑠璃香の手をギュッと握ると、
「これの会計済ませたら、瑠璃香お待ちかねの『P’sライフ』へ行こうか」
提案した途端、瑠璃香の瞳がぱっと輝いた。
晴永は密かに(ひょっとしてP’sライフ、使えるんじゃねぇか?)と思った。
***
思いのほかたくさん買い込んでしまった生活雑貨が結構かさばったので、瑠璃香に促されて荷物を一旦車へ置きに行った。
おかげさまで身軽にはなったものの、一度ほどけてしまった手をもう一度繋ぎ直したいと言えなくて、晴永はちょっぴり残念に思っている。
「課長、P’sライフはこっちですよ」
そんな晴永の気持ちなんてどこ吹く風。瑠璃香が楽しそうに声を弾ませた。
「晴永……」
それにムスッとして訂正を入れながらも、瑠璃香が嬉しそうなので不機嫌になりきれない晴永である。
小さく吐息を落としながら今にもスキップをしそうな瑠璃香のあとをついて歩いていたら……「もう、遅いですよ!」と手を取られた。
(えっ?)
小さな手にキュッと指先を握られた晴永は、こちらからは何も求めていないのに瑠璃香から手を繋がれた(?)ことに戸惑ってしまう。
(コイツ……)
酒で釣った時にも思ったが、どうやら瑠璃香は〝好きなこと〟が絡むと無意識に積極的になるところがあるらしい。
まるで飼い主に手綱を握られて引っ張られる大型犬のように瑠璃香のあとを追いながら、指先に感じるぬくもりに妙に照れてしまっていると言ったら瑠璃香に呆れられてしまうだろうか。
そこでふとライバルの日下仁人の顔を思い浮かべた晴永は、歩調を速めて瑠璃香のすぐ横へ並んだ。
瑠璃香はそんな晴永の心の機微には気付いていないみたいに、まっすぐ前だけを見据えていた。
(まつ毛、長いな……)
瑠璃香の横顔を斜め上から見下ろしながら、晴永はほぅっと吐息を落とした。
***
P’sライフに足を踏み入れた途端、なんとなく空気が変わったように感じてしまう。
生き物たちのにおいがしているからだろうか。
タイミングが悪く、犬猫コーナーは『わんちゃんねこちゃんのより良い健康のために』という名目でロールカーテンが下ろされていて、ショーケースの中は見えなくなっていた。
どちらかというと小動物よりも犬猫派な晴永としては残念に感じられてしまう。
(けどまぁ、四六時中見られてるってのも疲れるよな、やっぱ)
ロールカーテンの向こうから聞こえてくる犬の鳴き声を聞きながら、そんなことを思う。
瑠璃香は、「犬猫も見たかったですけど仕方ないですね」とつぶやきながらも、存外未練なんてないみたいにそこをススッと足早に通り抜け、晴永の手を引くようにして小動物コーナーへまっしぐら。
(ホント、欲望に忠実だな……)
些細なことだったが、瑠璃香の新たな一面を見つけられたみたいで、晴永は何となく嬉しかった。
そこだけ温度管理が高めなのか、小動物コーナーはガラス戸で仕切られていた。
瑠璃香の横からスライドドアのノブを握って引き開ければ、途端小動物たち特有の、フード臭さや敷き草の香り……それからそれに混ざるなんとも言えない獣臭のようなものが押し寄せてきた。
温度が高めなのも、においを強くしているのかもしれない。
コメント
1件
なにか連れて帰るのかな?